RFI France
社会

誰が「身体」と「時間」と「顔」を守るのか――オコンの降板、ポガチャルの脊椎、電子タバコの炎が問いかけるもの

10月31日土曜日、メキシコGPの予選を前にして、ハースは短い声明を出した。リザーブドライバーのリョウ・ヒラカワが、週末の残りでエステバン・オコンに代わる。最後の一文は「現時点で、これ以上のコメントはしない」だった。

オコンは今季18戦で7ポイント、ドライバーズランキングは16位。最高位は9月26日のアゼルバイジャンGPでの8位で、直近はバーレーン15位、シンガポール13位、オースティン14位だった。数字だけを見れば、チームの判断は理解しやすい。

それでも、この降板が気になるのは、数字だけでは説明しきれないものが残るからだ。オコンはF1で10年目のシーズンを戦っていて、来週のブラジルGPで通算200戦に届くはずだった。2024年にもアルピーヌで、チームを離れることが決まっていたために最終のアブダビGPを見送らされ、リザーブのジャック・ドゥーハンにシートを譲っている。契約は満了が近く、2027年のシートは未定だ。報道によれば、F1に残るとしてもリザーブドライバーになる見込みだという。

ここから先は、記事の事実ではなく私の読みである。レーシングドライバーの「シート」は、本人の所有物ではなく、組織が成績や契約や将来性を見ながら配分する資源のように見える。ヒラカワにしても、今季はフリー走行にしか参加しておらず、決勝を走ったことがない。リザーブとは、必要になる日まで自分の時間を待機に差し出す立場だ。その時間が使われるかどうかも、本人が決めるわけではない。

この「本人が決めきれない領域」は、同じ日に流れた別のニュースにも顔を出していた。

脊椎三カ所の骨折と、「勤務時間中」に起きた発火

タデイ・ポガチャルは同じ土曜日、The Athleticのインタビューで、8月末のLa Vueltaでの落車について語った。すでに分かっていたC7の骨折に加え、T1とT2も折れていたことが、2週間前のスキャンで分かったという。「椎骨が3カ所折れていると知ったとき、正直、生きていて、立っていられるだけでうれしかった」。28歳の彼は、鎖骨の手術を受け、世界選手権、地元開催の欧州選手権、イル・ロンバルディアを欠場した。

語り口は淡々としているのに、中身は重い。右手でハンドルのコントロールを失い、前方に投げ出され、頭をぶつけたことも起き上がったことも覚えていない。腕を上げられず、医師に代わりに上げてもらった。手術後の2週間は精神的にも「大丈夫ではなかった」。いまは違和感がほぼなくなったが、再び落ちれば本当に深刻になりかねないし、左腕や首に重いものを持たせないよう気をつけなければならない、と本人は言う。

彼はUAE-XRGとの契約を2032年まで延長している。ここも私の解釈になるが、長期契約は、この身体が長く機能し続けることへの賭けでもある。けがの後の「気をつけなければならないこと」は、インタビューでは本人の言葉として語られている。そこに組織がどこまで関わるのかは、記事からは読み取れない。身体が成果を生む資源であるほど、その管理が誰のものかは見えにくくなる。

見えにくさが、法廷で争点になった例もある。フランスの労災をめぐる話だ。

2024年にさかのぼる事案では、在宅勤務中の従業員がビデオ会議に参加していた。ズボンのポケットに入れていた電子タバコが突然発火し、同僚が画面越しに炎を目撃した。従業員は消そうとして、手に二度、太ももに三度のやけどを負った。事故は個人の持ち物に起因し、仕事とは関係がないという主張が出た一方で、保険機関はその主張を退けた。クレルモン=フェラン裁判所は、事故が勤務時間・勤務場所に起きたのなら、原因が個人の物であっても労働災害として認めるべきだと結論づけた。

ところが別の同様の事案では、ナンテールの裁判所が反対の判断を示した。従業員の私物による事故であり、職務活動の外で起きたとして、従業員の過失を指摘したのだ。ポケットの金属の鍵がバッテリーの極に触れて過熱したという主張や、職場では電子機器の使用が禁じられていたという事情も取り沙汰されたという。弁護士のエリゼ・ベネアは「司法には常にアレア(不確定要素)がある」と語る。いずれの案件も、まだ最高裁には上訴されていない。

ここで問われているのは、責任の線を「時間と場所」で引くのか、「原因となった物の持ち主」で引くのかという点だ。ポケットの中の電子タバコは私物だが、火がついたのは勤務中の画面の前だった。本人の生活と組織の時間が、同じ椅子の上で重なっていたことになる。

未消化の休暇と、年に50万から100万の可能性

フランスの国営ラジオ番組「Ma vie au boulot」には、アナという相談者が登場する。近く協定解雇を結ぶ予定で、未消化の有給休暇とRTT(労働時間短縮に伴う休日)がたくさん残っている。雇用主はそれをすべて支払うべきか、という質問だ。回答者のサンドリーヌ・フーロンの答えは、手元の記事には含まれていないので、ここでは触れない。

