
フランス発の青春映画『ホーリー・カウ』、10月10日より全国順次公開
演技未経験の新人俳優陣が輝く、チーズコンテストに賭ける”どん詰まり”青年の物語
フランス東部ジュラ地方を舞台にした青春映画『ホーリー・カウ』が、10月10日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で順次公開される。本作は、フランス本国で約100万人を動員し、『Anora アノーラ』や『サブスタンス』といったオスカー受賞作を上回るサプライズヒットを記録した注目の作品だ。
チーズ職人の息子が挑む、人生をかけたコンテスト
物語の主人公は18歳のトトンヌ。仲間と酒を飲み、パーティに明け暮れる無軌道な生活を送っていた彼の人生は、チーズ職人だった父親の突然の死によって一変する。残されたのは行き詰ったチーズ工房と7歳の幼い妹。生計を立てる手段を見つけなければならない状況で、彼が目をつけたのはチーズのコンテストで金メダルを獲得すれば得られる3万ユーロの賞金だった。
伝統的な製法で最高のコンテチーズを作ることを決意したトトンヌが、妹や仲間たちと共に奮闘する姿を描いた本作は、「マジかよ!」「なんてこった!」という意味を持つタイトル通り、予想もつかない展開で観客を魅了する。
新人監督・キャストが織りなす本格派ドラマ
監督を務めるのは、本作の舞台であるジュラ地方で育ったルイーズ・クルヴォワジエ。1994年スイス・ジュネーヴ生まれの彼女は、農業を営む家庭で育ち、リヨンの映画学校CinéFabriqueでの卒業制作がカンヌの若手育成部門「シネフォンダシオン」でグランプリを獲得した注目の女性監督だ。初長編となる本作では、土地への深い愛着と理解を背景に、美しいジュラの風景を親密に切り取っている。
特筆すべきは、主要キャストが全員演技未経験者でありながら、その演技が高く評価されていることだ。主人公トトンヌ役のクレマン・ファヴォーは2025年リュミエール賞最優秀新人男優賞を、女性酪農家マリー=リーズ役のマイウェン・バルテレミは2025年セザール賞新人女優賞を受賞。監督自身も同年のセザール賞最優秀新人監督賞に輝いている。
ジュラ地方の魅力とチーズ文化を堪能
フランス東部、ブルゴーニュ県とスイスの間に広がるジュラ地方は、美しい丘陵や豊かなブドウ畑で知られる地域だ。特にチーズ文化においては世界的に重要な拠点で、1,000年以上の歴史を誇る「コンテチーズ」はその深い旨味と職人技の結晶として多くの愛好家から支持されている。
映画では、太陽が降り注ぐ丘陵風景や草むらが揺れる様子など、ジュラ地方の雄大で温かみのある自然が美しく映し出される。監督の家族が音楽や美術スタッフとして参加し、農村のリアルな暮らしに確かな息吹を与えている点も本作の魅力の一つだ。
数々の映画賞を席巻した話題作
本作は2024年のカンヌ国際映画祭ある視点部門ユース賞受賞を皮切りに、夭折の天才ジャン・ヴィゴにちなみ若手監督に授与されるジャン・ヴィゴ賞、フランスのアカデミー賞と言われるセザール賞など、数々の映画祭を席巻した。小規模な作品ながら、その真摯な人間ドラマと美しい映像で多くの観客の心を掴んでいる。
一見すると社会のはみ出し者のように見える登場人物たちが、困難や葛藤を経験し、それを乗り越えて成長していく姿は、まるでチーズがじっくり熟成していくかのよう。単なるフィクションを超えた深いテーマが込められた本作は、観る者の心に静かに、そして深く響く作品となっている。
『ホーリー・カウ』
- 公開日: 10月10日(金)
- 上映館: ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開
- 監督: ルイーズ・クルヴォワジエ
- 出演: クレマン・ファヴォー、ルナ・ガレ、マティス・ベルナール、ディミトリ・ボードリ、マイウェン・バルテレミほか
- 上映時間: 92分
- 配給・宣伝: ALFAZBET
- 公式サイト: https://alfazbetmovie.com/holycow/
※ムビチケオンラインは8月22日(金)午前10時より販売開始