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食費を削って家賃を払う国で、政治は誰の負担から軽くするのか

毎月の住居費を払うために、食費や医療費、暖房費を削った経験がある。フランスでは、そう答えた人が10人中4人近くにのぼる。10月29日に公表されたIpsos BVAの調査(Le Figaro immobilierとfranceInfoのために実施)が示した数字だ。

この数字が重いのは、削られているのが贅沢品ではないからだ。食べる、治療を受ける、暖を取る。生活の土台にあたる支出が、家に住み続けるために差し出されている。調査によれば、フランス人の3分の2が住宅を大きな懸念事項とし、10人中8人近くが住宅費は家計にますます重くのしかかっていると答えた。2人に1人は、その負担を耐えがたいと感じている。

では、政治は誰の負担から先に軽くすべきなのか。この問いに、フランスはいま複数の入り口から同時に向き合っている。

住宅、最低賃金、街頭:負担が政治に変わる三つの回路

最初の回路は住宅だ。調査では、2027年の大統領選挙で住宅問題が投票先に影響すると答えた人が43%いた。35歳未満では57%に跳ね上がる。

注目すべきは、持ち家への見方である。持ち家を将来や退職後、不測の事態への保障とみなす人が45%いる一方、買って大きな値上がり益を得るという考えを支持した人は8%にとどまった。ここから私は、フランスの人々が住宅に求めているのは資産形成より、まず「安心して屋根の下にいられること」ではないか、と読み取る。これは調査結果に基づく解釈であり、調査自体がそう結論づけているわけではない。

意外なのは政策への支持の分布だ。家賃規制の全国拡大と、賃貸住宅の所有者への税負担軽減の両案に、80%を超える人が賛成した。借りる側を守る策と、貸す側に誘因を与える策は、本来なら綱引きになりやすい。それが同じ人々から同時に支持された。

この結果は、「誰を先に助けるか」という問いに、住民が二者択一で答えているわけではないことを示唆する。借り手の負担が過大にならず、貸し手にも市場に物件を出す理由が残る状態を、全体として求めているように見える。ただしこれも調査結果からの推測だ。限られた財源の中でこの両立がどう設計されるかは、記事からは分からない。

二つ目の回路は賃金である。政府は、毎年1月に行われる通常の見直しを待たず、2027年1月より前にSMIC(最低賃金)を引き上げることを検討していると公表した。背景にあるのは、CGTのSophie Binet書記長の言葉に表れた認識だ。「価格の高騰を考えると、現状のSMICだけでは生活が成り立たない」。この認識が、街頭やSNSに表れた社会的な怒りと結びついたと報じられている。

数字の開きは大きい。CGTは+10%、CFDTは+7%といった声を上げる。一方、検討されているのは+0.5〜0.6%程度とされる。経済学者の見解も一致しておらず、番組にはDer SpiegelのLeo Klimmと、OFCEのEric Heyerが招かれて議論した。結論は11月5日までに出る見込みで、これはフランスで次の大規模な社会動員が行われる時期とされている。

三つ目の回路が、街頭そのものだ。10月31日の土曜日、パリでは生活費高騰への抗議行動が予定されている。franceinfoが確認した公序・交通局(DOPC)の文書は、極左活動家300〜600人や、都市暴力に慣れた若者数百人が加わる可能性に触れ、状況の悪化を警戒している。デモの参加者は100 000〜150 000人と見込まれ、ポルト・ド・バニョレからポルト・ド・シャラントンまでを結ぶ。

ここで事実の線引きをしておきたい。この記事が伝えているのは当局の懸念と予測であり、実際に混乱が起きたとは述べていない。それでも、生活費への不満が、警備当局が文書で想定するほどの規模の動員になりうる、という点は読み取れる。住宅調査の数字、賃金をめぐる綱引き、デモへの警戒は、別々のニュースに見えて、同じ不安の別の出口になっている。

「先に支えられるべきは誰か」という問いの置き場所

ここで、フランスの議論の特徴に目を向けたい。ここからは事実ではなく、私の読みである。

フランスの報道では、負担の軽減が「個人の家計の工夫」としてより、「政治が引き受ける課題」として語られているように見える。調査は住宅を「日々の緊急課題であり、重要な政治課題でもある」と位置づけた。最低賃金は政府が前倒しを検討する対象になっている。生活の苦しさが、投票行動、労働組合、デモという形で、公の場に持ち出されているのだ。

そこには、負担の種類によって「誰に最初に届くか」が違うという問題が潜んでいる。最低賃金の引き上げは、賃金を受け取る人に直接届く。家賃規制は、借りる人に届く。賃貸所有者への減税は、貸す側に届き、その先で物件供給に影響するかもしれない。住宅の改修や空きオフィスの転用を重視する声が過半数にのぼったことも考えあわせると、フランスの人々は「新しく何かを建てる」より「すでにあるものを使い切る」ことに実利を見ているようだ。ただし、どの負担を最優先にすべきかについて、今回のニュースから一つの答えは出てこない。

