ニコラ・サルコジ大統領が日本在住フランス人に向けて演説

東京、2011年3月31日(木曜日)

大使、
ご列席の皆さん、
親愛なる友人、
親愛なる日本ならびにフランスの友人の皆さん、

 私の来日最初の言葉は、命を失った多くの家族、地図から消えた町や村、廃虚と化した光景、死者を弔う葬儀すらまともにできず、避難生活を余儀なくされている住民に対し、私のすべての思いを向けるためのものです。自然の猛威にのみ込まれるように地震や津波の犠牲となった方々、私たちはフランスでもその凄惨極まりない映像を目の当たりにしました。

 私はすべてを失った人々、何枚かの写真、散在する材木、この惨禍に陥った人生の結末をみつめるしかない人々のことを思っています。

 私たちは関東地方で何世代も維持してきた水田をもう耕すことができなくなった農家の人々を、漁船が津波にのみ込まれるのを目撃した釜石の漁師の人々を見ました。

 私は家のあった界隈のがれきの中を、今でも家族の思い出の品々を探してまわる人々のことを思っています。見つかった品々は失われた世界、おそらく幸せなころの形見となるのでしょう。

 3月11日の地震は、日本の歴史上最大の地震の一つです。その結果は甚大で、未曾有の猛威の影響は、まさに想像を絶します。死者・行方不明者3万人、避難者24万人、何千人もの負傷者、何百万人もの人々に影響が及ぶなど、結局のところ国全体が不幸に包まれる結果となりました。

 この大惨事を前に言葉を失います。とはいえ、苦しんでいる人々を励ます言葉を見つけなければなりません。

 私はフランス全国民、ヨーロッパを代表して、さらにフランスが議長国を務めるG20を代表して、フランスの支援をすべての人々に伝えるために来ました。

 私は日本在住のフランス人に対しても、私たちすべての同国の人々の連帯を表明したいと思います。家族や友人、同僚を失った方もいます。ここにお集まりの皆さんも日本国民と同様、愛する国が被災し、変わり果てた姿となり、皆さんが経験したばかりの大震災の結果により脅威にさらされているのを見て苦しんでいることは承知しています。

 フランスは皆さんの味方であること、全国民が遠くからとはいえ、皆さんと同じ恐怖を感じながら経験を共有したことをご承知ください。

 フランスは地震発生当日に、極めて強い連帯感と日本国民を助けたいという強い意思を表明しました。そのことは菅直人総理大臣に伝えました。

 私たちは津波の被害が特に深刻な仙台市に市民安全部隊の救援隊員を急派しました。

 今日、大震災の全貌が少しずつ明らかになる一方、新たな危険である原発事故の危険にさらされています。こうした情勢に直面し、私たちは大きな責任感を発揮しなければなりません。

 福島原子力発電所で昼夜兼行で作業する日本の技術者を支援しようと、フランス、フランス原子力庁、フランス企業はすでに専門機器や防護具を提供しました。後ほど総理大臣に対し、フランスに追加支援の用意があることを伝えるつもりです。

 日本国民への支援は、フランス全国民の総意です。

 親愛なる同国の皆さんにも、国の連帯を表明します。私たちが地震後の最初の影響に直面して経験した状況を振り返りたいと思います。フランスの義務、私の義務は日本に在住するフランス人を保護することでした。危機発生当初から、私たちの領事館および大使館のネットワークが動員されました。駐日フランス大使以下、彼らの機動力、高い即応力、勇気をたたえます。日本在住フランス人社会の迅速な対応に対し、一部に慎重な意見があったことも承知しています。私はこの予防原則の適用がフランス当局の義務だったことを躊躇なく申し上げます。私はフランス人に首都圏を離れることを思いとどまる理由はないことを勧めるために下された決定を受け入れます。私の義務はフランス人を保護することであり、フランスにいる近親者のもとに帰りたいと希望する家族を支援したことは正しかったと思います。フランスは世界中どこでも、外国に在留するフランス人を保護する義務があり、私は共和国大統領として、その義務を負う最高責任者です。

