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往復20ユーロの高速道路と、庭先のアスファルト――便利さの請求書は誰に届くのか
社会

往復20ユーロの高速道路と、庭先のアスファルト――便利さの請求書は誰に届くのか

高速道路のすぐ隣に庭がある。そう聞いて、読者はどんな暮らしを思い浮かべるだろうか。

フランス南西部のタルヌ県に住むシドニー(仮名)の庭は、今ではアスファルトの帯に直接面している。彼女は熱心な環境活動家で、トゥールーズとカストルを結ぶ高速道路A69の建設に反対してきた。3年以上続いた闘いの末に道路はできた。彼女は「もう何も以前と同じではありません」と語る。

その道路は、早ければ11月第1週にも開通式を迎える。10月10日の土曜日、タルヌ県のカンブネ=シュル=ソルでは、反対派が「デフェット(dé-fête)」と名付けた集会が開かれた。「祝賀会」を意味するフェットの反対語で、「敗北の祝典」という意味合いである。行進には1,100〜1,500人が参加した。

この記事では、A69を軸に、同じ週にフランスの報道が伝えた別のニュースを3つ並べてみる。鉄道、北極海航路、映画である。一見ばらばらだが、並べると同じ問いが見えてくる。便利さや開発の利益を受ける人と、そのリスクや負担を引き受ける人は、同じ人なのか。

敗北を祝う人々が問うているのは、道路の是非だけではない

まずA69の事実関係を整理する。反対運動は3年以上続いた。象徴的な人物が、全国樹木監視グループの創設者で、タルヌ県出身の活動家トマ・ブライユである。2023年秋、彼はオート=ガロンヌ県ヴァンディヌのプラタナスの木の上で28日間暮らし、食事を拒んだ。この行動が運動へのメディアの注目を高めた。ただ、そのプラタナスはもうない。

工事は59キロのルート沿いで進められた。破壊されたり高速道路の一部に覆われたりした場所には、「守るべき地域(ZAD)」として数十人の活動家と協力する住民が集まっていた。何週間も木の上にとどまった活動家を支援し、治安部隊との激しい衝突も起きた。

興味深いのは、敗れた側の言葉が「道路を止められなかった」という嘆きに収まっていないことだ。

活動家で科学者でもあるジル・ガリックは、闘いは「新たな段階」に入ったと話す。彼は「私たちはA69そのものではなく、こうした計画の背後にある論理や、強引な進め方と闘っているのです」と述べ、反対派の何人かが今では沿線自治体の市議会議員になっていることも指摘した。

ここからは、記事から読み取れる解釈である。彼らが争っているのは、道路を造るかどうかの最終判断だけではなく、利益と負担を誰が計算し、誰がその席に座るのかという手続きの側面でもあるように見える。「地域で権力を取り戻す」という言葉は、その意味で読める。

負担は、道路を使う人の側にもある。ブライユは、トゥールーズとカストルの間の往復料金が通常料金で20ユーロに上ることを挙げ、利用者はボイコットするまでもなく「自然にそうなる」と述べている。これは彼の見立てであり、実際の交通量が示されたわけではない。さらに、A69に組み込まれた国道の片側2車線道路は旧道がなくなった。高速道路を利用したくない人は、複数の自治体を通る、より長い経路を走らざるを得ない。

高速道路は、時間を短縮したい人のための施設だと言われる。しかし、その代わりに旧道が失われ、使わない人にも遠回りが課される。便利さを得る人と、不便を負う人が、ここでは必ずしも一致していない。

開通を前にした当局の対応も記しておく。デモ参加者が高速道路や工事関連企業に近づくことを懸念した県当局は、かつてのZADがあった場所への立ち入りを命令で禁じた。さらに、主催者が許可されていない場所にキャンプを設営しようとした後、デモのルートを短縮した。その結果、行進は自然保護区の牧歌的な風景の中を回るだけになり、反対派は大規模な警察部隊に制止されながら、闘いの現場を遠くから眺めることになった。

