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教育予算の3割は退職した公務員のために——フランスが公費の「行き先」を数え直した日
経済

教育予算の3割は退職した公務員のために——フランスが公費の「行き先」を数え直した日

フランスの2027年度予算案で、国民教育省に割り当てられた額は891億ユーロ(89,1 milliards d'euros)にのぼる。教室、教員、校舎、奨学金。多くの人は、この数字からそうした風景を思い浮かべるだろう。ところが10月13日に政府が公表した予算案の付属資料によれば、そのうち285億ユーロ、つまり32%は公務員年金を賄う勘定に支払われる。内務省でも30%、全省庁の平均で約13%だ。

同じ日、フランスでは三つの出来事が重なった。国民議会で予算審議が始まり、高校生と大学生が全国でデモを行い、ブルターニュの鋳造所では買い手が現れなかった。さらに財務省が、企業向け公的支援は2024年に1,660億ユーロ(166 milliards d'euros)だったと初めて数字で示した。バラバラのニュースに見えるが、並べて読むと一つの問いが浮かぶ。公費は何に数えられ、誰に届き、誰が払うのか。

「省の予算」の3分の1が、すでに退職した人々のために使われている

まず年金の話から見ていこう。付属資料によると、国民教育省の891億ユーロのうち846億ユーロが人件費だ。その中に、公務員年金に対する雇用主負担分が251億ユーロ、職員本人の保険料が34億ユーロ含まれる。雇用主負担分はこれまでも付属資料に載っていた。今回、公会計担当省は「透明性」の取り組みとして、割合の計算に職員本人の保険料を初めて加えた。同省の説明では、この32%という割合は過去10年ほどほぼ安定している。年金支出が増えた一方で、省の予算も増えてきたからだ。

高い割合の理由として政府が挙げるのは、公務部門の人口構成の不均衡である。退職者1人に対する保険料の納付者は1人に満たない。民間企業の従業員では1,5人だ。足りない分は国が負担し、その費用は2025年に415億ユーロに達したと政府は報告している。

背景として、人口の高齢化だけでなく契約職員の増加も挙げられている。契約職員は公務員向けの制度ではなく一般制度に加入する。1991年のLa PosteとOrangeの制度上の地位の変更で、新規採用の従業員が一般制度の対象になったことも理由の一つだ。一方で公会計担当相David Amiel氏の事務所は、「国家公務員年金制度が年金制度全体の不均衡を引き起こしているわけではない」と強調している。

ここで見過ごされがちなのは、数字そのものが新しいわけではない点だ。経済学者にはすでに知られていたが、政府自身が「一般の人々には分かりにくかった」と認めている。つまり今回動いたのは金額ではなく、見せ方である。

ここからは私の解釈になる。同じ891億ユーロでも、「教育の予算」と呼ぶか「教育の現場と退職者の双方を支える予算」と呼ぶかで、受け取る印象は大きく変わる。予算の「行き先」の表示は、政治の主張の一部でもある。

1,660億ユーロの「支援」と、約600億ユーロの「疑いのない支援」

同じ構図は、企業向けの支援額にもはっきり出ている。財務省は2027年度予算案の付属資料で、2024年に国が企業向け公的支援に1,660億ユーロを充てたと推計した。上院の調査委員会が求めていた透明性への対応であり、財務省がこのテーマで数字を示すのは初めてだ。

注目すべきは、数字が二つ示されたことである。政府は、計画高等委員会が主導した協議で定められた定義に従い、企業に対して同等の見返りを求めずに資金を提供する支援をすべて計上した。そのうえで、財務省が「疑いの余地がまったくない支援」と呼ぶ範囲に絞ると、約600億ユーロになる。内訳は、税制上の優遇措置が270億ユーロ(研究税額控除の80億ユーロを含む)、補助金が240億ユーロ(見習い労働者の雇用や再生可能エネルギー支援など)、融資保証などの金融支援が約40億ユーロだ。1,660億ユーロの推計には、雇用主負担の社会保険料に対する一般的な軽減措置の650億ユーロなどが加わっている。

上院の調査委員会は独自に、2023年の公的支援を広い定義で2,110億ユーロ、狭い定義で1,080億ユーロと推計していた。財務省は差の理由として、対象年の違いを挙げる。2023年は企業向けの危機対応支援がいくつかあった年だという。また政府は、Bpifranceが市場条件で行う融資・保証・直接投資を計上していないが、上院は公的金融機関による介入として410億ユーロを算入していた。

つまり、何を「支援」と数えるかで、1,000億ユーロ単位で額が動く。ここに予算観の違いが出る。保険料の軽減は、企業への「贈与」なのか、雇用を支える「通常の制度設計」なのか。研究税額控除と補助金は同じ棚に並べてよいのか。フランスでは数字を出す前の定義づくりから議論が始まっているように見える。これは私の読みだが、定義を公開して批判にさらすこと自体が、負担と利益の説明責任を果たす第一歩になっているのではないか。

国会と街頭、そして工場で、同じ問いが別の形で現れる

この数字は、政治的にも重い局面で出てきた。2027年度予算案はマクロン大統領の任期中で最後の予算案だ。政府は2027年に財政赤字をGDP比5%に戻すことを目指している。ただしセバスチャン・ルコルニュ首相は議会で多数派を持たず、2025年と同様、内閣不信任を避ける条件で憲法第49条第3項を使う可能性がある。

社会党は否決動議を提出すると表明した。同党議員団長のボリス・ヴァロ氏は、首相が示した内容や中道勢力との初期協議の進め方を見ても、歩み寄りがあるとは思えないと述べた。一方、国民連合の予算担当ジャン=フィリップ・タンギー氏は、社会党の否決動議には賛成しないと表明した。予算法案や社会保障財政法案に対する否決動議には一度も賛成していない、というのがその理由だ。David Amiel氏は、2025年と2026年には社会党との妥協をまとめられたと述べ、社会党が求める「より大きな社会正義」について話し合う必要があると認めている。