注目したいのは、質問の立て方のほうである。休暇は「取って休む時間」であると同時に、退職の局面では「精算されるべき価値」として語られる。私の読みでは、時間は本人のものだという前提がある一方で、その時間を組織が一度預かっている、という見方も同居している。日本でも有給休暇は取りにくいと一般に言われるが、その場合に「残った日数」を誰がどう扱うのかという問いは、フランスのこの相談とは違う形をとりそうだ。

時間の次は、顔や名前の価値の話になる。フランスのバスケットボール界では、米国のNCAA(大学スポーツの統括組織)に進む若い選手が、昨シーズンの68人から今シーズンは79人に増えた。きっかけの一つが、ここ5年ほどで、学生が自分の肖像権によって収入を得られるようになったことだ。

フランス代表経験のあるエドウィン・ジャクソンは、選手たちの選択に理解を示す。「子どもたちに『ここに残って、月600 €の育成契約を結びなさい。年500 000から1 millionを得られる可能性があるのに』と言うのは、とても偽善的だと思うことがある」。明日どうなるかは誰にも分からない、というのが彼の実感だ。

一方、ナンテールのウイングで、18歳のユゴ・イムガ=ムクリは誘いを受けながらフランスに残る。「私はお金に引かれたことはありません」。フランスで育ててもらった恩義を挙げ、フランス経由でNBAに進んだ選手たちの例を理由にしている。リーグ会長のフィリップ・オスールは、NCAAとの競争は激しいが不公正ではないとみて、対話を続ける。ただし、引き抜かれた若い才能の育成に対価が支払われない状態が続けば「すべてが崩れてしまう」とも警告している。

ここで見過ごされがちなのは、三者の「守りたいもの」がそれぞれ違うことだ。選手は自分の肖像から得られる収入を、クラブは育成に注いだ投資を、リーグは仕組み全体の存続を守ろうとしている。米上院は先月、特に肖像権を規制する法案を可決した。反対派は、この法案が搾取的な仕組みを強化しかねないとみている。肖像を本人のものとして認める流れが、かえって別の形で本人を縛る可能性がある、という懸念だろう。

「本人のもの」と言い切れないものを、どう扱うか

五つのニュースを並べると、共通する構図が浮かぶ。身体、時間、肖像という、働く人が持つ資源は、本人のものでありながら、組織の成果の中で運用される。そして問題は、その境目が曖昧なときに生じる。

オコンの降板では、シートの配分を誰が決めるのかが問われた。ポガチャルの脊椎は、けがの後の管理が誰の責任かを考えさせる。電子タバコの事案では、事故が仕事の内か外かの線引きで、裁判所の判断が割れた。アナの質問は、時間の精算の問題である。バスケットボール選手の肖像は、本人、育成クラブ、国の制度の三者が引っ張り合っている。

フランスの特徴を一つ挙げるなら、これらの境界を、契約、裁判、ラジオの相談コーナー、議会といった、複数の場で公然と言葉にしている点だろう。私の印象では、ここには、個人の権利は組織との関係の中で明文化し、交渉し、必要なら争うものだという感覚がある。日本では、こうした線引きが職場の慣行や空気の中で曖昧に処理されることが多いと言われるが、それが良いか悪いかはここでは決めない。ただ、曖昧さが残る場合、そのコストを払うのは多くの場合、個人の側ではないだろうか。

これから見ておきたいこと

今後の焦点は、少なくとも三つある。電子タバコの事案が最高裁に上がるかどうかと、判断が統一されるかどうか。米国の肖像権をめぐる法案が、選手にとって守りになるのか、搾取を強めるのかということ。そして、2027年のシートが未定のオコンが、どんな立場でF1に残るのかということだ。いずれも、結論はまだ出ていない。

最後に、読者に問いたい。あなたの職場では、あなたの身体、時間、そして顔や名前の使われ方を、誰が決めているだろうか。成果を出すために組織があなたの何を使うとき、あなた自身はどこまで「ノー」と言えるべきだろうか。その線は、いま誰の言葉で書かれているだろうか。

出典

  • franceinfo (titres):F1 : le Français Esteban Ocon écarté par Haas pour le Grand Prix du Mexique (2026/11/1)
  • Radio France Économie:En cas de rupture conventionnelle, mon patron doit-il me payer les congés payés et RTT qu'il me reste ? (2026/10/31)
  • franceinfo (titres):"On ne peut pas tuer des rêves" : pourquoi de plus en plus de jeunes espoirs du basket français sont séduits par la filière universitaire américaine (2026/10/31)
  • franceinfo (titres):"Je suis juste content d'être en vie et d'être debout" : Tadej Pogacar révèle que sa blessure était plus sévère que le diagnostic initial (2026/10/31)
  • Radio France Économie:Quand la cigarette électronique s'enflamme au travail (2026/10/31)

フランスメディアの関連記事

記事を検索