解釈を加えるなら、負担を引き受けた場所の記憶に、当事者が近づけないという構図である。

列車が動物を避けるとき、避けられた動物はどこへ行くのか

A69が「負担をめぐる対立」の例だとすれば、同じ週のSNCF Réseauのニュースは、対立の少ない調整の例に見える。

野生動物と列車の衝突は、過去3年間で60%増えた。特にイノシシの増加が要因とされ、列車は平均して1日15本、野生動物と衝突している。SNCF Réseauは、列車の通過前に音と光で動物を追い払う装置Blue Sentinelを試験している。

場所はパリ―ナント線の一部、ロワール=アトランティック県のウドンである。ロワール川沿いの5キロの線路に装置を置いた。この区間は1日150本以上の列車が通る。近くのロワール川の島が多くの動物の避難場所になっていて、動物は線路の反対側の畑や農場へ向かうために定期的に線路を渡る。動物の約3分の2がイノシシ、残りの3分の1がノロジカのようなシカ類だという。

2024年夏の設置以降、衝突は90%減った。SNCF Réseauは装置を新たに5地域へ広げる。担当者は、目的は「衝突を防ぎ、動物を死なせないこと」だと述べ、解決策は安全性・定時運行と生物多様性の両立になると話している。

ここで見過ごされがちなのは、この話が「負担の配分」の別の形を示していることだ。

線路では、乗客の利益(定時運行)と動物の命が、同じ場所で衝突していた。従来なら、動物の側が一方的に命で負担を支払っていた。それを、人間の側が装置と植生管理(イノシシが身を隠す低木や森林を減らす)に費用と手間をかけて引き受け直そうとしている。

もっとも、原文は、追い払われた動物がどこへ行くのかには触れていない。これは私の推測だが、動物の負担がゼロになったとまでは言えず、衝突という最も見えやすい形の負担が減った、というのが正確な評価だろう。A69では人間の住民が声を上げても止められなかったことを思えば、声を持たない動物の側に配慮が及んだ点は、対比として興味深い。

10日短縮の恩恵は、どこから来てどこへ届くのか

韓国のコンテナ船PanStar Acroは、8月22日に釜山を出発し、北極海を通る北方海航路を経て、英国のフェリックストウ、オランダのロッテルダム、ポーランドのグダニスクに寄港した。同じ航路で戻り、10月11日に釜山へ着いた。

李在明大統領は、スエズ運河経由と比べて往路の航行時間を10日短縮できたと述べ、極域での運航経験と航行データが得られたことを成果に挙げた。試験は、中東紛争で世界の海上輸送が混乱する中で行われた。

一方で、懸念も報じられている。海上交通が増えれば、北極の氷の減少が加速する可能性がある。ロシア北岸に沿う航路なので、運航事業者は国際制裁に関連するリスクにさらされるおそれがある。

ここでも、利益と負担の位置はずれている。短縮される10日は、荷主や最終的には消費者にとっての利益である。氷の減少の影響や制裁リスクは、別の主体が引き受ける。しかも、氷の減少の影響を誰がどのように受けるのかは、原文には書かれていない。書かれていないことを補うつもりはないが、書かれていないこと自体が、この種の議論で「負担を受ける側」が見えにくい構造を示しているようにも思える。

小麦を勧められた農家の少年が、映画の中で背負うもの

もう一つだけ、フィクションを挟みたい。10月14日に劇場公開されるルイ・クリシー監督のアニメーション映画『Le Corset』である。

舞台は1980年代のボース地方の農場。頭が危険なほど横に傾く11歳の少年クリストフは、転倒を防ぎ脊柱を矯正するため、金属製のコルセットを着けることになる。その背景で、羊を飼っていた両親は、並外れた小麦の利点を売り込まれ、穀物栽培へ転じ、そのために融資を受けるよう勧められる。無口な父親は借金を返せず、さらに沈黙の中へ閉じこもる。

これは映画の物語であり、実際の農村で何が起きたかを述べたものではない。そのうえで言えば、作品が描くのは「勧められた発展」の代価を、家族と、その中でもいちばん弱い立場の子どもが引き受ける構図である。借金を抱える父親と、農場の問題から遠ざけられた少年が、言葉を交わせなくなっていく。大きな制度の約束と、その返済を台所で受け止める人の距離が、ここにはある。