「社会正義」という言葉が出る点は重要だ。この予算審議では、歳出削減額の大小だけが争われているわけではない。誰が痛みを引き受け、誰が恩恵を受けるのかが問われている。

街頭の動きも、この文脈に置くと意味が変わる。10月13日には高校生と大学生の全国デモが行われた。9月中旬にパリ地域で始まった動きの5回目の動員日で、スウェーデンの活動家Greta Thunberg氏が支援している。抗議の対象として挙げられているのは、Parcoursupの圧力、教員の代替不在、建物の老朽化、過密な授業スケジュールなどだ。

被害や参加規模をめぐる数字は立場によって食い違う。高等教育省は管轄機関の約35%が混乱したと発表した。学生団体Union étudianteは、約70校ある大学の90%が「封鎖」または「閉鎖」されていると主張する。国民教育省は、リセの94,2%が開校していた一方で、職員147人が負傷したと説明している。数字が一つに定まらないこと自体、公共の場で「何が起きたか」を誰が数えるかが争点になっていることを示している。

注意したいのは、記事の資料はデモと年金比率を因果関係で結んでいない点だ。ただ、教員の不在や校舎の老朽化を訴える生徒の目の前にある予算と、書類上の891億ユーロの内訳には距離がある。これも私の読みである。この距離を縮めるには、金額だけでなく中身の説明が要る。

さらに工場の現場がある。モルビアン県コーダンのブルターニュ鋳造所では、244人の雇用が危機にある。買収候補は月曜深夜までに名乗り出る必要があったが、有力な買収案は出なかった。産業担当大臣付大臣のセバスチャン・マルタン氏は、関心を示した工業グループに案の確定を働きかけ、国の財政支援も提案したが成功しなかったと説明している。別の候補は、自動車向けの受注量をルノーが確約することを条件にしたが、ルノーは確約しなかった。ルノーのフランソワ・プロヴォ最高経営責任者は「問題は、自動車産業の工業製品の行き先がもはやないことだ」と述べた。2年前には防衛産業への転換を盛り込んだ買収計画が有望に見えたが、うまくいかなかったという。

この鋳造所が1,660億ユーロの推計に含まれるかどうかは、資料から分からない。それでも、国が支援を用意しても、買い手がつかず、需要の確約もなければ、雇用は守れない場合があることは読み取れる。支援額の大きさと、その支援が現場で効くかどうかは別の問題だ。ここでも問われるのは「誰のための支援か」である。

日本と米国に引き寄せて考える

ここで日本の読者の日常に引き寄せてみたい。日本でも、高齢化に伴う社会保障費が予算の大きな部分を占めると一般に言われる。教育や産業の支援と、どう配分するかは繰り返し議論されてきたとされる。ただ、フランスの今回の公表は、省庁の予算の中に年金の割合が組み込まれていること、企業支援の定義の幅が数千億ユーロ単位の差を生むことを、数字で示した点が特徴的だ。日本で同じことが起きているかどうかは、今回のニュースからは判断できない。

米国との比較では、企業への減税や補助金を「支援」と見るか、通常の制度と見るかが、一般に論争の種になることがある。フランスの定義づくりの議論は、その種の論争を別の形で整理しようとする試みにも見える。ただし、米国の具体的な制度や数字は今回の資料にないため、これ以上は踏み込まない。

フランスの特徴を一つ挙げるなら、公費の規模よりも「見せ方」を政治の戦場にしていることだろう。年金の割合に本人保険料を加える。企業向けの支援を二つの数字で示す。上院の調査委員会が別の推計を出す。数字が出るたびに反論も出る。これは見方によっては騒がしいが、少なくとも誰が何を数えたかは追跡できる。

これから注目したいこと

今後の焦点は三つある。第一に、予算案が国民議会でどう扱われるか。社会党の否決動議、国民連合の不参加、憲法第49条第3項の適用の有無によって、2027年に赤字をGDP比5%へ戻す道筋の現実味が変わる。第二に、企業向け支援の数字が毎年公表される点だ。確定した決算実績データを使うため2年のずれが生じるとはいえ、同じ定義で推移を追えるようになれば、効果の検証もしやすくなる。第三に、教育現場の不満が予算審議にどう反映されるかだ。

公表された数字は、議論の終点ではなく出発点にすぎない。

最後に、読者のみなさんに問いを残したい。予算の削減額と支援額が示されたとき、その利益を受ける人、そして負担する人まで、私たちは確認しているだろうか。891億ユーロの内訳を見ると、「教育のための予算」という言葉だけでは足りないことが分かる。あなたの身近な公費は、誰のために、誰の負担で使われているだろうか。

出典

  • franceinfo (titres):Pourquoi près d'un tiers des crédits alloués à certains ministères financent les retraites (2026/10/14)
  • RFI France:DIRECT - France: de nouveau dans la rue, lycéens et étudiants appellent à une «convergence des luttes» (2026/10/13)
  • franceinfo (titres):Fonderie de Bretagne : aucune offre sérieuse de reprise, près de 250 emplois menacés (2026/10/13)
  • franceinfo (titres):Le gouvernement estime à 166 milliards d'euros le montant des aides publiques accordées aux entreprises en 2024 (2026/10/13)
  • franceinfo (titres):DIRECT. Budget 2027 : Jean-Philippe Tanguy annonce que le Rassemblement national "ne votera pas la motion de rejet des socialistes" (2026/10/13)

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