フランス映画祭2006:愛する勇気Courage d’aimer
コメディ・ドラマ/2004年/103分(フランス公開:05年6月29日)
監督・脚本:クロード・ルルーシュClaude Lelouch(『男と女』『白い恋人たち』『冒険また冒険』『マイ・ラブ』『愛と哀しみのボレロ』)
製作・配給: Les Films 13, France
出演:マティルド・セニエMathilde Seigner
マイウェンMaïwenn
マッシモ・ラニエリMassimo Ranieri
ミシェル・リーブMichel Leeb
サラ・フォレスティエSara Forestier
シノプシス
路上の歌手、女のスリ、バーのウエートレス、何でもこなすお手伝い、カリスマ的な露店商人…愛する勇気は、独学のひとたち、アウトサイダーたち、決して出世しないだろうひとたちの歓呼の声だ。66年に『男と女』でカンヌ映画祭グランプリほか各賞を受賞し、大人の恋愛を描き続けてきたクロード・ルルーシュが、2004年から手掛け始めた「Le Genre humain(訳題:人類)」三部作の第一部『Les Parisiens』等を使って海外向けに編集したのが本作『Courage d’aimer』。
クリスティーヌ・カリエールChristine Carrière監督の『Rosine』 で95年にミシェル・シモン賞を受賞したフランスのコメディー・スター、マティルド・セニエや、アブドゥラティフ・ケシシュAbdellatif Kechiche監督の『L’Esquive』で一躍注目を集めたサラ・フォレスティエらが出演。サラ・フォレスティエは、本映画祭で上映されるブリュノ・シッシュBruno Chiche監督の『Hell』にも出演している。
クロード・ルルーシュ監督 プロフィール
クロード・ルルーシュは1937年10月30日、パリに生まれる。学業を放棄し、世界中でルポルタージュの仕事を手掛け始める(その幕開けは、1957年にURSSソビエト社会主義共和国連邦で不法に撮影された)。軍の映画局(Service Cinématographique des Armées)で短編を多く撮ったのち、60年に彼自身のプロダクション「Les Films 13」を立ち上げ、初めての長編フィクション『Le Propre de l’homme』を制作した。しかしこれは資金面でも批評面でも痛烈な失敗に帰した。彼の次の試み『La Femme spectacle』(64)はそれほど注目されなかったが、『女と拳銃』Une fille et des fusils(64)では評価を得た。これはアメリカのスリラーに触発されて作った映画だった。
しかし、クロード・ルルーシュの名を一躍世界に知らしめたのは、ジャン=ルイ・トランティニャンとアヌーク・エーメがドーヴィルの浜辺で熱烈な恋人を演じた『男と女』Un homme et une femme(66)である。この作品で彼はカンヌ映画祭でパルムドールを受賞し、ふたつのオスカーを与えられ、20年後には『男と女Ⅱ』が制作された。軽量カメラによる撮影の高度な技術、俳優の自然さに起因するありのままにとらえる彼のスタイルには驚かされる。この方法は、様々なジャンル(推理ものの『流れ者』(70)や、社会派コメディ『恋人たちのメロディー』(71)から、壮大な年代記『マイ・ラブ』(74)まで)に手を出すこのシネアストの制作の特徴になるだろう。たびたび軽妙な調子を採り入れながらも(『冒険また冒険』(72)など)、98年に制作された『しあわせ』まで彼のテーマは守り貫かれている。
俳優に恋をする、クロード・ルルーシュはこれまでフランス映画のスターたちを撮影してきた。カトリーヌ・ドヌーヴ、イヴ・モンタン、『ライオンと呼ばれた男』(88)のジャン=ポール・ベルモンド。しかしまた、ベルナール・タピからパトリシア・カースまで、いつもノンプロの俳優も撮影してきた。キャスティング内にはしばしば多く、ジャック・ヴィルレ(彼は76年の『レジスタンス/反逆』で有名になった)やフランシス・ユステール、シャルル・ジェラールといった常連がいることに気づく。
そして現実とフィクションの境界線をかきまぜながら、このシネアストは喜んで女たち――エヴリーヌ・ブイックス、マリー=ソフィー・L、アレッサンドラ・マルティンヌ――の人生を、時代と交錯する大河ドラマ(彼の最も大きな成功のひとつ『愛と哀しみのボレロ』(81))や、感傷的な筋立てのフィルム(『夏の月夜はご用心』(88)、『Tout ça… pour ça!』(92))のなかに焼き付ける。
