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鳴らなかった電話と、70万の署名――差別を生む言葉に、誰がどこまで手を伸ばせるのか

「政府から電話があり、お悔やみを伝えてもらえるのを待っていた」。10月23日にイヴリーヌ県トラップで殺害された26歳のペンゴ・ボシオ・ワンギさんの父親は、そう考えていたという。11月3日、父親の代理人であるジネブ・アラミ弁護士はfranceinfoの取材に、依頼人は息子の死後、政府関係者と「連絡を取っていない」と改めて述べた。

同じ11月3日、フランス国民議会のウェブサイトでは別の数字が節目を超えた。「フランスの視聴覚メディアからCNewsを排除する」ことを求める請願が、700 000件を超える署名を集めたのだ。

一方は一人の父親の沈黙であり、もう一方は数十万人の意思表示である。一見遠い二つの出来事は、同じ問いでつながっている。差別を生みかねない言葉に対して、政治家、規制機関、司法、そして国家元首は、それぞれどこまで手を伸ばせるのか。今回の一連の報道は、その線引きの難しさを浮き彫りにしている。

事件が「放送局の閉鎖」要求に結びついた経緯

まず事実を整理する。10月23日の金曜日、午前10時30分ごろ、男が発砲し、トラップとラ・ヴェリエールで1人が死亡、7人が負傷した。国家反テロ検察官によれば、39歳のフランス人ケヴィン・テシエ容疑者は、「イスラム教徒、アフリカ系、または北アフリカ系のように見える人々」を意図的に撃った疑いがある。マクロン大統領はこれを「人種差別的なテロ襲撃」と呼び、「わが共和国と国民の歩みにおける転換点」だと述べた。

ここから議論は、犯人個人の動機を超えて広がった。トラップのアリ・ラベ市長(Génération.s)は、移民やその子孫を標的にする言説にCNewsが過度に時間を割いているとして、同局に責任があると非難した。LFIの複数の議員は、政権を担えばボロレのメディア帝国を「解体する」と表明した。エコロジスト党のギヨーム・ゴンタール上院議員は、党として「大置換理論」の刑事化とCNewsの禁止を支持していると語り、極右への傾斜が「人種差別的言論の解放」を招くと警告した。同議員は「フランスには移民の問題はなく、人種差別の問題があるだけだ」という立場に立つ。さらにゴンタール氏は、10月17日の略奪について移民出身の若者を指摘した元首相エドゥアール・フィリップ氏の発言を、「混同と人種差別的な発言」だと批判した。

注意したいのは、ここで挙げた報道のどこにも、襲撃とCNewsの番組との因果関係を示す記述がないことだ。責任を問う声は市長や政治家の主張として伝えられているにとどまる。この点は、事実と主張を分けて読む必要がある。

「閉鎖できるのは議会ではない」という制度の壁

請願が70万を超えても、放送局がすぐ消えるわけではない。franceinfoによれば、国民議会の規則では、30県から集まった署名が500 000人を超えれば、本会議での討論が可能になる。ただし、その前に委員会が、請願を処理するか審査するかを決める。文化問題委員会のアレクサンドル・ポルティエ委員長は、数日以内に検討すると述べている。基準を超えても自動的に討論になるわけではない。治安部隊の銃器使用をめぐる別の請願は、500 000人を大きく上回ったが、7月に法律委員会の議員が処理した。

さらに、討論が開かれても閉鎖はできない。地上デジタル放送のチャンネルを閉じる権限は、独立行政機関のArcom(視聴覚メディア規制機関)にある。左派の議員でさえ、この点は認めている。ソフィー・タイエ=ポリアン議員は「それを実行するのは私たちの役割ではありません。私たちにその権限はありませんし、それでよいのです」と述べた。そのうえで「Arcomの権限が十分でないなら、法律を変える力はあります」と付け加えた。

私はこの発言に、フランスの制度設計の特徴が表れていると読む。ここからは解釈である。議会は、放送局を直接罰するのではなく、規制機関が使える道具を法律で変えるという、一段手前の役割を自覚している。政治が個別の番組を裁けば、時の多数派が気に入らない放送局を消せることになる。それを避けるために規制機関が独立しているのだろう。

Arcomの手持ちの道具は少なくない。是正勧告、金銭的制裁、放送権の一時的な縮小を経て、最終的には許可の取り消しに至る段階的な仕組みである。C8には数百万ユーロの罰金を科したうえで、2024年に地上波周波数の更新を行わないと決めた。CNewsも、憎悪や差別をあおる内容をめぐってすでに罰金を科されている。6月には、「移民とイスラムがフランス社会にもたらすとされる脅威」を扱う番組を念頭に、「明白かつ継続的な不均衡」の是正を命じられた。CNewsはこれを国務院に争っている。一方で、同局の放送許可は2024年12月に更新され、2035年まで有効だ。つまり規制機関は、制裁を科しながらも、閉鎖の判断には踏み込んでいない。

規制機関が自ら引いた線

この隔たりを、Arcom自身が言葉にした。マルタン・アジャリ会長は11月3日(火曜日)、France Interで、一部メディアに責任があるかどうかは「政治的議論に属する」と述べ、「私たちが判断を下すべきことではない」と明言した。

アジャリ会長は、言葉の重みを否定していない。「言葉には心理的、社会的、集団的、民主主義的な意味がある」と認めている。そのうえで、視聴覚メディア法の観点からは言葉が法的な枠組みを守らなければならないとし、逸脱すれば制裁を科すと述べた。ただし制裁の対象は、「実際に発せられた特定の発言」であり、「個別の事例ごと」に判断する。奨励された「雰囲気」や「空気」、視聴者の心理を条件づける作用は、規制の対象に当たらないという。

