RFI France
社会

「買えない」が「借りられない」に変わるとき――フランスの住宅危機が映す、住まいの二つの顔

35歳未満のフランス人を100人集めたと想像してほしい。Ipsos BVAがfranceinfoとLe Figaro Immobilierのために行った調査では、そのうち62人が、いつかは自分の家を持ちたいと考えている。ところが、今後数年のうちにそれが実現できると思う人は、21人しかいない。

「いつかは持ち家」という夢は、おそらく日本の読者にも身近だろう。ただ、いまのフランスではこの夢の足元で、もっと深刻なことが起きている。買えない人が増えただけではない。借りることまで難しくなってきたのだ。以下、10月29日前後に伝えられた4つのニュースをつなぎながら、住まいを「投資商品」として見るか「生活の基盤」として見るかという緊張を考えてみたい。

買えない人が賃貸市場に流れ込み、借りる場所まで消えていく

まず購入の側から見ていこう。パリの公証人エロディー・フレモン氏は、初めて住宅を買う人にとって状況が「はるかに難しくなっている」と語る。理由は、金利の上昇と頭金の増額という二重の障害だ。しかも、現在の金利水準は1980年代・1990年代の記録にはまだ遠いが、上昇のスピードが極端に速いと彼女は指摘する。水準そのものより、変化の速さが人々の計画を狂わせているのだ。

ここで見過ごされがちなのは、購入市場の停滞が購入市場の中だけで完結しないことだ。フレモン氏によれば、買えない人が賃貸市場に回るため、需給が逼迫している。その結果、いまでは賃貸物件を見つけること自体が難しい。買う道がふさがれると、人は借りる道に押し寄せる。そこも詰まれば、行き場がなくなる。

その実例がトゥールーズだ。FNAIM Midi-Pyrénées会長のセバスティアン・ベネ氏は、ラジオ番組で「前例のない供給不足」を語った。この都市圏には年平均で約1万人が転入している。一方で、小規模住宅の入居者の入れ替わりは歴史的な低水準にある。住んでいる人が動かないので、空きが出ない。学生は「困難でつらい新学期」を迎え、仕事で移ってくる人も住まいを確保しにくい、と彼は述べた。

同氏は、所有者が賃貸に踏み切らない理由として、税制の見通しの立てにくさ、投資家向けルールの不安定さ、初めて買う人が購入しにくいことを挙げている。物件を空室のままにしたり、別の用途に変えたりする所有者も多いという。新築も、第三者による異議申し立てや経済的制約で歴史的な急停止に見舞われている。「今年供給された住宅は、何年も前に計画されたもの」であり、2027年にはさらに悪化し、戦後の水準と比べても記録的な状況になる、というのが彼の見立てだ。

数字が突きつけるもの:927人

この話を「不動産市場の調整局面」と読むこともできる。だが、同じ日に発表された別の数字が、その読み方に待ったをかける。

「路上の死者」集団は、2025年にフランスでホームレス927人が死亡したと発表した。平均年齢は49歳、83%が男性だった。場所の内訳は、路上で暮らしていた人が306人、宿泊施設を利用していた人が264人、そして357人は「どこで寝ていたのか誰にも分からない」。2024年の938人とほぼ同水準だが、集計を始めた2012年からは2.2倍になった。148人が暴力による死で、15歳未満の子どもも20人含まれる。

集団は、数えているのは死亡証明書で確認された死者だけなので、実際の数は「必ずこれより多い」と述べる。さらに「この数字は統計上の偶然ではない。毎年、わが国が自らに突きつける告発状のページだ」と訴え、報告書の執筆者らは、早すぎる死は避けられない運命ではなく「政治や社会の選択の結果だ」としている。

ここから先は私の解釈である。トゥールーズの賃貸難と927人という数字は、同じ連続線上に並べて語ってよいのかどうか。原文はこの二つを因果で結んでいない。したがって、賃貸難が路上の死を生んだとまでは言えない。ただ、住まいの市場が逼迫するとき、その圧力が最後に集まる場所はどこなのか、という問いは避けられない。108人が過去に路上生活を送った人で、6人が最近住まいを失った人だったという内訳は、住まいの喪失が長く尾を引くことを示唆しているようにも読める。

規制か、供給か:フランスの世論が抱える矛盾

フランスでは、この緊張が世論調査にそのまま表れている。10月7日と8日にIpsos bvaが実施した調査では、83%が家賃規制の全国への拡大に賛成した。ところが同じ調査で、81%が賃貸住宅に投資する家主への課税軽減も望んでいる。

借り手を守れと言いながら、貸し手には優しくあれとも言う。矛盾にも見えるが、私にはむしろ、問題の構造を正直に映した回答に思える。住まいが足りないとき、家賃を抑えたいという気持ちと、貸してくれる人がいなくなっては困るという気持ちは、どちらも切実だからだ。

フランスの家賃規制は2019年にパリで始まり、他地域に広がった。現在はリール、リヨン、ヴィルールバンヌ、ボルドー、モンペリエ、グルノーブル、セーヌ=サン=ドニ県、バスク地方の複数自治体などで適用され、元老院によれば9つの地域にまたがる計70自治体に及ぶ。原則として、家主は基準家賃の上限額を20%超えて設定できない。10月21日、上院はこの制度を2028年11月まで2年間延長する案を可決したが、新たな自治体の参加は認めなかった。成立にはなお手続きが必要だ。つまり、制度は続くが、広がらない可能性がある。