 この惨禍への緊急対応の後、情勢と未来について語るために皆さんと会う時が来ました。

 何よりもまず、同行するナタリー・コシウスコ=モリゼ大臣の前で、日本の原子力情勢について包み隠さず述べたいと思います。実を言えば、この情勢は危機的であり、極めて不安定で、あいにく長期化します。日本在住フランス人の方々は、数カ月ではないにしろ、数週間はこの情勢とともに生きる覚悟をせざるを得ません。何をすべきか? それを皆さんに言うのは私ではありません。各自が家族の事情や職業上の義務に応じて、良心に照らして決めるべきです。日本で生活を築いた人たちの間でも、すぐにどこか別の国に赴任することを知りながらこの国に来ている人たちの間でも、在外フランス人の事情がどれほど千差万別であるかは承知しています。

 皆さんの決定を明確にするため、フランス当局が日本当局と並んで、信頼できる情報を提供するためにいることをご承知ください。私は原子力庁、原子力安全局、日本に専門家1人を派遣した放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)などの科学者の専門知識を要請しました。全員が現状では、東京および首都圏に住むことが住民の健康にとって実質的な危険とはならないと異口同音に言っています。当然ながら、私たちは日本当局と連絡を取りながら警戒を続けるとともに、危険があると評価すれば警告します。私は皆さんに対して透明性を確保する義務があります。皆さんには情報の透明性が確保されます。

 極めて過酷な3週間が経過した今、例外的かつ悲劇的な状況において、生活を可能な限り正常化しなければなりません。

 来週月曜日(4月4日)から、リセ・フランコ・ジャポネ・ド・東京が再開します。2つの学校に通う児童の親を安心させたいと思います。市民安全部隊のチームが校舎の耐久性を確認しました。さらに放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)が、校舎内および安全区域内の放射線防護を確実にするため、あらゆる措置を講じました。必要であれば職員および生徒を受け入れるため、各学校に遮へいスペースが用意されました。

 現在の危機は、日本在住フランス人社会が日本における計画や持続的なプレゼンスを見直す事態につながってはなりません。日本で生活する皆さんは、どのような活動や身分であれ、日仏両国間の協力に寄与しています。この二国間関係は堅持されなければならないと同時に、日本が経験している試練から脱したときには、この関係は一層強化されているものと確信しています。

 私たちは地震で損壊したアリアンス・フランセーズ仙台を再建します。地震でダメージを受けた東京日仏学院の建物を強化します。建設中の新しいリセ・フランコ・ジャポネ・ド・東京のことも忘れてはいません。工事が最良の条件の中で続行されることに留意します。この時期に、活力あふれるフランス人社会の基盤であり、日仏両国を結ぶ絆の象徴であるリセ・フランコ・ジャポネ新設計画以上に、素晴らしい将来性ある計画があるでしょうか?

 生活を再建しなければなりませんが、その一方で私たちは起こったことを考慮に入れるとともに、あらゆる教訓を引き出さなければなりません。

 福島の状況は世界中で、無論フランスでも極めて多くの議論を呼んでいます。今は論争の時でも、排撃の時でも、拙速な選択をする時でもありません。それらにはただ一つのことが欠けています。それは冷静さの欠如です。フランスは原子力エネルギーを選択した国が担う責任にふさわしい態度をとるべきです。

 原子力の民間利用はフランスにとって、エネルギー自立および温室効果ガス削減の極めて重要な要素です。この選択はわが国の原子力施設の安全性に対する絶対的な要求を伴います。その要求の厳しさは世界中が認めるところです。フランスはヨーロッパのイニシアティブの一環として、自国の原子力発電所の安全点検の取り組みに全面的に協力します。2010年3月にパリで開催された会議では、フランスは安全基準の国際的な統一を訴えました。私はナタリー・コシウスコ=モリゼとともに、G20諸国の独立した原子力安全当局に、原子力に関する国際安全基準を定義すべく5月中にできればパリで会合を開くよう要請することをお知らせします。この国際安全基準が存在しないことは異常極まりなく、ナタリー・コシウスコ=モリゼが進行役を務め、 G20諸国の原子力安全当局が参加するこのパリ会合で、ルール大全を定義するために6月に開催予定のIAEA会合の準備を行います。