いつもパリの狂人を登場させながら、クロード・ルルーシュはエディット・ピアフとマルセル・セルダンの恋を『恋に生きた女ピアフ』(83)でなぞり、『La Belle histoire』(92)で2000年に渡る恋物語を語り、ヴィクトル・ユーゴーの有名な著作を『レ・ミゼラブル』(95)のなかで現代に移し変えた。彼の大胆な企画がいつも観客に出合うとは限らないが、時を経るにつれて、彼はデビュー当時には足りなかった批評の認知を獲得するだろう。
監督、脚本家、プロデューサー、そして時おり配給者ともなるクロード・ルルーシュは、2004年に新たな挑戦と運命に身を投じる。『Le Genre humain(訳題:人類)』三部作の第一部として『Les Parisiens』(04)を製作。フランスでは芳しくなかったこの作品を、海外用に編集した新しいバージョンが本作品『Le Courage d’aimer』である。このバージョンには、第一部『Les Parisiens』の始めのふたつのエピソードの中心部が盛り込まれている。まずアメリカで2005年4月に公開され、フランスでは2005年6月に公開された。
製作秘話
クロード・ルルーシュの三部作『Le Genre humain』は、当初『Les Parisiens』、『Le Bonheur, c’est mieux que la vie』、『Les Ricochets, ou la légende des siècles』の三つで構想されていたが、第一部の『Les Parisiens』の興行的な失敗を受けて、クロード・ルルーシュは、第二部『Le Bonheur, c’est mieux que la vie』の撮影の只中にプロジェクトに若干の変更を加えることにした。本作品は、第一部で使われた幾つかのシーンを再び用いながら、さらに、のちに第二部で使われることになる幾つかのシーンを含めた編集になっている。
クロード・ルルーシュ フィルモグラフィ
God willing(2006)
Bzz…(2005)
Le Genre humain 2ème partie :Le bonheur, c’est mieux que la vie(2004)
Le Courage d’aimer(2004)
Le Genre humain 1ère partie: Les parisiens (2004)
11’09”01-September 11 『11’09”01/セプテンバー11(イレブン)』(2002)
And Now… Ladies and Gentlemen… 『男と女 アナザー・ストーリー』 (2002)
Une pour toutes (1999)
Hasards ou coïncidences 『しあわせ』(1998)
Hommes, femmes, mode d’emploi 『男と女 嘘つきな関係』(1996)
Lumière et compagnie (1996)
Les Misérables 『レ・ミゼラブル』(1995)
Tout ça… pour ça! (1992)
Belle histoire, La (1992)
Il y a des jours… et des lunes『夏の月夜はご用心』(1990)
Itinéraire d’un enfant gâté 『ライオンと呼ばれた男』(1988)
Un homme et une femme, 20 ans déjà 『男と女Ⅱ』(1986)
Attention bandits! (1986)
Partir, revenir 『遠い日の家族』(1985)
Viva la vie! (1984)
Édith et Marcel 『恋に生きた女ピアフ』(1983)
Les Uns et les autres 『愛と哀しみのボレロ』(1981)
À nous deux 『夢追い』(1979)
Robert et Robert 『二人のロベール/花嫁募集中』(1978)
Un autre homme, une autre chance 『続・男と女』(1977)
Si c’était à refaire 『愛よもう一度』(1976)
Le Bon et les méchants 『レジスタンス/反逆』(1976)
C’était un rendez-vous (1976)
Le Chat et la souris(1975)
Mariage 『マリアージュ』(1974)
Toute une vie 『マイ・ラブ』(1974)
La Bonne année 『男と女の詩』(1973)
L’Aventure, c’est l’aventure 『冒険また冒険』(1972)
Smic Smac Smoc 『恋人たちのメロディー』(1971)
