リヨンの人々(カンフー好き編)

リヨンの冬は寒い!時にはマイナス20度にもなる!という話を聞き、脅えていた私は拍子抜けしました。確かに11月は寒かった。朝、川辺を歩く時は特に。でも1月になると日に日に暖かくなり、春の気配を感じる今日この頃。こんな短い冬のためにダウンコートを買ったのかぁ、と後悔しています。ところで新年早々から、私には一つの心配がありました。家探しです。それまで住んでいた寮の契約期限が切れるので、新しく住む家をさがさなければならなくなったのです。日本では何度か家探しを経験していますが、ここはフランス。勝手がわからず、何をどう始めたらいいのか。

まず、大学からいくつか紹介してもらったものの、めぼしい物件はナシ。次に不動産屋をかたっぱしから訪ねてみたけれど、なかなか希望に合うものがない。困ったなー、と思いながら無料情報誌の物件の欄をみていると、あった!私の予算範囲内で、しかもリヨンで一番気に入っている地区、vieux Lyon(旧市街地)。さっそく大家さんの携帯に電話し、ステュディオを見せてもらうことに。でも建物の中に入った途端、私のウキウキ気分は消え去りました。石でできた螺旋階段のおそろしく古いこと!場所柄、古いことは予想していたけれど、それにしても古い。かなり擦り減っている上に、暗くてよく見えない。そしてかなりの急勾配。23歳の私が休み休み上っているのを尻目に、50代の大家さんは軽やかに上っていく。息を切らして5階に着くと、大家さんが一言。「じき慣れるよ...。」

私はこの階段を上りながら、恐ろしく古い部屋を想像していました。恐る恐る部屋のドアを開けると、中は意外にきれいでびっくり。屋根裏部屋のような雰囲気で、8畳くらいの広さにロフト付き。内装もまずまず。何より私が引かれたのは、窓を開けるとすぐ近くにあるサン.ジャン大聖堂の鐘の音や、石畳の道を歩く人の、コツコツという足音が聞こえること。vieux Lyonを感じることができるこの部屋を私はとても気に入り、即決しました。契約は拍子抜けするほどスムーズに。さらに大家さんの、「足りない家具とか生活用品があれば貸してあげるから買うことないよ」という言葉に感激。「外国人には家を貸したがらない人が多くて大変だよ」と色々な人から聞いていましたが、そういう人ばかりではないんだ、と思いました。

さて、無事に引っ越しも済み、実際に住み始めてますますこの部屋が気に入り、一人楽しく?のんびりしていると、フランス人の友達から電話が。今晩、「カンフーの会」があるからおいで、との誘いです。なんだ?カンフーの会って。とりあえずカンフーに興味がないので断ると、「興味があるかないかは実際に見てから決めなよ」と言うので、それもそうかと思いこの不思議な会に参加することにしました。

会場に行くと、すでに40人くらいの人が来ていました。ほとんどが地域のクラブでカンフーを習っているというフランス人の男女で、その数の多さに驚きました。フランスで柔道が人気とは聞いていましたが、カンフーがこんなに人気とは。この会、まずはカンフー映画を見て、カンフーの先生のデモンストレーションがあり、その後夕食をとりながらカンフーについて語り合う、という大変熱心(そして強烈)なものでした。

アクション映画に全く興味のなかった私ですが、まず、その映画の面白さにびっくり。ユーモアあり、華麗なカンフー技あり、そして中国の歴史的背景も描かれていてとても楽しめました。そしてさらに、先生3人によるデモンストレーションに感動。技一つ一つの美しいこと!「肉体よりもむしろ精神を鍛える」という中国人師匠の話を聞く頃には、私はすっかりカンフーのファンになっていました...。その後の夕食会では、彼らのアジアについての知識がとても深いことにも驚きました。まさかリヨンでフランス人に柔道やカンフー、空手やなぎなたなどについて詳しく教わるとは...。

この日何より驚いたのは、私が一日にしてカンフーに興味を持ったということ。自分が興味ないと思っていることの多くは、実は知らないから興味がないのかもしれないな、と感じました。家探しにカンフー、自分の目で確かめることの大切さを実感した1月でした。

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