そして友よ、静かに死ね

監督:オリヴィエ・マルシャル
主演:ジェラール・ランヴァン、チェッキー・カリョ、ディミトリ・ストロージュ

裏切りものは誰かというミステリー、実在のギャングを描いたリアリティ。2つの要素が織り交ぜられ非常に見応えのある、面白い作品だ。

70年代フランスで「リヨンの男たち」として名を馳せた実在のギャング、エドモン・ヴィダル(通称モモン)の激動の半生を、彼の自叙伝「さくらんぼ、ひとつかみで」をベースに当時の事件とフィクションが混ざり、ギャングの友情と裏切りを描いたフィルム・ノワールだ。

伝説のギャング、エドモン・ヴィダルに『ル・ヴレ』、『この愛のために撃て』のフランスの国民的俳優ジェラール・ランヴァン。親友のセルジュには『ニキータ』、『ドーベルマン』『ザ・コア』などの名優チェッキー・カリョなど、フランスの実力俳優が顔を揃えている。

映画は冒頭から最後までモモンの『今』と『過去』を交錯しながら進んでいく。どちらも迫力あるアクションシーンに、裏切り者は誰なのかというミステリー要素が加わり息つく間もなくクライマックスに到達する。

そして物語に惹きつけられているうちに、モモンの魅力を理解させられる。ギャングのリーダーであり、良き夫であり、父である青年時代。そして還暦を迎えギャングから足を洗っても、古い友との友情を捨てきれない現在。モモンはいつの時代も家族、仲間を愛していることがひしひしと伝わってくる。

とはいえ、このギャングのリーダーは英雄ではない。エドモン・ヴィダル役を演じたジェラール・ランヴァンの言葉を借りれば「傷ついて疲れた、一定の価値観にしがみついた過去を背負ったひとりの男。間違っても映画を見終わったときに自分も悪党になりたいなんて思わせるような男ではない」。

モモンという男は本当に魅力があったのか、それともただのギャングだったのか。観る者にとって答えは違うにせよ、彼を演じたジェラール・ランヴァンとディミトリ・ストロージュ。2人の演技力が素晴らしいからこそ、惹きつけられるものがあるのだろう。

モモンはロマ人だ。フランスの時事ニュースを見ていると時折話題にあがってくる。ロマ人は定住地を持たずキャンピングカーなどで移動生活をしている民族でジプシーとも言われる。古くは奴隷として扱われる時代もあり、虐げられてきた民族だ。最近ではサルコジ前大統領が不法滞在のロマ人を強制送還させたことがニュースになった。モモンが迫害された民族ロマ人であることは、モモンの人生を語る上で重要なバックグラウンドなのだ。

実際のモモンことエドモン・ヴィダルはこの映画の撮影にも協力している。また、エキストラには本物のロマ人たちが採用され、エドモン・ヴィダルにとってもうれしい出来事だったようだ。

モモンの青年時代を演じたディミトリ・ストロージュはフランス映画祭の来日ゲスト。本作品でセザール賞助演男優賞にノミネートされており、今期待の新進俳優だ。

アンテンヌフランスでは、このディミトリ・ストロージュに単独インタビューを予定しています。インタビューレポートを是非お楽しみに。

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