Le Voyou 『流れ者』(1970)
La Vie, l’amour, la mort 『愛と死と』(1969)
Un homme qui me plaît (1969)
13 jours en France 『白い恋人たち/グルノーブルの13日』(1968)
Vivre pour vivre 『パリのめぐり逢い』(1967)
Loin du Vietnam 『ベトナムから遠く離れて』(1967)
Un homme et une femme 『男と女』(1966)
Les Grands moments (1965)
Une fille et des fusils 『女と拳銃』(1964)
La Femme spectacle 『女を引き裂く』(1963)
L’Amour avec des si 『行きずりの二人』(1962)
Le propre de l’homme(1960、短編)
マティルド・セニエMathilde Seigner
1968年1月17日生まれ。フランスの女優。ルイス・セニエの孫娘、フランソワ・セニエの姪、エマニュエル・セニエの妹。親譲りの職に就いたマティルド・セニエは、映画に最初に登場する1994年以前にcours Florent(演劇学校)でコメディを学び、姉エマニュエルの傍らで、クロード・ミレールの『オディールの夏』に出演した。
初めての大役はクリスティーヌ・カリエールChristine Carrière監督の『Rosine』で、彼女は胸を打つまだ若い母の役で1995年のミシェル・シモン賞を受賞した。2年後には、アンヌ・フォンテーヌの『ドライ・クリーニング』でセザール賞有望若手女優賞にノミネートされた。1999年、マティルド・セニエはトニー・マーシャル監督の『エステ・サロン/ヴィーナス・ビューティー』で、オドレイ・トトゥとナタリー・バイの同僚エステティシャンとして出演し、ガブリエル・アギヨン監督の『Belle Maman』ではカトリーヌ・ドヌーヴの娘役を演じた。
彼女の自然さと不屈のキャラクターが評価され、観客からもとても早い段階から人気を得た。とりわけノスタルジックなクリスティアン・カリオンChristian Carion監督の『Une hirondelle a fait le printemps』(2001)では、田舎の喜びを見出していく都会人を見事に演じた。しかし、彼女はその枠を破り、テレビの『Madame Sans-Gêne』にも出演し、映画と同じくらい有名になった。ドミニク・モル監督のスリラー『ハリー、見知らぬ友人』(2000)、クロード・ミレール監督の『La Chambre des Magiciennes』(01)、『Betty Fisher et autres histoires』(2001)などの他にも、ステファン・ブリズStephane Brize監督の『Le Bleu des villes』(99)で天気予報士、フィリップ・アレル監督の『Tristan』(03)では警官、クロード・ルルーシュ監督の『Les Parisiens』では双子を演じた。
彼女の存在はフランスのコメディーには欠かせない。最近の出演作には、クロード・ルルーシュ監督三部作の第一部、第二部、 ヴァレリー・ルメルシエValérie Lemercier監督の『Palais royal !』(05)、クリストフ・マラヴォワ監督の『Zone libre』(05)などがある。
サラ・フォレスティエSara Forestier
1986年、フランスに生まれる。フランスの女優。サラ・フォレスティエは13歳の時に友達とオーディションを受け、それが芸能界に入るきっかけとなった。その後テレビで幾つか小さな役をこなした。マルティーヌ・ドゥゴウソン監督の『Les Fantômes de Louba』(2001)が有名である。
映画では、アブデゥラティフ・ケシシュAbdellatif Kechiche監督の『L’ Esquive』リディア役で鮮烈なデビューを果たし、批評家からも観客からも大きな成功を得て2005年のセザール賞有望若手女優賞を獲得した。こうして彼女のキャリアは軌道に乗った。クロード・ルルーシュ作品の小さな役や、ミシェル・ドゥヴィル監督の軽喜劇『Un fil à la patte』(2005)で未来の夫に放ったらかしにされる若い婚約者の役を演じた。ベルトラン・ブリエ監督の『Combien tu m’aimes ?』(2005)では若くて軽い女の役を演じたが、彼女の情熱と成熟ぶりは、小説「trash」を脚色した『Hell』のヒロインで、パリの金持ち道楽娘というそう軽くもない役を演ずるにも充分で、この映画ではニコラ・デュヴォシェルと共演している。