フランスの女性監督エリーズ・ジラールが、日本を舞台にした静かで心温まる物語を届けます。『シドニ、日本への旅』は、異国の文化との出会いを通して、人々の心の再生を描いたロードムービー。日本を愛する監督が、自身の体験や日本文化への深いリスペクトを込めた一作です。
物語の概要
フランス人作家シドニ(イザベル・ユペール)は、自らのデビュー作『影』の再出版を機に初めて日本を訪れます。編集者の溝口健三(伊原剛志)の案内で、桜が咲き誇る京都や奈良の古寺、瀬戸内海に浮かぶ直島を巡る中、亡き夫アントワーヌの幽霊と出会い、過去の喪失と向き合います。シドニの旅は、ただの観光ではなく、日本の文化や伝統がもたらす静寂や癒しの中で、心を解きほぐしていく旅でもあります。
監督エリーズ・ジラールが語る日本への想い
エリーズ・ジラール監督は、2013年に初めて日本を訪れた際、その独特の美しさや人々の繊細さに深い感銘を受けました。京都や奈良の静謐な風景、直島の現代アートと自然が融合した環境は、彼女にとって忘れがたい体験となり、本作のインスピレーション源となりました。
監督は次のように語ります
本作は、2013年に初めて日本を訪れたときに体験した感情から生まれました。書き始めてすぐに、イザベル・ユペールの顔が思い浮かびました。
シドニという名前を選んだのは、日本語の子音であると同時に私が特に好きな作家であるコレットへのオマージュでもありますこの映画旅行を通して、私は哀悼について語りたいと思いました。
それと同時に再生について思いがけず愛が戻って来ることについても語りたいと思いました
この映画は過去と現在の”つながり”哀悼の終わりと愛の始まりフランスと日本を体現する2人の人物の出会いを描いています。
またこの映画は近くに感じると同時に異国にも感じられる国日本への愛の告白でもあります。日本の古いものと超現代的なもの(伝統文化と新しい文化)の共存は、私の心に深く響きました。そしてその要素が日本が映画に選ばれた国である理由だと思います。
日本への愛が詰まった演出
ジラール監督の作品には、日本文化への敬意が随所に感じられます。谷崎潤一郎の墓を訪れる場面や、日本庭園の静けさに浸るシーンは、彼女が日本文学や伝統文化を深く理解している証拠です。また、映画の中で流れる坂本龍一の楽曲は、直島の穏やかな風景と見事に調和し、観る者に忘れられない印象を残します。
日本人と外国人の交流を描くキャラクターたち
本作では、寡黙な編集者・溝口健三(伊原剛志)が、異国の地で戸惑うシドニを静かに支えます。彼自身も心に喪失を抱えたキャラクターであり、2人の間に生まれる微妙な距離感と共感が、映画全体を優しいトーンで包み込みます。一方で、亡き夫アントワーヌ(アウグスト・ディール)の幽霊が登場し、物語に軽やかなユーモアと感動を添えています。
観客へのメッセージ
『シドニ、日本への旅』は、日本文化への深い愛と敬意に満ちた作品です。この映画は、日本を愛する外国人の視点を通じて、日本人にとっても改めて自国の魅力に気づくきっかけを与えてくれるでしょう。日本文化の繊細さ、風景の美しさ、そして人と人の静かなつながりを描いた本作を、ぜひ劇場でご覧ください。