ミステリーズ・オブ・リスボン(仮)
上映作品のなかで一つ紹介しておきましょう。ミステリーズ・オブ・リスボン(仮)は、ラウル・ルイスという昨年無くなった監督の作品で、生前に公開された最後の作品です。フランス映画と言うよりポルトガル映画と言った方が良いと思いますが、大半はポルトガル語で会話されています。
しかも上映時間が267分!一瞬どのくらいの長さが分かりませんが4時間半ほどの上映時間という、それだけで見たくなくなるほどです。時間が長いせいか、料金も高いのです。
19世紀のポルトガルを舞台にした貴族のメロドラマと言ってしまうと簡単ですが、孤児院の少年の話から始まり、様々なストーリーが織り込まれ、大変複雑な内容になっています。これが4時間半、なかなかの記憶力と集中力が必要でしょう。
フランスらしい映像美、美しい音楽、そしてストーリーもなかなか引き込まれます。音楽はバイオリンやチェロの音がきれいで、これは劇場のスピーカーの特質にもよりますが、音楽的な表現の出来るスピーカーでしたら大変素晴らしいと思います。テレビよりは良いでしょうが、映画館のスピーカーではなかなか期待が出来ないところが残念です。
日本やアメリカ映画になれていると、フランス映画のカット割りや場面展開にはちょっと分かり難かったり唐突な印象を与えるところが多いと思います。この作品もやはり前半はそう言う所が目立ち、ちょっとしたフラストレーションがたまります。
さすがに様々な作品賞を受賞しただけ有って、4時間半見るに値する作品だと思います。実は途中で抜け出て帰ろうかと思っていましたが、最後まで見入ってしまいました。とてもフランス的、ヨーロッパ的な映画です。
小説を映画化した作品ですが、多くの映画が2時間程度の枠に収めるために、その多くを描かないで終わらせてしまい、映画は残念と思わせてしまう事が多いのではないかと思います。元の小説は読んでいませんが、小説を映画化するにあたり、この非常識なほどの長さが必要だったのではないかと感じました。