AntenneFrance N.261 日本VSフランス ITERをめぐる誘致合戦
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□日本VSフランス ITERをめぐる誘致合戦
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◆◆日本VSフランス ITERをめぐる誘致合戦
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▽夢のエネルギー「ITER」
人類にとって永久的なエネルギー源としての可能性を秘めた「国際熱核融合実験
炉」(ITER=イーター)の建設をめぐる日仏の誘致合戦が大詰めを迎えています。
フランスのカダラッシュ(マルセイユ近郊)か、日本の六ヶ所村(青森県)か。決戦
を迎えた2003年12月20日の閣僚級会議では決着は難航、来月の2月頃へと先送りさ
れました。
ITERとは、太陽が燃える仕組みと同じで、重水素、三重水素といった軽い元素を
融合させてエネルギーを生む核融合を実験するための施設です。実現すれば燃料1
グラムで石油8トン相当のエネルギーを生むことができます。今後100年で世界の
エネルギー消費は3倍になると言われる中、人類の恒久的なエネルギー源として国
際的な注目を浴びています。
これだけ期待の大きいエネルギー誕生の研究だけあって、各国の協力のもとにす
すめられています。1985年の米ソ首脳会談をきっかけに動き始め、その規模は国
際宇宙ステーションに次ぐ科学技術の巨大プロジェクトと言えましょう。30年間
の総費用は1兆3千億円に及び、建設費は10年間で5千7百億円、運転費は20年間で6
千億円かかります。
▽日仏の一騎打ち 建設地の誘致合戦
ITERの誘致にはフランス、スペイン、カナダ、日本が名乗りをあげていました
が、誘致国が建設費を48%、運転費の42%を負担することになり、費用負担に踏み
切れなかったカナダは脱落。当初日本側が建設地として選ばれたさいの建設費負
担は38%と想定していてものの、ウィーン会議でフランスとしてではなくヨーロッ
パとしてのプロジェクトとしてフランス側が48%の負担を提示。日本もそれを受け
入れることとなりました。
日本の候補地は青森県上北郡六ヶ所村にあり、広い敷地を有し、豊富な水の供
給、安定した強固な電力供給系統につながり、また近傍に重量物の荷揚げを可能
とする優れた港湾施設を持つなど要求条件を超えた優れた特性を持ちます。フラ
ンスの候補地カダラッシュは内陸100kmぐらいの立地で、巨大な建設資材を運ぶこ
とが可能かどうかの懸念が出たものの、既にインフラ整備はカバー、また市の隣
に研究所があるといった利点を持ちます。
2002年7月当時の文部科学副大臣青山丘氏は誘致によってもたらされる利点を、国
際貢献による世界からの尊敬、国内での優れた科学者の育成による科学技術創造
立国の推進、現在の石油資源から核融合による安定したエネルギー源の確保等を
挙げ誘致に意欲を見せていました。
対するフランス側のクローディエニュレ研究・新技術大臣は、誘致国が決定され
る予定だった2003年12月20日の閣僚級会合の直前に来日。日本人記者が集まった
会見では、カダラッシュはEUを代表する候補地でEU諸国の財政面の支援が得られ
ることや、明日にでも稼働が可能な状態にあると述べ、自信を見せていました。
こうして両国の熱い思いを浴びて迎えたITER閣僚級会合ですが、結論としては
「建設地の合意には至らず」と発表され、今後のスケジュールも「出来るだけ早
い時期(2月頃と見込まれる)に再度閣僚級会合を開催する予定」という曖昧なもの
に幕を閉じました。
というのも誘致は参加国の指示を多く集めた方が勝ちますが、今回の難航は米は
日本を指示、中国、ロシアがフランスの指示にまわり、韓国は最終的に棄権し、
決定的な決め手が見つからなかったことが原因と言われています。イラク戦争で
の米仏の不協和による米の日本指示など、国際的な政治状況を反映しているとも
言えそうです。
▽白熱の戦いの中に潜むITERの危険性
熱い誘致合戦の決着が気になるところですが、その一方では、核融合に対する懐
疑的な意見も出ています。2003年3月10日に、多量の放射性廃棄物が出るとして
ノーベル賞受賞の小柴昌俊さんらが誘致の見直しを求める嘆願書を内閣府などに
提出。燃料に蓄えられるトリチウムの猛毒性を指摘し、チェルノブイリ原子炉の
事故に匹敵する危険性があり、「ITERの誘致を見直して下さい」と訴えかけてい
ます。
国内の団体でも「理論的・技術的な解決策が得られておらず、最終的には核のゴ
ミと財政難を六ヶ所村に押しつけることになるのではないか」という反対意見を
出しています。さらにITER計画の最初の提唱者であったアメリカがいちはやく撤
退しているという事実もあります。ITERの実用化目標は2050年頃で、随分と遠い
未来の話になりますが、これほどまでの莫大な費用の負担と事故が起きたときの
危険性があるにも関わらず、デメリットについて日本国民に充分知らされないま
まというのに不安を感じずにはいられません。
▽平林博・駐仏日本大使「フランス側の態度を批判」
そして最近では、平林博・駐仏日本大使による寄稿が2004年1月23日付けのフラン
ス日刊紙ルモンドに掲載されニュースになっています。「ITERで小競り合いはや
めよう」との内容でイラク戦争がらみで論じるフランス側の態度を批判、ラファ
ラン首相が今月中旬「欧州単独でもITERを実施するかもしれない」と述べた
ことについて、「フランスは国際協力なしに計画を実施したいのか」と問い、国
際協力が成功の鍵だと強調しました。
大使は建設地の選定は「純粋に科学技術的諸点」から行うべきだと主張、日本の
科学的蓄積と地震対策の優位性を指摘し、本体を六ヶ所村、データ解析センター
をカダラッシュに建設すると案を示しました。日本がフランスに対し、こうした
提案を公表したのは初めてのことです。
今年1月初めエーブラハム米エネルギー長官が日本指示をあらためて表明してお
り、いよいよ2月に決定します。
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