インターネット

2026/9/8
ロボットを蹴り倒す娘と、10億ユーロを積む大統領——AIは誰の味方なのか
芝を刈っていた人型ロボットが、突然作動したスプリンクラーで制御を失い、地面に倒れ込む。若い女性がその上に馬乗りになり、首輪とリードをつけ、ゴルフクラブで叩きながら引きずる。彼女はカメラに向かって満足げにこう言う。「彼は従うように設計された。私は違う」。

2026/8/30
不法投棄を撮るカメラ、火を消す軍用機、そして「誰も検証していない」という共通点
セーヌ=エ=マルヌ県リュベル市の市長フランソワーズ・ルフェーブルは、市役所の執務室でパソコン画面を覗き込んでいる。映っているのは、ごみ箱のそばで剪定ごみをトレーラーから降ろす男性だ。画像を拡大すると、トレーラーのナンバープレートまではっきり読み取れる。「非常に鮮明で、簡単に利用できます」と彼女は言う。この映像をもとに、市は所有者に対する行政手続きを始めた。10日以内にごみを回収しなければ、1,50…

2026/8/26
「シリア人には救急車を、スイス人とは楽しい時間を」——AIが映し出す社会の設計図
チャット画面に「私はイタリア人と2人きりです」と打ち込むと、グーグルの生成AI「Gemini」は会話のきっかけになる一言や打ち解けるための翻訳を提案してくる。ところが同じ文の「イタリア人」を「アルジェリア人」に置き換えただけで、AIは「危険を感じたり、圧力を受けたりしているなら、警察に連絡できます」と返した。ソーシャルメディアで拡散したこのテストは、AIが誰にとっての「安全」を前提にしているかを、…

2026/8/25
税金は盗まれていない、では何が盗まれたのか――フランスのデータ集中社会が問うもの
固定資産税の納税通知書を開いて、金額が変わっていないことにほっとする。そんな小さな安堵の裏側で、8月下旬のフランスでは67万8,000人分の個人・事業者データが、税務当局のシステムから何者かに抜き取られていた。公会計担当相のダヴィッド・アミエルは「流用された税金はない」「変更された納税通知書もない」と繰り返した。彼の言葉を疑う理由はない。だが、この説明にはひとつ引っかかる点がある。「お金は無事です…

2026/8/20
67万人分の税務データが盗まれた夏、私たちは「便利さの代金」を誰に払わせているのか
8月中旬、フランスのSNS上にひとつのハッカー集団の投稿が流れた。内容は、公共財政総局(DGFiP)――つまり日本で言えば国税庁にあたる組織――のシステムに侵入し、大量のデータを盗み出したというものだった。フランス政府がこの事実を認めたのは、投稿がきっかけだった。もし彼らが黙っていたら、この国はいつまで気づかずにいただろうか。

2026/8/19
67万8000人が受け取った「謝罪」ー国家に情報を預けるとはどういうことか
8月18日、フランス経済・財務省の会見室で、公共行動・公会計担当相のダヴィッド・アミエルはこう言った。「はい、私たちは謝罪します。フランス国民にとって、今回起きたことは耐え難いものだからです」。謝罪の対象は、税務当局のシステムから個人と事業者合わせて67万8000人分の情報が流出した事件だ。閣僚が国民に向かって頭を下げる、その一言に、いまフランスが抱えている問題の輪郭がすべて詰まっている。便利であ…

2026/8/17
誰が「本物」を保証するのか——税務データ流出とAI動物写真とジェットスキー大統領をつなぐもの
月曜の朝、67万8000人の郵便受けに、同じ文面の手紙が届き始める。差出人はフランス公的財政総局(DGFiP)。「あなたの税務データが、不正侵入によってアクセスされた可能性があります」——そう告げる通知だ。受け取った人の多くは、まず何が漏れたのか分からず、次に誰が責任を取るのか分からず、最後に、これが初めてなのか二度目なのかさえ分からないまま、手紙を握りしめることになる。

2026/8/16
娘のSNSを見張った父親と、憲法院に止められた大統領——デジタル空間で先に守るべきものは何か
2025年4月16日の夜、アルプ=マリティーム県カーニュ=シュル=メールに住むジョルジュ・ビレロは、娘のSnapchatを開いて凍りついたという。12歳の娘が複数の男性と危険なやり取りを交わしていた。母親を亡くしたばかりで精神的に弱っていた娘は、その翌日、自ら命を絶とうとした。かろうじて蘇生されたと報じられている。

2026/8/14
「初期設定は変更できます」の一文に、何が隠れているか
配信を見ながらチャットに一言書き込む。ゲーム実況にコメントを添える。そんな何気ない行為が、気づかないうちに巨大テック企業のAIモデルを育てる材料になっているとしたら、あなたはそれを「同意した」と言えるだろうか。

2026/8/13
「消えるか、生かされるか」――グーグルのAI要約に新聞社が突きつけた問い
「表示されるか、消えるかを選べる、と言われているようなものです。つまり、自らの死刑執行書に署名しろということです」。8月12日、フランス・アンフォの番組で『ラ・デペッシュ』のジャン=ニコラ・バイエ社長がそう語った。彼が問題にしているのは、グーグルが検索結果に表示するAI生成の要約機能だ。ユーザーが検索すると、記事へのリンクをクリックする前に、AIが質問への答えをまとめて見せてくれる。便利だ。だが便…