AntenneFrance N.213 第10回フランス映画祭横浜2002
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□第10回フランス映画祭横浜2002
ジャン・フランソワ・ステヴナン、クレール・ステブナン インタビュー
ミシュカ
ぼくのパパは、きみのパパ
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◆◆ジャン・フランソワ・ステヴナン、クレール・ステブナン インタビュー
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第10回フランス映画祭横浜2002
『ミシュカ』
監督・脚本・主演 ジャン・フランソワ・ステヴナン
主演クレール・ステヴナン インタビュー
□ジャン・フランソワ・ステヴナン
F・トリュフォーの助監督として活躍する一方で『アメリカの夜』(73)、『思
春期』(76)などに出演、俳優としての作品には『つめたく冷えた月』(91)
『オリヴィエ・オリヴィエ』(91)『ジェヴォーダンの獣』(01)などがある。
78年の監督デビュー作『防寒帽』はベルリン映画祭国際批評家連盟賞なども受賞
し、高い評価を得た。今回『ミシュカ』では、監督・脚本・出演を務めている。
□クレール・ステヴナン
監督の妻であり、公私共のパートナー。本作には主人公ミシュカの義理の娘とし
て出演している。ジャンヌ役のサロメ・ステヴナン、レオ役のピエール・ステヴ
ナンの良き母でもあり、まさにキャリアと家庭の両立をこなす理想の女性といえ
よう。
インタビュー会場であるホテルの一室に現れたお2人、さりげなくよりそう姿が
まさに良きパートナーという感じで何も言わずとも仲睦まじい様子が伝わってく
るようであった。
ダークカラーのシャツを着たジャン・ピエール・ステブナン(以下JS)は映画の
なかでの険しい顔つきとはうって変わり、青い目が印象的な柔和な雰囲気の持主
であった。
エル役のクレール(以下CS)は夏らしい白いスーツに茶と白のコンビのロー
ファーを素足に履き、とてもセンスの良い人という印象を受けた。
ScreenKiss(以下 SK):
本作には奥様のクレールさん、娘さんのサロメさん等家族ぐるみで取り組んでい
らっしゃいますね。このような暖かい家族に恵まれた監督が何故『擬似家族』を
テーマにした家族と上手くやっていけない人達の作品を取ろうと思われたので
しょうか。
JS:
私はずっと幸せな家族とは何か、ということを考えてきました。そして例えば常
に大人数で異動をするジプシー、大勢の人が集まって仕事をする映画の世界とい
うような、グループの人々に興味をもっていました。こういった大勢の人が一緒
に旅行などで行動を共にすることによって絆を深めていく様子を描きたかったの
です。また、人生には色々な出来事がおこりますがそういった出来事に色彩を与
えたかったのです。しかしこういった『家族』をテーマにいつも作品を作るとい
うわけではなく、今回だけですが。
SK:
普段一緒にいる家族と、仕事として映画を作っていくことに問題点や難しい点は
なかったのでしょうか。
JS:
問題は全くなく、むしろ簡単でした。映画を作ることが家族皆の目的になり、家
族がいることで常にエネルギーを与えてくれました。この『ミシュカ』について
は2、3年にわたって家族で話し合い、暖めてきましたので、この作品が完成し
たときはその長年皆の心にあったものが解き放たれたという感じでした。
また、私自身が一人っ子だったもので常に大家族というものに憧れてきたことも
あり、映画が私の家族だと言ってきました。ですのでそこに家族がいることはご
く自然なことなのです。
SK:
お二人とも映画の世界で長年生きていらっしゃって、その間には様々な問題や壁
にぶつかったこともあったと思いますが、若いお嬢様や息子さんが今後この世界
で生きていくことには抵抗などはないのでしょうか。
JS:
ないですね。逆に嬉しく思います。これは遺伝子がどうとかいうことではなく自
然なことであり、彼らが私がやってきたことを見て、肌で感じてくれたことが喜
ばしいですね。例えばF1の世界でもシューマッハの親子関係の例がありますが、
そういった親子関係は映画界にもあり得るのです。
問題に対しては恐れません。子供達が幼い頃、自分が仕事で遅くなったり留守に
したりで心配になったことは逆にありますが。彼らは映画に関わり『仕事をす
る』ということで自ら責任ということについて学んでいます。これは遊びではな
く仕事なのだという責任感を持つことを。だから、今後彼らが学業の道に戻って
もこれは良い方に働くと思っています。
JS:
娘のサロメが幼い頃、仕事から帰って来た父親がいつも幸せそうな満ち足りた顔
をしているのを見て、”彼はいったいどんな仕事をしているの?お父さんを幸せに
している仕事がどんなものなのか見てみたい。#と言ったものです。そういうのを
ずっと見てきているわけですので、子供達が映画の世界に入ることはごく自然な
ことなのです。
SK:
本作の主人公ミシュカについてお聞きしたいと思います。彼は大変無口ですが、
実は自我の強い人物像に見うけられます。彼がナチスのユダヤ人虐殺を非難する
とも取れる台詞を口にするシーンがありますが、こういった台詞を入れた理由
は?
