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A69の通行料、電動自転車、ロシア産ディーゼル——環境政策のツケは誰に回るのか
エコロジー

A69の通行料、電動自転車、ロシア産ディーゼル——環境政策のツケは誰に回るのか

トラック1台が高速道路A69をトゥールーズからカストルまで往復すると60ユーロ。個人なら20ユーロ。タルン県の森の中、10月のある週末、1000人から1500人がこの数字を掲げて最後のデモに集まった。横断幕には「Brûlons l'A69 pas la forêt(A69を燃やせ、森を燃やすな)」と書かれていた。警察は800人以上を動員し、デモは平穏に終わったが、エコロジー活動家トーマス・ブレイルは一つの言葉を残した。「この価格を見れば、ボイコットは自然と進むはずだ」。

この発言を、単なる環境運動の一コマとして読むこともできる。けれど見過ごせないのは、彼が訴えているのが「自然を守れ」ではなく「料金が高すぎる」だという点だ。A69は料金所を廃止し、カメラで車両を識別して走行距離に応じて自動課金する、いわゆる「フリーフロー」方式を採用する。運営会社Atoscaは11月初旬の開通を発表したが、反対派が本当に問題にしているのは、この道路を使わざるを得ない人々——トゥールーズとカストルの間を日常的に行き来する通勤者やトラック運転手——が、その利便性の対価として継続的に料金を払い続ける構造そのものだ。選べる人は使わなければいいが、選べない人は払うしかない。

同じ構図は、まったく違う場所にも顔を出す。パリ近郊ジェヌヴィリエの自転車店。燃料価格がリッター平均2ユーロを超え続ける中、電動自転車を買いに来た客のアルチュールは、週25ユーロかかっていたバイクのガソリン代を理由に、1200ユーロの電動自転車に乗り換えようとしていた。再生電動自転車を扱うUpwayでは7月以降販売が20%増え、デカトロンなど大手でも前年比最大30%の伸びという。都市部ではこれが「賢い選択」として語られる。しかし業界団体の代表者自身が釘を刺している。農村部では、電動アシストであっても車の移動を自転車に置き換えるのははるかに難しい、と。つまり燃料高騰という同じ圧力が、都市では快適な選択肢を生み、地方ではただの負担として降りかかる。

ここまでは、いずれもフランス国内の話だ。だが視点を広げると、負担の押し付け合いはもっと大きなスケールでも進行している。EU予算をめぐる交渉では、議長国アイルランドが2028〜2034年の予算案から1400億ユーロを削減する妥協案を示した。ドイツなど「倹約派」はさらなる削減を求め、フランスは「野心的な予算」が必要だと主張し、南欧・東欧17カ国は農業と地域政策への増額を求める。削減の矛先は開発援助や行政費、競争力基金に向けられ、共通農業政策と結束政策はほぼ温存される——つまりここでも、声の大きい産業や既得権は守られ、見えにくい予算項目から削られていく。

そしてもう一つ、桁違いに大きな取引がある。トランプ米大統領は中間選挙を数週間後に控え、ウクライナ侵攻後初めてロシア産ディーゼルの輸入制裁を一部解除した。本人いわく、狙いは米国民、とりわけ大規模農家、牧場経営者、トラック運転手のための「安い燃料」だ。専門家は供給量が米国の消費規模に対して小さく、価格への実効性は不透明だと見ている。一方でウクライナのゼレンスキー大統領はこれを「恥ずべきこと」と呼び、EUのカヤ・カラス氏は「モスクワに戦争資金を調達する手段を与える」と批判した。燃料価格を下げるという一つの政治的要請が、農村の有権者向けの処方箋として、戦争の資金源の制裁解除という代償と引き換えにされている。

タルンの高速道路、パリの自転車店、ブリュッセルの予算交渉、そしてワシントンとモスクワの取引——規模も文脈もまるで違うこれらの出来事を並べてみると、一つの共通した問いが浮かび上がる。環境や気候変動への対応コストは、誰がどこで引き受けるのかという問いだ。フランスでこの問いが特に政治化しやすいのは、移動や暖房、農業機械の燃料を車や内燃機関に依存する農村・周縁部と、自転車や公共交通という代替手段を持つ都市との間に、もともと大きな格差があるからだと考えられる。環境規制そのものへの賛否が、実は環境意識の強弱ではなく「代替手段を持っているかどうか」で分かれているとすれば、A69反対派の怒りが「森を守れ」より先に「料金が高い」という言葉で表現されたことにも納得がいく。

日本の状況を直接比較できる統計はここにはないが、構造として似た緊張がないとは言い切れない。地方では車への依存度が都市より高く、省エネや技術転換が前面に出やすい一方で、負担の偏りという論点は同じように存在しうる。米国では今回のように燃料価格そのものが選挙の争点となり、環境規制が連邦と州、あるいは党派の対立と結びつきやすい傾向がある、とされることが多い。EUの場合は、農薬や交通、エネルギーといった規制の対象が共通でも、その負担をどう配分するかは加盟国間の交渉そのものになる。今回の予算案における倹約派と結束派の対立は、まさにその縮図だろう。

この先を見通すなら、A69のボイコット運動が実際にどこまで広がるか、そしてEUの予算交渉が来週の首脳会議でどう決着するかは、どちらも「負担の配分」というレンズで見ておく価値がある。ロシア産ディーゼルをめぐる例外措置も、2027年4月までの時限措置とされており、その間に価格が実際に下がるのか、制裁の実効性がどう評価されるのかは不透明なままだ。環境目標そのものの正統性は、規制が効果を上げるかどうかだけでなく、その費用が誰に見える形で、あるいは見えない形で転嫁されるかにかかっている。料金を払わされる側、乗り換える余裕がない側、予算を削られる側が声を上げ続ける限り、この問いは消えない。

あなたの身の回りでも、環境負荷を減らすための費用が、選択肢の少ない人ほど多く払う仕組みになっていないか——一度、立ち止まって考えてみる価値があるのではないだろうか。

出典

  • franceinfo (titres):Les opposants à l'autoroute A69 manifestent une dernière fois avant son ouverture annoncée (2026/10/11)
  • franceinfo (titres):L'Irlande propose des coupes de 140 milliards d'euros dans le budget de l'Union européenne (2026/10/10)
  • franceinfo (titres):Le militant écologiste Thomas Brail "appelle à un boycott national" de l'autoroute A69, qui sera mise en service début novembre (2026/10/10)
  • franceinfo (titres):Face à l'envolée des prix du carburant, le vélo électrique a le vent en poupe dans les villes (2026/10/10)
  • franceinfo (titres):Des millions de barils, un effet incertain sur les prix, l'Ukraine en colère... Quatre questions sur l'accord sur le diesel russe entre Donald Trump et Vladimir Poutine (2026/10/10)

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