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「これが私たちの文化だ」と法廷で言った母親と、7日前に止められた闘牛
社会

「これが私たちの文化だ」と法廷で言った母親と、7日前に止められた闘牛

地中海に面した保養地、パラヴァ=レ=フロ。10月10日に予定されていた闘牛のポスターは、開催のわずか2週間前、裁判所の一枚の決定文によって意味を失った。9月24日、モンペリエ行政裁判所は市長に対し、7日以内にこの催しを阻止するよう命じた。理由はシンプルだ。この町では10年以上、闘牛が行われていなかった。フランスの刑法では、闘牛は本来「動物に対する故意の虐待」にあたる。それでも例外的に許されるのは、「地域に根付き、途切れることなく続く伝統」がある場合に限られる。パラヴァ=レ=フロにはその継続性がなかった、と裁判所は判断した。

この判決だけを見れば、地方の行政訴訟のひとつに過ぎない。でも少し立ち止まって考えると、興味深い含意がある。フランスの法は「伝統だから」という言葉を無条件には信用しない。伝統を名乗るなら、それが本当に途切れず続いてきたことを証明しなければならない、という発想だ。伝統は自己申告では成立せず、外部から検証可能な事実でなければならない——そう読み替えることもできる。

同じ発想は、もっと重い場面でも姿を現す。9月23日、ブザンソン司法裁判所は、ルーマニア系の家族4人に実刑判決を言い渡した。事件の中心にいたのは17歳の少女だった。彼女はマケドニア出身の男性と交際していたが、両親はそれを許さなかった。母親は「娘の処女性を確かめよう」として、親族の女性たちの前で少女の脚を開かせたとされる。交際と性関係が発覚すると、少女の髪を丸刈りにした。少女が児童養護施設に保護され、家族に接触禁止が命じられた後も、家族は覆面の人物たちを使って少女を車に押し込み、ルーマニアへ連れ戻そうとした。車はフランスとドイツの国境で止められた。

法廷で母親は釈明した。「私たちのコミュニティーでは、結婚前の性関係は認められていない。これが私たちの文化だ」。しかし裁判所は、この言葉を免責の理由として受け取らなかった。認定されたのは、子どもの連れ去り未遂、計画的な集団暴行、脅迫という、れっきとした犯罪だった。母親には2年、父親には18か月の実刑。「文化」や「伝統」という言葉は、暴力を暴力でなくすための呪文にはならない——ブザンソンの法廷はそう告げたことになる。パラヴァ=レ=フロの闘牛判決と、根っこのところで同じ論理が働いているのが見えてこないだろうか。伝統は説明にはなっても、それだけでは正当化にはならない。

そしてこの構造は、必ずしも「異文化」や「移民コミュニティー」だけの話ではない。8月23日、コンピエーニュ工科大学の新入生、ルカス・バニャイさん(18歳)が、大学外で開かれた入学前交流会の後に亡くなった。動画には、学生たちが酒や得体の知れない液体を飲む「挑戦」を競い合う様子が映っていた。ルカスさんはビールを一気飲みするよう求められ、飲み切れないと「罰だ、罰だ」と囃し立てられ、正体不明の液体を飲むよう促されていた。深夜に自宅で体調を崩し、救急搬送されたが、数時間後に息を引き取った。

大学側はこの会合を把握していなかったと説明している。両親はビズタージュ(新入生いじめの通過儀礼)と過失致死、救護義務違反で告訴した。弁護士のヴァレリー・ブロック氏の言葉が刺さる。「毎回、すべての親が同じことを言います。それでも、学校の外で起き続けているため、誰もが責任を免れているのです」。ここにある「伝統」は文化や民族の話ではなく、学校という制度が黙認してきた通過儀礼だ。名門校への入学というめでたい出来事が、なぜ「一気飲みして耐えられるか」という同意なき試練を通過しないと完結しないのか。伝統は時に、それを疑う言葉を持たない若者の沈黙の上に成り立っている。

この構造に対する異議申し立ては、フランスの外からも聞こえてくる。英国のドラマ『アドレセンス』の制作者スティーヴン・グレアムは、父親から息子への手紙を集めた本『Letters to our sons』を9月24日に刊行した。同作は男性優位主義的な言説やソーシャルメディアが少年たちに与える影響を描き、大きな議論を呼んだ。本に参加した父親の一人、ダン・フラナガンは、自分の父が「とても優しい人だったが、ある世代の男性でもあった」と振り返り、「自分がその年齢のときに受け取りたかった手紙」を14歳の息子に書いたという。ここで問い直されているのは「男らしさ」という、家庭の中で無言のうちに継承されてきた規範そのものだ。刊行イベントが英国議会で開かれたという事実は、この問い直しが私的な悩みではなく公共的な議題として扱われていることを物語っている。

