
フランス人女性がノーベル賞受賞
カテゴリー: サイエンス | 公開日: 2020/10/16
フランス人として65人目のノーベル受賞者は女性になりました。
ノーベル化学賞を受賞したのはエマニュエル・シャルパンティエで、現在51歳、ドイツ・ベルリンにマックル・プランク感染生物学研究所を設立し、所長を務めています。
アメリカ人のカリフォルニア大学バークレー校教授ジェニファー・ダウドナさんと一緒に受賞しました。
2012年にゲノムと呼ばれる遺伝子情報を、分子のはさみで切断し、遺伝子情報を取り除いたり、入れ替えたりすることで、遺伝子情報を書き換える技術を開発しました。
ゲノム編集の画期的な手法を開発は、欠陥のある遺伝子をカットして健康な遺伝子と入れ替えることが出来るようになりました。遺伝子疾患の治療法の開発や植物の抵抗力強化をする事が出来ます。
既に医療分野でも血液疾患の患者に対して成功例がありガンの治療法にも使われています。また、環境に強い抵抗力のある植物を開発することが出来るとされています。
しかし、倫理的な問題もはらんでいます。既に中国では胎児の遺伝情報が書き換えられたことがあり、人が実験材料になる可能性があります。遺伝子操作された植物の汚染問題も既に問題となっています。
ゲノム編集の手法はシャルパンティエさん達が開発したCRISPR-Cas9以外にもいくつかありますが、とても容易でスピードも速く、安価で行えるのです。コストとスピードが速いことでゲノム編集の研究が急速に進むことになりました。
このCRISPR-Cas9に関しては、数年前に大きな特許争いが起きていました。
エマニュエル・シャルパンティエとジェニファー・ダウドナの共同研究で生まれた2012年の論文では、何のDNAが明記されていませんでした。この論文を参照したとされるブロード研究所(ハーバードとMITの共同研究機関)のフェン・ジャン(中国出身)がこの技術を人間の細胞などへの応用が可能である事を実証しました。
結局3人に特許が認められ3人はそれぞれベンチャー企業を立ち上げ上場しています。裁判にかかった費用も総額20億円とも言われますが、特許料も一時金で100億、企業の時価総額も数千億円ともいわれています。
エマニュエル・シャルパンティエとジェニファー・ダウドナの共同研究も、さらに元の基礎研究が存在します。1986年の石野良純九州大学教授の論文です。ゲノム編集のルーツとも呼ばれています。ノーベル賞もどこに焦点を当てるかで受賞者が変わってしまうのですね。
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