結婚なんて過去のもの

324号の「子だくさんフランス」で、少し紹介したフランスの制度PACS(連体市民協約)ですが、いつもより多くの反響をいただきました。そこで、今回はPACS(パックス)についてもうちょっと掘り下げてみたいと思います。
まず、PACS(パックス)とは、同棲(どうせい)の男女や同性愛カップルが、納税や相続で夫婦なみの権利を得られる制度です。そもそもの始まりは99年に主に同性愛者からの要望で、左派連立内閣の時に認められました。北欧から始まった制度で、保守派や宗教界から「伝統的な家族制度を破壊する暴挙だ」との反発もありましたが、今では多くの欧州諸国が導入しています。
では具体的にPACSを結んだ2人にどんな優遇措置があるのか。
まず2人は共同納税者となり、お互いに経済的に助け合うことが義務となります。また、2人が賃貸住宅に住んでいる場合、パートナーの死亡や失踪などで名義人を失ったとしても、賃貸期間中であれば居住できます。
フランスでは税は夫婦単位で徴収されるため、個人で別々に納税するよりも軽減され、PACS締結後2年たてば、条件付きで法律婚夫婦と同じように贈与税や相続税の軽減措置も受けられるようになります。
PACSを結んだ2人は、結婚と同棲の間、言わば「契約を交わした同棲」(法律上は互いに独身であるが、パートナーとしては認められている)状態にあると言えるのです。
これだけ聞くとPACSという自由な形態は、人々に受け入れられPACS人口が増えているに違いないって思いますよね。事実、ユニオン・リーブル(同棲)やPACSなどのカップルは90年、150万人でしたがが、04年に240万人に達し、6組に1組の割合となっています。
しかししかし、その中身をじっくり見ると…、パリの35~44歳の異性カップルのうちPACSを結んでいるカップルは2.7%にすぎず、法律婚(66.3%)はもちろん、同棲(31.0%)に比べても非常に少ないことが分かります。(※内閣府経済社会研究所編「フランスとドイツの家庭生活調査」/2005年)
このへんの数字の読み方は様々ですが、もともとが同性愛者を対象とした制度であるPACSに抵抗を持つ人がいることも確かな様子。結局結婚に至らず自由でいたい関係の2人がユニオン・リーブルの状態で十分と考えているという背景も伺えます。
では、ユニオン・リーブル、PACS、結婚とこれだけの選択肢の中で何を基準に選べばいいの???思ってしまうのですが、結婚にもまだまだメリットはあります。
結婚していれば、夫婦間の相続税は、5%から40%まで5%刻みの税額ですが、PACSでは40%と50%の2種類、ユニオン・リーブルなど他の関係では55%と60%の2種類と、非常に高くなります。
自由でいたいという気持ち以外にも、結婚のハードルとなっているのは離婚の制度。互いに離婚に同意していても弁護士をたてねばならず、裁判所に申請しなければなりません。半年はかかると言われ、多額の金額をつぎ込み、何年もかけて離婚するなんてことも…。気軽に結婚できないわけです。
上記のような相続税の優遇を求めて、ユニオン・リーブルのカップルが高齢になって初めて駆け込みで結婚に切り替える手続きも増えているそうで、なんて合理的かつ現金な人たちなんだろうと思わずにはいられません…。
ところで、数年前は3人に1人が婚外子だったそうですが、今やパリでは2人に1人が婚外子なんだそうです。離婚も2組に1組。
パパとママがいてその間に子供が…なんて家族像は過去のもの。多様化する結婚観の中でフランスでの幸せな家族な形の終着点はどこにあるのか。これって男女の間に横たわる深~い社会問題なのだとは思わずにはいられません。

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