「イヌとイタリア人、お断り!」アラン・ウゲット監督インタビュー
『イヌとイタリア人、お断り!』
アラン・ウゲットは祖父と父から工作の趣味を受け継ぎ、私的な世界を探求する手段として、工作を映画制作に取り入れている。1985年、アラン・ルネから短編『La Boule』にセザール賞最優秀短編アニメーション賞が授けられた。2013年には、70年代後半、騒乱のテヘランで体験した自身の恋愛を描いた『Jasmine』を監督。今作で彼は祖父の物語を通してイタリア移民の歴史を描いている。
アラン・ウゲット監督インタビュー
この作品はアニメーションではなくて一コマ一コマ撮影された作品なんですか
一枚一枚の写真をつなげています。それに生命を吹き込むというか、
生き生きと描けるような技術になります
一枚一枚写真を撮るんですか?
人形の一部を少しずつ撮影して、すべて重ねて動画にします。写真をまとめて動画にする部分は自動的に行われます。
アニメというのは何か動きが必要です。何も何も動かなければそこは何も来ないでもいいんですけれども
ちょっと動きがあった瞬間に起きます。
この犬と猫が縄張り争いするとか権力争いすると言うなことが、そこには表現表情って出てきます。
それを表現しようということで、アニメになります。
フランスでは、このようなアニメーションは盛んでポピュラーなんですか?
ええ。パペットなど非常に多いです。
今の子供たちはスマホのゲームに夢中なので、ブームにはなりません。
時代時代に合った物はあるとは思いますが、パペットというのが確立しています。
今回の作品でちょっと社会的なテーマという感じがしましたが、
アニメーションというと子供向けっていうイメージもあります。
フランスではこう大人の見るようなアニメーションは多いのですか?
あらゆる年齢層の方に向けて作品を作っています。今回配給会社の試写会があったのですが、そのときに7歳か8歳ぐらいの女の子が非常に喜んでくれました。ブロッコリーた!と言って喜んでくれました。
もう少し年齢の行った男の子は、この話は本当の話なの?と聞かれまして、様々な年代の人に楽しまれています。
日本人からすると身近ではないのですが、本当の話なんですか?
ええ、本当の話です。私の祖先の話です。
映画とはそもそも絵空事というか、作り話なのですが、そこから観客各自が真実をくみ取るというのが映画だと思います。
でも本当にいろんな証言を基に作ってるので事実、真実になります。
題名が「犬とイタリア人はお断り」という名前になっていますが、かなり人種差別的ですよね。
ええ。本当に人種差別的です。
これを日本語に訳しても、かなりきつい人種差別的な言葉になると思うんですよね。
今の時代にこんな言葉が、日本でもイタリアでも、レストランに掲げられていたら、すごくびっくりしますし、本当にあり得ないっていう風になっていると思います。この時代は普通にあったのです。
つまり、当時イタリア人が貧しかったことが、差別があったのでしょうか?
そうですね。当時はイタリア人が貧しくて、フランスは裕福だったと言うことで、フランスが様々な国から、主にイタリアから出稼ぎ労働者を受け入れていました。今はイタリアが外国から労働者を受け入れています。ただ、イタリアという国はそれに戸惑っています。どのようにしていいのかわからない。
ファシズムがあった背景は、イタリア経済の問題があったからでしょうか?
今イタリアにはファシズムという雰囲気が盛り上がってきていて、私はフランス人ですけれども、イタリア系のフランス人ですので、ファシズム的な思想が国境を越えてフランスに入ってきたとしたらすごく怖いなと感じています。
この映画はファシズム的なものへの警鐘をならす意味がありますか?
ファシズムのことを言いたかったというと、この映画で表現したかったというわけでは無く、どちらかというと、ある家族が自然と歴史の流れの中で他国に移り住んで、自分たちの人生をゼロから作り上げていくかと言うことを描きたかったんです。
今回の戦争に関して、この映画と重なる部分があったら何か教えてください。
私はフランスとイタリアという二つの文化の両方を受け継いでいます。
私が今恐れているのは、コロナが最初イタリアのミラノに来て、そこからフランスや各地に広がっていきました。
ファシズムのような空気が国境を越えて、コロナと同じような道をたどるのが怖いですね。
イタリアから前ヨーロッパに広がるのが怖いです。