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高校生が壊した窓ガラスの代金は、誰の財布から出るのか
社会

高校生が壊した窓ガラスの代金は、誰の財布から出るのか

10月1日木曜日、フランス全土で900校を超える高校が封鎖された。その数日間で約2000人が身柄を拘束され、司法相のジェラルド・ダルマナンによれば、そのうち90%が未成年者だったという。焼かれた校舎、襲撃されたバス停、壊された校長室――映像に映るのは、顔を隠した十代の若者たちと、彼らを前に戸惑う警察官の姿だ。「警察官は皆、家庭を持つ父親であり、相手が子どもたちであることが多いので、行動に出るのは非常に難しい」と、30年以上勤務してきた警察組合Unsa-Policeのルディ・マンナは語っている。

この混乱のなかで、ひとつの問いが政治の中心に浮上した。壊したのは子どもだとして、その代金は誰が払うのか。

共和党の国民議会議員団長ロラン・ヴォキエは、オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏だけで被害額が2500万〜3000万ユーロに上ると見積もり、「壊した者が支払う」原則の適用を求めた。実はフランスには2019年以降、財物損壊の被害を国家が負担した場合、加害者に費用の返還を求める法的枠組みがすでに存在する。ところが上院に提出された政府報告書によれば、この制度はこれまで一度も実際に行使されたことがない。理由は単純だ。目出し帽をかぶった集団の中から、誰が実際に火を放ったのかを特定することがほとんど不可能だからである。そこで政府は、集団の場にいた者には、自ら手を下していなくても最大1万ユーロの修復費用を連帯して負担させる「連帯責任」の法案を進めようとしている。ちなみに政府の試算では、3年前にナンテールでナエルが死亡した後の暴動による損失は少なくとも8億ユーロ、黄色いベスト運動では約2億5000万ユーロ、パリ・サンジェルマンの優勝騒ぎでも「数百万ユーロ」の被害が出たとされる。暴力が可視化されるたびに、同じ問いが繰り返されてきたわけだ。

ダルマナンはさらに踏み込み、未成年者本人ではなく親の民事責任を追及するよう検察官に求めた。「支払うのは未成年者ではなく親だ」「15歳や16歳の子どもが、なぜバス停や学校長を攻撃しているのか」という彼の言葉には、拘禁よりも親への請求のほうが「はるかに有用だ」という計算がにじむ。

この発想に対し、生徒保護者団体FCPEの副会長ムスタファ・オズジェリクは「解決策ではない」ときっぱり答えた。損壊行為そのものは非難しつつも、「大臣はこの問題について発言しましたが、高校生たちの正当な要求について、もっと発言してほしかった」と述べ、議論の重心が被害弁償ではなく、生徒たちが何を訴えているかに戻るべきだと示唆した。司法官組合はさらに厳しい。119人の生徒が負傷し、催涙ガスやLBD、爆発性手りゅう弾まで使われたことを挙げ、「若者を黙らせるために弾圧するのをやめよう」と呼びかけている。彼らが問題視するのは、未成年者に対してこそ憲法や国際条約が求めてきた「教育的対応」が、いまや検察の「全面的な弾圧」の方針の前で後回しにされている、という点だ。

ここで見過ごされがちなのは、この論争が単なる予算の話ではないということだ。親に請求するという発想は、子どもをまだ家庭の管理下にある存在として扱う。一方で、未成年者本人を教育的に導くべきだという司法官組合の立場は、子どもを自分の行動に responsibility を持ちうる、成長の途上にある市民として扱う。どちらを選ぶかによって、同じ「15歳の放火」という出来事の意味がまったく違って見えてくる。ヴォキエやダルマナンの言葉には、損害を出した家庭に経済的な痛みを感じさせることで次の封鎖を抑止できる、という前提がある。だがFCPEが指摘するように、修理費を払えと迫られて変わるのは、抗議の是非についての子どもの考えではなく、その家庭の生活の余裕かもしれない。

日本で同じ場面を想像してみると、保護者の監督責任は一般に重く受け止められる社会だと言われるが、未成年者が集団で学校や公共物を破壊するという事態そのものが、ここまで大規模な形で起きることは稀だ。そのため、集団的な抗議行動に伴う損害を誰が負担するかという制度論自体が、日本では表舞台に出てくる機会が乏しい。問われているのが「個人の不始末」なのか「集団としての政治的表現の副産物」なのかによって、責任の所在の捉え方がまるで違ってくることが、このフランスの論争を通じて見えてくる。

アメリカについては、学校や警察、裁判所が担う権限が地域によって大きく異なるとされることが多いが、今回のフランスの議論に対応するような具体的な事例は、ここでは確認できない。ただ、治安維持の権限がどこまで現場の警察に委ねられ、どこから司法や行政が引き取るのかという線引きの難しさは、フランスの警察官が直面している「14歳の子どもに対しては対応を変える」というマンナの言葉にも通じる普遍的な課題ではある。

この先、連帯責任の法案が成立すれば、集団の場に居合わせただけの生徒やその家庭にも最大1万ユーロという重い負担がのしかかる可能性がある。低所得の家庭ほど、この負担感は大きくなるだろう。皮肉なのは、損害を抑止するための制度が、結果として経済的に弱い家庭をより強く締め付け、子どもの行動を教育的に正していくための時間と機会を、かえって奪いかねないことだ。被害を受けた学校や自治体が納得できる形で修復されることと、未成年者が自分の行動の意味を学び直す機会を保障されること――このふたつは本来、矛盾なく両立しうるはずだが、フランスの現場では今、前者の論理ばかりが急いで前面に押し出されているように見える。

壊れた窓ガラスの代金を誰が払うかという問いの奥には、子どもをどんな存在として社会が扱いたいのか、という、もっと大きな問いが隠れている。あなたなら、未成年者の行為への責任は、本人の学び直しと被害の回復のどちらを起点に設計すべきだと考えるだろうか。

出典

  • franceinfo (titres):Appliquer la loi du "casseur payeur" pour les dégâts en marge des mobilisations lycéennes comme le veut Laurent Wauquiez est-il si simple ? (2026/10/3)
  • franceinfo (titres):Demander aux parents de payer pour les dégradations en marge du mouvement lycéen "n'est pas la solution", déplore la FCPE (2026/10/2)
  • franceinfo (titres):Le syndicat de la magistrature appelle à cesser "de réprimer la jeunesse pour la faire taire" (2026/10/2)
  • franceinfo (titres):Gérald Darmanin demande aux procureurs de faire "payer" aux parents les réparations des dégâts provoqués par leurs enfants lors des blocages de lycées (2026/10/2)
  • franceinfo (titres):"Ces gamins n'ont pas de limites !" : face à des manifestants lycéens souvent mineurs, des interventions plus délicates pour les policiers (2026/10/2)

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