クロード・モネ没後100年─ノルマンディーとパリで始まる「印象派を巡る旅」
2025/12/19
2026年、近代美術を象徴する画家、クロード・モネの没後100年を迎えます。
この節目の年に、フランスではノルマンディー地方とパリ地方が連携し、モネの芸術と人生を「旅」というかたちで体験する大規模な文化プロジェクトが展開されます。
本企画の核となるのは、モネの作品を美術館の中だけで鑑賞するのではなく、作品が生まれた場所そのものを訪れ、同じ光と空気を感じることです。
モネの芸術は、特定のアトリエではなく、彼が暮らし、移動し、立ち止まった風景の中で形づくられてきました。
芸術は風景とともにありました
モネが描いた代表作の多くは、特定の場所と強く結びついています。
ル・アーヴルの港に差し込む朝の光は《印象・日の出》を生み、セーヌ河沿いの町々では、橋や水面、行楽を楽しむ人々の姿が描かれました。
ルーアンでは、大聖堂の正面に立ち、時間帯や天候ごとに変化する石造建築の表情を連作として捉えました。そしてジヴェルニーでは、自ら庭園を設計し、池を掘り、花を植え、40年以上にわたって同じ場所を見つめ続けました。
《睡蓮》の連作は、自然そのものを描いたというより、時間の流れと光の変化を描いた作品群です。
今回の取り組みでは、こうした制作の舞台となった場所を、モネの人生の流れに沿ってたどる構成が取られます。
ノルマンディーとパリを結ぶ一本の線
プロジェクトは、モネの創作を支えた二つの地域を軸に展開されます。
印象派を巡る旅ノルマンディー地方では、ル・アーヴル、オンフルール、エトルタ、ディエップといった海辺の町や断崖が、モネの原点として位置づけられます。
海霧、反射光、刻々と変わる空模様は、モネの視覚を鍛え、その後の表現の基礎となりました。
一方、パリ地方では、セーヌ河沿いのアルジャントゥイユやヴェトゥイユ、郊外の森や都市の風景が取り上げられます。
そこでは、自然と近代化が交差する風景が、モネの革新的な視点を育みました。
これらの土地は点としてではなく、移動と時間の連なりとして体験されることが想定されています。
展覧会と体験が交差する一年
2026年には、両地域で100を超える展覧会や文化プログラムが展開されます。 主要美術館では、モネの初期から晩年までの作品を通して、戸外制作、連作、時間の探究といったテーマが多角的に示されます。
© Marie-Anaïs Thierry
同時に、屋外制作を体験するワークショップ、セーヌ河を巡るクルーズ、画家たちが歩いた道をたどる散策やハイキングなど、鑑賞を越えた体験型の企画も用意されます。
絵画を見る行為と、風景の中に身を置く行為が、ひとつの体験として結びつけられます。「この一瞬」を感じるために
モネは、生涯にわたって同じ場所を繰り返し描きました。 彼が追い求めたのは、風景の固定された姿ではなく、今この瞬間にしか存在しない光と色でした。今回の企画では、訪れる人自身がその感覚を体で理解することが重視されます。
立ち止まり、空を見上げ、風の向きを感じる。
そうした行為そのものが、印象派の核心に触れる体験になると考えられています。
環境と共にある旅
移動手段にも明確な意図があります。 鉄道や自転車、徒歩といった移動を通じて、風景を急いで消費するのではなく、ゆっくりと味わう旅が提案されます。印象派の画家たちが見つめた自然や都市は、現代において大きな変化の只中にあります。
芸術を通じて風景を見直すことは、未来へそれを引き継ぐ視点にもつながります。
日本とのつながり
モネは日本美術、とりわけ浮世絵を熱心に収集していました。 そのコレクションは、現在もジヴェルニーの自宅に残されています。同時に、日本の収集家や美術愛好家たちも、早くからモネの作品を評価し、国際的な名声の形成に寄与してきました。
この相互の関心は、現在に至るまで続いています。
絵画を越えて広がるモネの世界
没後100年を迎える2026年、モネの芸術は、絵画という枠を越え、旅や風景、食、環境、そして生き方へと広がります。光は一瞬で変わり、同じ風景は二度と現れません。
モネが生涯をかけて描こうとしたその事実を、現代の私たち自身の体験として受け取る一年が始まります。
モネの眼を通して世界を見る。
その試みが、ノルマンディーとパリを舞台に展開されます。