 親愛なるフランスならびに日本の友人の皆さん、
 フランス全体が皆さんの苦悩、不安を共有しています。

 皆さんを保護すべき技術進歩が助けになるどころか新しいリスクを生み出したとき、自然の暴力に対する恐怖が倍増したことを申し上げたいと思います。とはいえ、不幸から身を守る、運命を導き続ける人間の能力に対する信頼を失ってはいけません。

 18世紀、リスボンが地震と津波で破壊されたとき、ヨーロッパには善の存在に対する不信感が定着しました。進歩への信頼が揺らぎました。とはいえ、ヴォルテールのような懐疑派の最右翼でさえ、疑う余地のない要素があることを改めて指摘していました。それはよりよい未来のために努力する人類の能力です。

 この未来への信頼は今日、日本人自身が私たちに教えていることではないでしょうか? 彼らが示す尊厳、国民的結束、責任感に敬意の念を抱かずにいられません。今日、原爆の歴史が刻印された日本国民の反応とともに、そこに真の力、英雄的行為があることを申し上げたいと思います。

 福島で状況を再び制御すべく不眠不休かつ命がけで闘う技術者、エンジニア、消防隊員などのことを思うとき、そこに最も優れた意味での英雄的行為があります。これらすべての志願者の英雄的行為。この国民全体が英雄的です。普段の生活は何一つ残っていないというのに、おそらく他の人たちをくじけさせないために各自が毅然として日常生活の行動を続けています。この結集した国民の英雄的行為です。

 浮世絵の直訳だと思いますが、浮世のはかなさを芸術的表現の主要なモチーフと常にしてきた見事な文化のことを思っています。3月11日の恐ろしい津波と、人間が作ったもろそうな小舟に今にも襲いかかろうとする制御できない海の恐ろしい瞬間を捉えた北斎の冨嶽三十六景『神奈川沖浪裏』とを対比せずにはいられません。

 この恐ろしい大災害を日仏関係のさらなる緊密化と強化につなげようではありませんか。G20議長国フランスを私たちの友人である日本人を助けるために世界中を動員する機会としようではありませんか。日本人は世界で災害が起こると、いつも最初に、そして最も寛大に連帯を表明します。私たちが今日、この同じ連帯を日本に示すことはごく当然のことです。

 親愛なる同国の皆さん、原子力について高い見識を持つナタリー、ジャン=ピエール・ラファラン、ベルナール・ビゴとともに、数時間とはいえ皆さんとご一緒できることを嬉しく思います。皆さんは家族や友人から遠く離れて、孤独であると感じたことと思います。私から皆さんに敬意を払いたいと思います。

 皆さんは正しい決断を下されるでしょうが、皆さんの義務や願望、私たちが提供する情報などを考慮して決断をなされるべきです。私たちは皆さんがすべきことについて言うことはありませんが、各自の職業上および家庭上の事情に合った最良の決断を下せるように判断材料を提供します。

 こうした観点から、ナタリー・コシウスコ=モリゼは土曜日まで日本に滞在し、日本当局と連絡をとりながら、皆さんが必要とするであろうあらゆる情報を提供します。

 より落ち着いた形で、より楽しい雰囲気の中で来日できればと思いました。私は中国から到着したばかりで、もちろんフランスにすぐに帰国する予定です。私にとって日本の首相と会談するために来日して、日本在住フランス人に語りかける時間をとらないことは考えられませんでした。フランス人社会の行動は恥ずべきところがないどころか、フランスは皆さんを誇りに思っていましたし、皆さんはやるべきことをきちんとやったと確信してください。市民安全部隊の消防隊員には、私から深く感謝の意を表したいと思います。

 ありがとうございました。

フランス大使館発表
Service de Communication et d’Information (4月4日)

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