JS:
ミシュカという人物はおっしゃる通りのキャラクターですが、息子に置いてきぼ
りにされ、酒を飲んで愚痴をいったりと不幸で、上手に生きれない人です。
その彼がドイツ人の友人に対し、ユダヤ人虐殺の話をして責める場面について
は、彼はこの友人がその歴史上の悲劇に何の責任もなく、どうしようも出来ない
のを知っていて、わざと言っているのです。
つまりより不幸な人達の例を挙げ、人を責めたりすることにより自分の不幸を他
人にも解ってもらいたい、和らげたいという気持ちの現れなのです。それを表現
するためにこのシーンを入れました。
SK:
作品を見ていく上で、余計な効果音や音楽が殆どなく、風の音や波の音、街の騒
音といった自然の音が耳に飛び込んでくる印象がありました。これにはどういっ
た意図があるのでしょうか。また、撮影監督のピエール・アイム(『憎しみ』)
を起用したのは何故でしょうか。
JS:
私は映画で言いたいことを台詞で説明していくのは好きではありません。子供の
頃、父親がシネクラブに入っていたこともあり日本のミゾグチなどの作品を見
て、その時に言葉は全く解らなくても感動できたことを覚えています。ですの
で、台詞を使わずとも自然の音や、雲の流れといったイメージで感動を伝えるこ
とは可能で、それをやりたかったのです。
撮影監督のピエール・アイムもこういった点に賛同してくれたので一緒に仕事を
するはこびとなりました。
SK:
今日はお忙しい中、お時間を割いて頂きありがとうございました。
JS/CS:
ありがとうございました。
□インタビューを終えて
こちらが家族の話をするたびに、本当に嬉しそうに話してくれたお二人。監督が
話している間も、奥様クレールさんの暖かい眼差しは常に監督に注がれ、まるで
自分もその暖かい家族の輪のなかにいるかのような、始終寛いだ雰囲気のなかで
インタビューすることが出来た。通訳を介してのインタビュー故、日本語で話し
かける様子がおかしかったらしく、思わずお二人とも笑い出す場面もあり、お二
人の優しい人柄が伝わってきた。次回来日する際は、是非家族全員で来て頂きた
いなと思いました。
MS.QT.MAI
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◆◆ミシュカ
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Mischka
2002年/116min/カラー
監督・脚本・出演:◎ジャン=フランソワ・ステヴナン
出演:ジャン=ポール・ルション、ローナ・ハートナー
6月23日(日)10:00上映
家族と車でキャンプ場に向う途中、休憩場に置き去りにされた老人(ジャン・
ポール・ルション)、彼をまんまと言いくるめた看護士ジェジェーヌ(ジャン・
フランソワ・ステヴナン)は彼にミシュカというあだ名を付け、長年会っていな
い娘に会うため旅にでる。その途中、幼い弟を連れて家出した15歳のジャンヌ
(サロメ・ステヴナン)、ジプシーで歌手のジョリ・クール(ロナ・ハート
ナー)などが加わり家族のような絆を深めて行くのだが・・・。
主人公ミシュカは無口で一見何を考えているかわからない印象だが、最小限の台
詞と、その表情だけで彼の性格を見事に表現している。特にラストに1人ぽつんと
残された彼の表情が印象的。
余計な音楽や効果音を避け、雑踏のなかの騒音や、風の音や鳥の声が耳に入って
くることで、見ているほうもその場にいるような自然な感覚が生まれてくる。登
場人物たちの微妙な心の動きが伝わってくるようだ。
全くの他人である筈の登場人物たちが旅を通じて心を通わせ信頼を寄せ合うよう
になる様はまったく雰囲気こそは違うがフジテレビの人気番組『あいのり』を思
い出させた。全くの他人同士でも旅という一つの目的を通じて協力しあっていく
上で心を通わせることが出来るといういい例ではないだろうか。