ここに、今回の議論のずれがある。請願を支持する人々が問題にしているのは、おそらく個々の発言よりも、番組全体が積み重ねる空気だろう。これは私の推測だが、Arcomが答えられるのは「この発言は違法か」であって、「この局は社会に何をもたらしたか」ではない。後者を問うなら、場所は議会であり、世論であり、選挙になる。政治家が規制機関に「本来の仕事をしろ」と求めても(ヤニック・ジャド上院議員はそう訴えた)、規制機関が自分の権限の外だと答えれば、すれ違いが生じる。

擁護する側の論理も、同じ線引きの上にある。CNewsは請願を「政治的」だとしてコメントを拒み、極右の意見を広めているとの批判を一貫して否定している。マリーヌ・ルペン氏はXに、番組や論説委員、討論は「活力ある民主主義の根幹を成す意見の対立に寄与している」と書いた。「誰もがこのチャンネルを視聴し、批判し、反論し、あるいは擁護できるべきです。それこそが自由なのです」とも述べている。同局を支持する対抗請願も始まったが、本人確認の仕組みがなく、署名者数は確定できない。数字の信頼性という点でも、二つの請願は同列に比べられない。

検察が動く言葉、動かない言葉

第三の担い手が司法である。事件後、SNS上で配達員に対する人種差別的暴力を呼びかける投稿が広がっているとして、パリの検察が捜査を開始した。UberとDeliverooは、franceinfoに「深くショックを受けている」と語り、配達員に予防のメッセージを送ったと説明している。

ここで、先ほどのArcomの線引きと並べてみたい。ここも解釈だが、特定の相手に向けた暴力の呼びかけは、捜査という手段で扱える。一方で、特定の集団への敵意が日常的に流れる「空気」は、放送規制の対象にもならず、刑事手続きにも乗りにくい。その隙間をどう扱うかが、いま政治に突きつけられている。ゴンタール氏の言う「大置換理論」の刑事化は、その隙間を法律で埋めようとする提案と読める。ただし、それが表現の自由とどう折り合うかは、今回の報道の範囲では示されていない。

もう一つの「介入」――国家元首の電話

アラミ弁護士の訴えは、規制や刑罰とは別の層の問いを含んでいる。franceinfoによれば、エリゼ宮はこれまで、サミュエル・パティさんの家族を迎え入れ(2020年10月)、ジェレミー・コーエンさんの両親に電話をかけ(2022年4月)、ローラさんの両親と面会し(2022年10月)、刑務官2人の家族を迎え(2024年5月)、リヤンナさんの両親と電話で話した(昨年6月)ことが伝えられてきた。今回、大統領周辺は「共和国大統領は、この種の事件では被害者の家族を気遣っている」と述べたが、連絡を試みたかどうかは明かさず、こうした事柄は「決して公表しない」とした。内務相や司法相らの事務所、ルコルニュ首相のチームからは、取材時点で回答がなかった。

私が注目するのは、この電話が法的には何の意味も持たないことだ。それでも父親が待ち、弁護士が公に不満を語るのは、国家が「これは共和国全体の出来事だ」と態度で示すことに、制度外の重みがあるからだろう。大統領自身が事件を「転換点」と呼んだ以上、被害者家族への対応がその言葉と釣り合っているかが問われるのは自然である。批判と制裁のあいだには、国家が何を象徴的に引き受けるかという第三の領域がある。

日本の読者として、どこを見るか

日本でも、差別的な言動と表現の自由の境界は、折にふれて議論されてきたと一般に言われる。ただ、今回の報道から比較できるのは、制度の中身ではなく、問い方の構造である。フランスでは、放送局の閉鎖を求める声と、規制機関が許される権限の間に、公然とした隔たりがある。しかも、その隔たりを当事者たちが認め、「政治の仕事」「規制機関の仕事」と口に出している。米国との比較は、今回の素材からは行えないため、ここでは控える。

これからの焦点

短期的な焦点は三つある。文化問題委員会が請願を処理するのか討論に付すのか。CNewsが争う国務院の判断がどうなるのか。そしてArcomが今後も個別の発言を対象に制裁を続けるのかである。タイエ=ポリアン議員が示唆した「法律を変える」道が現実になるかどうかは、討論の行方次第だ。

私の見立てでは、鍵になるのは、発言への批判と法的制裁を混同しないことである。政治が空気を批判するのは自由であり、必要でもある。しかし、その批判をそのまま放送許可の剥奪に直結させれば、規制への信頼は揺らぐ。逆に、規制機関が「個別の発言しか見ない」と言い続ければ、被害者や地域社会の側には、守られていないという感覚が残りかねない。

あなたの社会なら、差別的な言論による被害を防ぐために、政治家は批判を、規制機関は個別の違反の判定を、司法は暴力の呼びかけの捜査を担うとして、それでもなお残る空白を、誰が、どんな手段で埋めるべきでしょうか。

出典

  • RFI France:«La France n’a pas un problème d’immigration, elle a un problème de racisme», dénonce Guillaume Gontard, sénateur écologiste (2026/11/3)
  • franceinfo (titres):Attentat raciste à Trappes : le père de Pengo Bossio Wangi n'a pas été contacté par Emmanuel Macron ou le gouvernement, affirme son avocate (2026/11/4)
  • franceinfo (titres):Peut-on "supprimer CNews" ? On répond à quatre questions sur la fermeture de la chaîne, réclamée par plus de 700 000 personnes dans une pétition (2026/11/4)
  • franceinfo (titres):Des appels à des violences racistes contre des livreurs lancés sur les réseaux sociaux, le parquet de Paris ouvre une enquête (2026/11/3)
  • franceinfo (titres):Attentat raciste à Trappes : l'Arcom "n'a pas à se prononcer" sur la responsabilité de certains médias, selon le président de l'institution (2026/11/3)

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