フランス映画祭で来日した「リベンジ」のコラリー・ファルジャ監督にインタビューをしました。
長編映画は初めてですが、どのような苦労がありましたか?
すごく大変でした。
特に撮影がいろいろな意味で難しかったです。
撮影期間も短かったし撮影場所も砂漠なので条件的には非常に厳しかったです。
2月に撮影したのですが、寒かったですし、
肉体的に演者も制作スタッフも疲労がありました。
血をたくさん流したりホコリとか、
とにかく体中が汚れていくという撮影でしたので大変でしたし、
撮影を始めてすぐに疲労してしまったんですね。
しかしそれが、逆に映画の中でエネルギーとして映し出されたかなと思います。
作品中は、とても血が出てきますが、
意図はあったんですか?
作品を作るにあたって、究極のバイオレンス、
度を超えたものを描きたかった。
その中で、血というのは狂気を象徴するものとして使おうと考えていました。
物語が進めば進むほど狂気が増していくなかで、
血液というのもは狂気を象徴するものだと考えながら使いました。
そのため、多量の血液を使うことになったし、
血液はバイオレンスを象徴するものだけでは無く、
そこに関わる人たちの苦痛を象徴していくアーティスティックな象徴として捉えていました。
この作品のアイディアは?
アイディアは、本当のジャンル映画を作りたいという思いがありました。
その世界をものすごく強いものとして描く必要があったわけです。
最初は登場人物の女の子はロリータ。
表面的なものだけを写し撮って、
ステレオタイプなただ可愛いだけの女の子
彼女はただそれだけが唯一の自慢できることであって、
彼女の能力とか知力とか全く何も持っていない空っぽなただの可愛い子。
そういう子に対して、男の人が注ぐ視線を彼女に作り上げたんです。
それがだんだん変貌していくという様を撮るというのが、この映画の目的だったんです。
最初はレイプのただ単なる犠牲者だったんですが、
彼女がそのことを乗り越えてすごい強いスーパーヒロインのような存在になっていく様を捉えて、
いわゆる可愛いだけの女の子だけじゃ無く、
自分の力だけを頼って乗り越えていくという。
そこまで変化するという女の子というのがアイディアだったんです。
キャスティングは?
自分でキャスティングしました。
今回はいろいろな国をキャスティングの対象にして、
いろいろな国の人と会い、そこから選ぶという事をしました。
言語も英語とフランス語の両方を使用することになったのですが、舞台も文化もどの国でも良かった。
むしろそれを混ぜることで良い作品になるのではないかと思いました。
結果、フランス人の俳優が一人とベルギー人の俳優が一人と主演のマチルダ・ルッツさんはイタリア系のアメリカ人です。
本当は彼女じゃ無くて別のヨーロッパ人の女優をキャスティングしていたんです。
撮影が始まる2週間ぐらい前に、ドタキャンと言うことになったんです。
プロジェクトが具体的に進むにつれ、撮影がものすごくハードになることで、
相当不安になったのが原因で彼女が降りてしまったんです。
キャスティングを始める際に一度会っていた女優のマチルダさんはスケジュールの都合で別の人になったんです。
もう一度マチルダさんに連絡を取って見たら空いていると言うことで彼女になったんです。
最初にあったときに、このプロジェクトに信頼を持ってくれていましたし、監督である私に対しても信頼を持ってくれていたのです。
今回撮影が激しいものになると言うことが分かっていたので、企画とか監督に信頼を寄せてくれない人であると、最後までいけないなという予感がありました。彼女にはそれがあったので、もう一回呼び戻したんです。
血みどろになるのを嫌がる女優もいたのでは?
女優にとってはとてもむずかしい作品だったと思います。
キャラクターもものすごい強いものが要求されるし、
いろいろなシーンが限界に至っているものがほとんどだと思うんですね。
だからこそ監督に対する信頼感が、最初から無ければ最後までいけないと思いました。
今回マチルダさんが演じた役というのは、心理的にも肉体的にも、ものすごく難しい作品でした。
心理的という部分についてはレイプのシーンがありましたし、
肉体的には本当に過酷で肉体的な疲労に打ち勝って最後まで撮影が続けられるかというのが重要だったと思います。
マチルダさんも最後まで撮影を終えましたけれど、途中で疲労困憊して出来ないと言うこともあったし、マチルダ自身がこの役を演じながら自分自身に打ち勝っていったという感じがします。
フランス映画「リベンジ」
7月7日(土)より、シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次ロードショー