ちなみに作中には監督の妻、娘、息子が総出演。そんな家族の絆がひしひしと伝
わる暖かい作品であった。
MS.QT.MAI
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◆◆ぼくのパパは、きみのパパ
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Les femmes… ou les enfants d’bord
★★★★☆
2000年/仏
監督:マニュエル・ポワリエ
出演:セルジ・ロペス、マリリン・カント
安定した仕事と3人の子供と良き妻を持つトム(ロペス)。そんな彼の前に8年
前に別れた恋人(シルヴィー・テスチュ)が現れ、あなたの娘を認知してほしい
と言われる。ただでさえ、仕事と子育てで修羅場の毎日に更なる出来事が振りか
かり・・・。
題名からして、突然の出来事に戸惑う男のドタバタ・コメディかと思いきや、意
外や意外。マジメに子育てとは何ぞや?子供を持つとは何ぞや?を問うマジメで
ほのぼのした作品でした。
主人公が暮らすフランスの田舎町。隣近所に何か起これば皆で助けあったり、問
題があれば口にだして注意するような・・・。まるで古き良き時代の日本を思わ
せるような隣近所づきあいがあるのには驚いた。隣人が『俺はよその子だろうが
自分の子だろうが分け隔てはしない。同じように叱る』と語るシーンがあるが、
いまの日本に足りないのはまさにそういった感覚ではないだろうか。
ベビーカーを運ぼうとしたら階段しかなかったり、レストランに行ったら子供用
の椅子がなかったりと、幼い子供を持つ人ならだれでも一度は出くわす問題をさ
らりと取り入れている。普段は子育てに追われ何もする時間のない奥さんが友達
と一日だけ買い物に行き、『楽しかった。1人の時間っていいわね』という台
詞・・・。こんな現実的だが共感できる台詞使いの上手さ!
アメリカ映画で子育てものというと、とかく子役の演技力ばかりが目立つお涙頂
戴ものになったり、現実には有り得ないような度が過ぎたドタバタになったりし
がちでいまいち白けてしまうのだが、こちらは子供に素で振舞わせたという監督
の演出が生き、あくまでリアリティがあるところがいい。
主人公がバーで出会う男と語るシーンも印象的。バーの男が『愛って大切か?感
情は?セックスは大切か?』と問いかけると『それは全部大事だけどそこに子供
と友情も加えてくれ。』と主人公が切り返すのだが、とかく前の3つばかりに流
されてしまう人が多いからこそ、恋愛がらみで友情が壊れたり、はたまた子供に
虐待したり、平気で捨てたりする親が出てくるわけであり、流されずに地に足を
つけて生きることや、周囲と協力しあって生きることの大切さを改めて考えさせ
られました。
MS.QT.MAI
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◆◆フランス国営国際放送・音楽専門ラジオ局のrfi musique
◆◆ストリーミング配信を開始
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2002年4月1日、AntenneFranceはRadioFranceInternationaleの音楽専門ラジオ放
送rfi musiqueライブ放送をブロードバンドで開始いたしました。rfi musiqueは
24時間フランスのポップミュージックを発信する音楽専門のラジオ局です。この
サービスにより、これまで国内では特殊な受信設備がなければ聴取できなかった
フランスのラジオ放送をライブで気軽にお聴きいただき、フランス文化をより身
近に体験していただくことが可能となります。
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