iPadから学ぶブランド戦略と商品開発
iPadがテレビで大騒ぎなだけあって、街でもちらほら見かけるようになりました。触ってみれば、単純にiPhoneが大きくなっただけと言ってもそれほど間違いないのですが、電子書籍マーケットを狙った端末と言うことでiPhoneとは違った役割もあるのです。
日本では、電子書籍がほとんど普及していないというか、電子書籍用の端末で見るという事があまり無かったので、この衝撃度があまり高くないのですが、欧米では既に電子書籍専用端末が発売されブームになっています。
インターネットの本屋で知られるアマゾンが開発販売しているKindle(キンドル)は電子書籍の専用端末で急速に売上を伸ばしていました。この日本語版が出ると日本の出版業界は壊滅的になるとして日本の出版社が日本電子書籍出版社協会と言うのを作って対抗しようとしています。
この辺の事情は詳しく分かりませんが、Kindleには反対であるようです。しかし、iPadには積極的のようで、今秋にもiPad用の電子書籍は発売するようです。
それにしても情けないのは、ソニーは電子書籍端末を既に作っているのに、企画やビジネスモデルを構築出来なかったのか?同様にiPodの時のように、音楽配信でもさえなかったのはなぜなのかという事です。
シリコンオーディオと言われる新しい携帯用オーディオ再生装置は随分昔からあり、ソニーも後発でありながら参入していますが、これらの機械の総称は、更に遅くに参入してきたiPodと言われるようになってしまいました。
ソニーもウォークマンもブランドとして、相当認知されているのに、ウォークマンと言ったらカセットのオーディオプレーヤーのイメージが強すぎるのか、新しい機械のブランドとしては、ふさわしくなかったのでしょう。
普通、新しいジャンルの商品の総称的に使われる言葉は、その商品を始めて発売した商品ブランドや初期に急速にシェアを伸ばしたブランドが使われることが多いのです。例えば、絆創膏のバンドエイド、ウォークマン、サランラップなど、実は特定の商標にもかかわらず、その種類の商品の総称となっていることが良くあります。
Yahoo!やGoogleなどのネットサービスやソフトウェアーなどは、明らかに日本が劣っていますが、このように得意中の得意な個人的なハードウエアでも、何とも冴えないようです。
さてiPadの話に戻りますと、iPhoneは日本製パーツも多く使われていたようですが、iPadは韓国メーカー製が多く、日本製の物はほとんど無いようです。
この話を聞くと思い出すのは、20年ほど前、繊維産業が製品は最高なのに、ブランド力がないからダメだという話を良く聞いていました。つまり、アメリカやフランスの製品より、物は良くてもブランド力がないから高く売れないと言うわけです。
このとき感じたのは、確かにブランド力が無いのは分かるが、いくら生地や縫製などが良くても、デザインが悪いんじゃないかな?と思っていました。
実際日本にもそれなりのブランドがあるのですが、フランスのブランドは国際的にも認知度が高く、国内で生産されていて、しかも高額と日本勢にはあこがれだったんでしょう。
ルイヴィトンは、バックやお財布でとても人気がありますが、バックやお財布が新しい形に変わることはありません。ですから今のブランドイメージを保持していく方が良いでしょうが、ウォークマンは以前のイメージが強すぎてiPodのイメージを与えられません。新しいブランドを展開する必要があったのでしょう。
アメリカのブランドは、圧倒的な認知力で、製品自体は海外製でも、デザイン、システムなどで強さがありますが、日本はどうでしょうか?日本製の品質が素晴らしいことは誰でも知っていますが、システムがありません。
例えばパソコンで多言語が扱えるようになったのは、実は日本語の表示や入力の仕組みがベースになっているのですが、未だに土台を作ったにとどまっています。
前出の日本電子書籍出版社協会が後ろ向きな団体ではなくて、もう少し早く世界標準のフォーマットをソニーのような企業と共同開発して、更にビジネスモデルも構築していけば、電子書籍マーケットを主導することが出来たかもしれません。
日本の問題は、中国などの台頭とか、不況と言うよりも、グローバル市場を目指していないこと、アイディアが無い事、ブランド管理がおかしい、過去の栄光にすがりすぎている、ベンチャー企業も上場して資金が集まったにもかかわらず一発屋、など、革新的で新しいことをするエネルギーが足りないんじゃないかなと思うところです。