米国の上院選と、富の位置

番組「On n'arrête pas l'éco」は、この問題を「富の側」からも照らした。米国の話題である。

ミシガン州の上院選候補アブドゥル・エル=サイードは、「ガソリン1リットルと牛乳1リットル:全てが高くなっている」と語ったと紹介された。選挙は番組放送の翌週の火曜日とされる。民主党は生活費の高騰、医療保険の普及、AIの規制、格差の是正を公約の中心に据えると報じられた。

同じ番組は、ニューヨーク・タイムズの報道として、63名の上院候補者の多くが100万ドル超の資産を持つと伝えている。10百万ドルを超える者や、100百万ドル超のケースもあるという。共和党と民主党はテレビ討論で、所得税申告の「ゼロの数」をめぐって応酬した。番組は、上院議席を狙うことが「富裕層の立場」に近い話であり、有権者の関心から距離があるとの評価も紹介している。

ここで見えてくる対比がある。フランスでは、住宅や賃金という家計の側から負担軽減の優先順位が論じられている。米国の話題では、生活費を語る候補者自身の資産が論点に浮上する。後者では、「誰の負担を軽くするか」の前に「誰が軽くする側にいるのか」が問われているのだ。

フランスにも似た視線はある。番組は、HSBC Private Bank Franceのディレクター、Mai Trinhにインタビューした。富裕層の資産運用を支援する人物だ。番組が用意した問いは、最富裕層が現行の税制をどう見ているか、教育の改善を求めて街頭に出る声をどう受け止めているか、そして2027年5月にMarine Le PenかJean-Luc Mélenchonが勝てば、より税制の魅力的な国へ出ていくと脅すのか、というものだった。ここで強調したいのは、これらが番組の問いであって、答えではないという点だ。記事から、富裕層が実際にどう考えているかは分からない。

それでも、生活費の議論に「資産を動かせる側の反応」が組み込まれていること自体は、この問題の構造を映している。負担軽減の財源をどこに求めるかで、反応が最も大きく分かれうる層が見えているからだ。

日本の読者の足元から

日本では、物価や家賃、住宅ローンの負担が家計の話題になることが多い。一般に、日本では住宅の購入が人生設計の節目と見なされやすく、賃貸と持ち家のどちらを選ぶかが世帯の判断に委ねられる傾向がある、と言われる。もしそうだとすれば、フランスの調査で見えた「住宅費を払うために必要な支出を削る」という状態が、日本ではどのように語られているかは、比べる価値がある。

ただし、今回のニュースは日本の数字を含んでいない。日本で誰がどの程度の負担を抱え、どの政策がどこに届くのかは、日本の制度と統計に即して別途確かめる必要がある。フランスの事例から借りられるのは、答えではなく問いの立て方だ。負担を「所得」「住居の形態」「世代」のどの軸で区切って見るのか。そして、軽減策の財源は誰が負担するのか。

これから注目したいこと

短期的な焦点は、11月5日までに出るとされるSMICをめぐる結論だ。検討中の+0.5〜0.6%という水準と、労働組合側の+7%や+10%という要求の間で、政府がどこに落としどころを探るのか。そして、その結論が次の大規模な動員にどう響くのか。

中期的には、2027年の大統領選挙がある。住宅問題が投票先に影響すると答えた人は、全体では43%、35歳未満では57%だった。支援の順番をどう設計するかは、所得層や世代によって政策への信頼が分かれる場面に直結する。ここは私の見立てだが、住宅を借りる若い世代と、資産を持つ層とでは、同じ政策に対する評価が大きく異なりうる。そのずれが、選挙の争点としてどう現れるかを見ていきたい。

最後に、読者のあなたに問いたい。限られた財源で負担を軽くするなら、最初に支えるのは、いま食費や医療費を削っている人か、働いても生活が回らない人か、それとも貸す側の意欲を保つことで住まいを増やす政策か。あなたなら、何を基準に支援の順番を決めるだろうか。

出典

  • Radio France Économie:Le logement, préoccupation quotidienne et enjeu électoral (2026/10/31)
  • franceinfo (titres):Lors de la mobilisation du 31 octobre, les autorités craignent la présence de 300 à 600 militants d'ultragauche à Paris (2026/10/31)
  • Radio France Économie:Avec Mai Trinh, directrice de HSBC Private Bank France (2026/10/31)
  • Radio France Économie:Pour répondre à la colère sociale, faut-il augmenter le SMIC au plus vite ? (2026/10/31)
  • Radio France Économie:Mai Trinh, directrice de HSBC Private Bank France (2026/10/31)

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