AntenneFrance N.140

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                                   n.140
                        A n t e n n e F r a n c e
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                         S O M M A I R E
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         S C R E E N K I S S
       1◆ジャン=ジャック ・ベネックス監督記者会見
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         S C R E E N K I S S
       2◆犯罪の風景
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         I N F O R M A T I O N
       i◆AntenneFranceについて
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┃1┃ジャン=ジャック ・ベネックス監督記者会見
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 『IP5』から8年。ジャン=ジャック ・ベネックス監督の新作長編が、つい1ヶ
 月前に完成した。日本での公開は来年だが、「今年でフランス映画祭も8回目。
 この8年間、自分の作品を持って来られなかったのが辛かった」という監督、
 「数分間とはいえ、今回は初めての劇場上映。これを、今迄私の作品を支持し続
 けてくれた、日本の観客へのプレゼントとしたい」。
 記者会見の後、フランス代表団の舞台挨拶に先立って、数分間のプロモーション
 上映が行われた。
  モータル・トランスファー
  MORTAL TRANSFER
  監督:ジャン=ジャック ・ベネックス
  出演:ジャン=ユーグ ・アングラード、エレーヌ・ドゥ・フジュロール
 精神分析医のデューランドは仕事にも人生にも退屈している。そこへ、神秘的で
 セクシーな患者、オルガがやってくる。清純な見かけと反対に、窃盗癖と奇妙な
 愛の交わし方を持っていた。夫はうんざりする程の金持ちだ。そして、デューラ
 ンドが目覚めた時・・オルガはカウチで死んでいた。すべては、ここから始まっ
 た・・・。
 『DIVA』のような不思議が色合いに、『ロスト・チルドレン』のような近未来的
 感覚。それにブラックなユーモアが加わって、つい、先が見たくなるようなプロ
 モーションビデオだった。今回の作品のジャンルは、ある意味では「エロティッ
 クなコメディ」という。
 「人が笑うという事は、自分の作品を好きで笑っている、という確信が持てるの
 でコメディが好き。もし、これがシリアスなものだったら、観客の顔つきから
 は、退屈なのか、感動しているのか読み取りにくい。それに、人間、ある程度の
 年齢になると、笑う事が大切になってくる」・・・と言うベースの上に分析医を
 登場させて「不思議な世界に引き込まれる精神分析医のポートレートが描きた
 かった」そう。
 原作はジャン=ピエール・カテニオンの同名小説。ピュアな外見ながら「死」の
 象徴である女性と、外見と裏腹に「生」を意味する女性、という対立した2人の
 存在が面白い。
 今回は『ベティ・ブルー』以来2度目となる、ジャン=ユーグ ・アングラードと
 の仕事については、丁度F・トリュフォーとJ・Pレオーの関係に似ている。ジャン
 =ユーグ ・アングラードの中に監督自身を見い出しているし、性格の面も似てい
 る。シンプルで寛大、そして情熱的なジャン=ユーグと、同様に尊大な人を嫌う
 監督はいいコンビのようだ。
 通常は主役に同じ俳優は起用しない、という監督。「同じ人と同じ情熱を持てる
 かというと、困難なのと一緒。だが、彼に関しては例外」なんだとか。
 カンヌで初めてこの作品に触れてすっかり虜になった、配給会社、アミューズの
 宮下社長は心底嬉しそうだった。来年の公開が待ち遠しいものだ。
                                鳥野 韻子
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┃2┃趣味の問題
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    SCENES DE CRIME 
    2000年/100min/カラー
    監督:フレデリック ・ シェンデルフェール
    出演:シャルル ・ベルリング、アンドレ・デュソリエ
    第8回フランス映画祭横浜
 友人との待ち合わせに行ったままマリ-は失踪し、数日後死体となって発見され
 た。ここ数年に亘って発生している若者・・とりわけブロンドの美人・・の殺人
 事件の一環らしい。被害者は頭部と手首を切断されている。この事件に挑むの
 は、ファビアンとゴメズの2人の刑事。苛酷な仕事と、家庭の崩壊から急死して
 しまったゴメズの後、一人犯人を追い詰めたファビアンは・・・。
 ゲストは監督の、フレデリック ・ シェンデルフェール、製作のエリック・ネ
 ヴェ。監督の実父は『317小隊』等のピエール・シェンデルフィール監督。クライ
 ムストーリーを得意とした父のアシスタントをしていたが、今回が初の長編劇映
 画という。
 連続失踪、殺人、という内容は実際の事件に酷似しており、とてもリアルなス
 トーリーらしい。首なし死体の検死シーンも結構リアルで、「つくりもの」と分
 かっていてもちょっと腰がひけた。が、それに伴うP・コーンウェルの「検死官」
 シリーズを彷佛とさせるような科学捜査のシーンは、なかなか興味深い。
 残酷、凄惨な事件と、その担当刑事達の私生活。被害者の家族同様、刑事も犯人
 のある意味、犠牲者といえるのかもしれない。呆気なく迎えるゴメズの死は、監
 督に言わせれば「観客に衝撃を与える事で一つの感動を生む」という事から仕組
 まれた演出だそうだ。
 アメリカの「サムの息子」的事件を扱いながら、この作品には「ありがちな」派
 手な演出がなく、事件を淡々と辿る事で、より身近な恐怖が感じられる。殺人を
 している犯人も、一見ごく普通の男だし、その動機も明確には明かされぬままラ
 ストシーンを迎える。
 観客は何とはなしに結末の居心地の悪さを残したまま、劇場の暗闇に放り出され
 るような気分を味わうだろう。そうなったら、監督の術中にはまった証拠だ。こ
 れこそが、現代の「闇」の部分の感覚なのかもしれない。
                                鳥野 韻子
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