もう一つ、規範を問い直す声が米国からも届いた。ジャーナリストのE・ジーン・キャロルは、1996年にドナルド・トランプから性的暴行を受けたと訴え、二つの訴訟を経て合計約9000万ドルの支払いを命じさせた。82歳になった今、彼女は著書『Not My Type』をフランスで刊行し、France Interのインタビューでこう語っている。「80代の女性が、かつて性的暴行を受けるほど美しかったとは、誰も信じてくれないだろう」。年齢を重ねた女性の証言は信じられにくい——そうした社会の側の思い込みと闘うために、彼女は裁判で被害当時と同じ髪型と服装を選んだという。キャロルはフランスのジゼル・ペリコの名も挙げ、「立ち上がり、自分を守った」高齢女性たちの連帯を語った。ここにあるのも、家族というより社会全体が長く共有してきた「誰の言葉なら信じるか」という規範への異議だ。

並べてみると、5つの出来事は法域も背景もばらばらなのに、同じ問いの周りを回っている。伝統、文化、コミュニティー、通過儀礼、「女性はこうあるべき」という思い込み——これらの言葉は、帰属や継承の支えになる一方で、当事者の同意なき統制を覆い隠す言葉にもなりうる。牛にも、17歳の少女にも、18歳の新入生にも、そして声を上げた女性たちにも、共通して欠けていたのは「拒否できる」という選択肢だった。パラヴァ=レ=フロの闘牛は、途切れていた歴史ゆえに止められた。ブザンソンの家族は、文化を理由にしても暴力は暴力だと断じられた。コンピエーニュの大学は、学外の行事だからと責任を免れられるのかを問われている。逆に英国とアメリカの事例は、規範を上から禁じるのではなく、内側から語り直すことで変えようとする試みだ。

日本の読者にとって、これらは決して遠い話ではないだろう。家族の期待に沿わない恋愛や進路を選びにくい、部活動やサークルの慣行に異を唱えにくい——そうした感覚は、一般に日本でもしばしば語られることだ。フランスの裁判所が示したのは、「伝統だから」「文化だから」という説明を、外部の目で検証し、当事者の安全と同意を基準に線を引き直す、という態度だった。これは伝統を全否定することとは違う。パラヴァ=レ=フロの判決文自体、「地域に根付き、途切れることなく続く伝統」であれば例外を認めると明記している。問題は伝統そのものではなく、そこから離れたいと望む個人のための出口が用意されているかどうかだ。

これから先、闘牛をめぐる訴訟は他の自治体にも広がるだろうし、ビズタージュをめぐる捜査の行方は、学校の外で起きたことに大学がどこまで責任を負うのかという新しい基準を作るかもしれない。英国の手紙のプロジェクトや、キャロルの証言も、規範が一夜にして変わるものではなく、対話と証言の積み重ねでしか動かないことを示している。

あなたの身近にも、「これが伝統だから」「これがうちのやり方だから」という言葉で、誰かの「嫌だ」が飲み込まれている場面はないだろうか。伝統を大切にすることと、そこから離れたいと願う一人の人間を守ることを、私たちは本当に両立できるだろうか。

出典

  • franceinfo (titres):Saisie par des associations, la justice demande l'annulation d'une corrida à Palavas-les-Flots (2026/9/24)
  • franceinfo (titres):"Je lui ai écrit la lettre que j'aurais aimé recevoir" : le créateur de la série "Adolescence" sort un ouvrage compilant des lettres de pères à leurs fils (2026/9/24)
  • franceinfo (titres):"Méfiez-vous des vieilles femmes", prévient E. Jean Carroll, la journaliste qui a fait condamner Donald Trump pour agression sexuelle (2026/9/24)
  • franceinfo (titres):Cheveux tondus, tentative d'enlèvement de leur propre fille : une famille condamnée à Besançon après avoir voulu l'empêcher de vivre son histoire d'amour (2026/9/24)
  • franceinfo (titres):"Mon fils venait d'avoir 18 ans" : après la mort d'un étudiant à Compiègne, ses parents déposent plainte contre X pour bizutage et homicide involontaire (2026/9/24)

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