隣国の「家賃の抑え方」は、住まいへの考え方の違いでもある

ニュースが紹介する近隣国の方法は、それぞれ性格が違う。

ドイツの「家賃ブレーキ」は2015年に導入された。市場が特に逼迫した地域で、新規契約の家賃を原則として近隣の類似住宅の家賃の10%増しまでに抑える。基準が800ユーロなら上限は880ユーロだ。新築や最近改修された住宅などには例外があり、制度は2029年まで延長された。

オランダは、住戸に点数をつける。床面積、設備、断熱性能、エネルギー効率などが点数に反映され、点数が高いほど高い家賃を求められる。186ポイント以下の住宅が中間セグメントの規制対象で、超えれば自由市場になる。2年前に拡大され、政府は約30万戸の家賃が平均で月190ユーロ下がりうると見込んでいた。

スペインは10月、新たな措置を発表した。家賃を滞納していない一部の賃借人が契約を最長2年延長できる案と、基準価格を下回る家賃について年間改定の一部を2%までに制限する案が含まれる。住宅危機をめぐる抗議デモが各地で起きている国でもある。

この3つを並べると、規制の「かけ方」が三者三様なことがわかる。金額に上限をかけるのか(ドイツ)、品質に応じて価格を決めるのか(オランダ)、居続ける権利を守るのか(スペイン)。これは私の読みだが、いずれも「借りて暮らす」ことを一時的な通過点ではなく、恒常的な生活形態として扱っている点が共通しているのではないか。ただ、効果の面では慎重であるべきだ。Eurostatによれば、2026年第2四半期のEUの家賃は前年同期比で3%上昇しており、規制があっても上昇は止まっていない。フランスのInseeの数字でも、無家具の主たる住居の家賃は7月に前年同月比1.6%上がっている。

日本の読者はどこに自分を置くか

日本ではどうか。今回のニュースに日本の事情は含まれていないので、具体的な数字や制度には踏み込まない。ただ、一般に日本では、持ち家を人生の一つの到達点と見る意識が強いと言われる。「いつかは自分の家を」という感覚は、フランスの若者の62%という数字と、案外近いかもしれない。

だからこそ、フランスの事例は日本にとって一つの鏡になる。所有を後押しする政策は、持ち家を得られる人にとっては安心を生む。しかし、買えない人が賃貸に集まり、その賃貸が足りなくなったとき、借りて暮らす安定をどこまで制度が支えているのかという問いが、遅れて浮かび上がってくる。所有を促すことと、借りて暮らす人を守ることは、本来どちらかを選ぶものではない。それなのに、政策の重心はしばしば片方に偏りがちだ、というのが私の見立てである。

では、米国はどうか。分析会議の整理でも触れられているとおり、今回の関連ニュースに米国の住宅事情を示す材料はない。したがって、ここで比較することは控える。確かなのは、フランスの議論が欧州の隣国の試行錯誤を参照しながら進んでいることだけだ。

この先、何を見ればいいのか

今後を見通すうえで、手がかりは三つあると考える。

一つ目は、家賃規制の延長案が最終的にどう成立するかだ。上院は2年延長を可決したが、新たな自治体の参加は認めなかった。規制が続くことと広がることは別の話で、83%の支持が政策にどう反映されるのかは、まだわからない。

二つ目は、家主への税制や投資ルールがどう変わるかだ。ベネ氏が語ったように、今後の住宅関連法で家具付き賃貸に関する制度が変わる可能性があり、それが所有者の行動を左右する。貸し手に向けたシグナルが「悪いもの」であれば、空室や用途変更が増え、供給はさらに細るかもしれない。

三つ目は、供給の遅れそのものだ。ベネ氏の見通しでは、新築は何年も前の計画の産物であり、2027年はさらに悪くなる。すぐに効く特効薬はなさそうだ。

それでも、927人という数字が示すように、時間の遅れは誰にとっても同じ重さではない。住宅政策を価格の上げ下げだけでなく、供給の量、住み続けられる安定、そして命への影響という三つの物差しで測り直す必要がある。それが今回のニュースから私が引き出す、最も重要な含意だ。

最後に、読者に問いたい。住まいは、誰かの資産運用の対象であると同時に、誰もが夜を過ごす場所でもある。その場所を得る機会を、所有者の投資判断にどこまで委ねてよいのだろうか。そして、あなたが「借りる側」になったとき、その安心は誰が、どんな仕組みで守ってくれるのだろうか。

出典

  • Radio France Économie:Immobilier : est-il de plus en plus difficile d’accéder à la propriété ? (2026/10/30)
  • franceinfo (titres):En 2025, 927 personnes sans domicile fixe sont mortes en France, selon le collectif "Les Morts de la rue" (2026/10/29)
  • Radio France Économie:Encadrement des loyers : comment nos voisins européens tentent de freiner la hausse des prix (2026/10/29)
  • Radio France Économie:Immobilier à Toulouse : pourquoi il est devenu quasi impossible de trouver une location (2026/10/29)

フランスメディアの関連記事

記事を検索