共通するのは「距離」

4つのニュースを並べると、共通項は「距離」である。

  • 高速道路の利用者と、庭がアスファルトに面した住民の距離。
  • 定時運行を求める乗客と、線路を渡る動物の距離。
  • 10日の短縮を喜ぶ荷主と、北極海の氷の距離。
  • 小麦と融資を勧める側と、返済に追われる農家の距離。

利益は広い範囲に薄く広がり、負担は特定の場所と人に濃く集まる。その距離が遠いほど、負担は見えにくくなる。A69の反対派が「敗北の祝典」を開いた理由の一つは、この見えにくさを、見える形にしておくためだったのではないか。これは私の解釈である。

A69の集会では、オート=サヴォワ県のA412(9月初めに着工)や、ボルドーとトゥールーズを結ぶ高速鉄道計画への反対運動との連携が呼びかけられた。アジャン地域から来たフィリップは「共通の闘いです」と語り、高速道路ができたことで、鉄道への反対を続ける決意はむしろ強まったという。負けた経験が、次の場所の交渉力として持ち越される仕組みだ。

日本の読者は、この距離をどう測るか

日本でも、空港、道路、物流拠点、発電や廃棄物の施設をめぐって、利益を受ける広域の人々と、現場の住民との関係が議論されることが多いと一般に言われる。「迷惑施設」という言葉で語られることもある。ただ、フランスの事例と単純に並べて、日本は静かだ、フランスは闘う、と言い切るのは避けたい。ここで扱った記事だけから、日本の実態を断定することはできないからである。

それでも、今回の記事群から日本の読者に持ち帰れる視点はある。第一に、負担は住民の「感情」の問題として処理されるより前に、利益の配分とセットで可視化すべき項目だということ。第二に、列車のイノシシ対策が示すように、技術で負担を減らす余地はあるが、それは負担を消すのではなく、移したり薄めたりしている可能性があるということ。第三に、反対運動が負けた後も、地方議会への参加という形で意思決定の側へ移っていく道があるということである。

これから何が問われるか

A69の開通後、実際にどれだけの車が走るのか、旧道の復元要求がどう扱われるのかは、今のところ分からない。Blue Sentinelの5地域への展開で90%という数字が再現されるかも、これからの検証による。北極海航路は、環境負荷や制裁リスクを含めて、次にどう評価されるかが問われる。

見通しとして言えるのは、開発の評価が「利益の総量」だけでは済まなくなっていくということだ。負担が誰に、どの地域に、どれだけ偏っているかを項目として含めなければ、同じ種類の対立が各地で繰り返されるだろう。A412や高速鉄道計画への連携の呼びかけは、その兆しに見える。

最後に、読者に問いたい。

私たちは、スマートフォンの画面で配送の到着日を確認し、高速道路や鉄道、海の上の船を便利に使っている。その便利さの恩恵を受ける私たちは、その場所に住む人の負担に、どこまで責任を負うのだろうか。 料金を払えば、責任は果たしたことになるのだろうか。

出典

  • franceinfo (titres):Accident au Lido à Paris : une partie du décor s'effondre sur la scène en pleine représentation de "Singin’in The Rain" (2026/10/12)
  • franceinfo (titres):"Le Corset" : un "enfant penché" au cœur du film d'animation de Louis Clichy qui a enchanté les festivals de Cannes et d'Annecy (2026/10/11)
  • franceinfo (titres):REPORTAGE. "Cette lutte va servir à ceux qui viendront après" : avant l'inauguration de l'A69, les opposants veulent tirer les leçons de leur défaite pour combattre d'autres projets "écocidaires" (2026/10/11)
  • franceinfo (titres):"Assurer la régularité des trains et préserver la biodiversité" : SNCF Réseau teste un système d'effarouchement des animaux, pour éviter les collisions (2026/10/11)
  • franceinfo (titres):Un porte-conteneurs sud-coréen a achevé avec succès un voyage d'essai vers l'Europe via l'Arctique (2026/10/11)

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