AntenneFrance N.195 横浜フランス映画祭2001特集

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  S O M M A I R E
  □横浜フランス映画祭2001特集
    ナイトシフト
    クレーヴの奥方
    バルニーと彼のちょっとした心配事
    王は踊る
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◆◆第9回フランス映画祭横浜
◆◆カオスの中で
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    2001年/カラー/95分
    監督/フィリップ・ル・ゲイ
    キャスト/ジェラルド・ラロッシュ、マルク・バルベ
 ガラス瓶工場で働くピエール(ジェラルド・ラロッシュ)は昼勤から夜勤へシフ
 トを移すことにした。それによりピエールは想像もしないほどの人間関係(映画
 祭のパンフレットでは「いびり」「嫌がらせ」と表現されている)に悩むことに
 なる。
 その時彼の妻はカンヌへ仕事で長期出張、一人息子も学校での人間関係に悩んで
 いた。。逆境の中で彼らは…。テーマは「家族愛」。どんな人も等しく人間関係
 の悩みを抱えている。大人は大人の世界で、子供は子供の世界で、誰もが同じよ
 うな経験をしている。そのためか非常にわかりやすい作品であった。人間関係の
 問題を解決するには自分の人間関係に頼るしかない。その主たるものが「家族」
 なのである。
 フレッド(マルク・バルベ)はピエールに「いじめ」行為を繰り返していた。被
 害者ピエールは妻子もありマイホームも建設中の苦労はあるものの幸福な生活を
 送っていた。一方加害者のフレッドは妻に逃げられ荒んでいた。最初は新人いび
 りだったかもしれない。その後は幸福な男への嫉妬心からのものであったのだろ
 う。だからといってフレッドに同情する気にはならなかったが…。その後は行為
 がドンドンとエスカレートし、息子の前で辱めることが増えていく。見ていても
 堪らないシーンの連続である。
 しかしこれを「一方的にいじめられている」と感じなかったのは、ピエールが
 ちゃんと自己主張し、反撃していたからだろう。親としてのプライド、男として
 のプライドも十分感じられた。これがなければ単なる情けない親父を描いたいじ
 め映画で終わってしまう。ピエールはこの逆境にプライドを保ち単身挑み、悩ん
 だときは妻に告白し協力を得て、また息子を守り…。これが「家族愛」である。
 どこか弱々しさを感じるが芯の通ったピエール、楽しみでいじめるのではなくイ
 ライラを隠し切れず嫌がらせをしてしまうフレッド。この精神描写の難しい役を
 ジェラルド・ラロッシュ、マルク・バルベは見事に演じている。
 妻がカンヌに出発する直前にピエールが「実はフレッドが…」と言いかけた言葉
 を、1ヶ月後カンヌから戻って来た彼女がしっかり覚えていたことには、もう拍手
 を送りたい気分だった。これが「愛」である。いつでも私の味方であった両親を
 思い出し、結婚し家庭が形になりつつある今、私も同様に愛情とプライドを持ち
 続けたいと思わせてくれた作品であった。
 蛇足ではあるが「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を見たときにも感じたが、工場
 で大きな機械を回しているときに登場人物が他のことに気を取られているシーン
 には、次の瞬間には機械に巻き込まれて大ケガをするのではなかろうかと緊張し
 てしまう。こういうシーンを下手なホラー映画よりもずっと怖いと思うのは私だ
 けだろうか?どうも苦手である。
                                 多田 直
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◆◆第9回フランス映画祭横浜
◆◆クレーヴの奥方
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    1999年カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞
    ポルトガル=フランス=スペイン合作
    監督・脚本・脚色:マノエル・ド・オリヴェイラ
    原作:ラファイエット婦人「クレーヴの奥方」
    出演:キアラ・マストロヤンニ、アントワーヌ・シャベー、
       ペドロ・アブルニョーザ
 「キアラが素敵っ!」とつくづく感じた作品。「プリティ・ウーマン」のジュリ
 ア・ロバーツのように豊かな表情が眩しいシーンがなく育ちの良い淑女のクール
 な表情が殆どであるが、そのために逆にペドロ・アブルニョーザの公演シーンで
 心から喜びを表現した表情に、キアラ・マストロヤンニの美しさを強烈に感じる
 ことができた。
 キアラ・マストロヤンニはかのマルチェロ・マストロヤンニとカトリーヌ・ド
 ヌーブの実娘。父マルチェロに非常に似てきた気がする。監督はポルトガル出
 身、現在92歳のマノエル・ド・オリヴェイラ。近年では淀川長治も絶賛していた
 「アブラハム渓谷」が印象深い。
 クレーヴ伯(アントワーヌ・シャベー)は宝石店で見かけた黒髪の美しいカト
 リーヌ(キアラ・マストロヤンニ)に恋をし愛し、カトリーヌはクレーヴ伯に尊
 敬の念を感じて結婚する。兼ねてからカトリーヌに想いをよせているフランソワ
 (スタニスラス・メラール)は途中物語のキーマンになるものの、存在感は非常
 に薄い。
 結婚後、夜会に招かれる。その時のゲストが人気ロック歌手のペドロ・アブル
 ニョーザ(本名同じ)。ペドロとカトリーヌはお互いに愛を感じる。カトリーヌ
 は夫に対して情や尊敬の念以上のものを抱けず、彼の愛に応えられないことに苦
 しみ、夫クレーヴ伯は妻の愛を得られないこと、妻が愛をささげる者への嫉妬に
 苦しみ、ロック歌手のペドロはそこにあるカトリーヌの愛を手に入れられないこ
 とに苦しむ。アブルニョーザが公演からパリに戻ると、カトリーヌの姿はもうど
 こにもなかった…。
 この作品は原作とは異なり、現代を舞台に描いている。つまりカトリーヌは現代
 では非常に古風な印象を受ける。それは恋愛に対しても結婚に対してもだ。ペド
 ロへの愛を感じているカトリーヌは自分を抑え夫への貞節を守り続ける。意志の
 強さは尋常ではない。彼女を支えているの何なのか?母の死か?クレーヴ伯の死
 か?今日の恋愛に自由奔放な社会では想像しにくい硬い性格であるが、逆にそれ
 が妙に新鮮に感じる。
 シーンとシーンの間にシーンをつなぐテロップが入るのが少々気になる。しかし
 映像は全編を通じて非常に品が良く芸術的である。冒頭にも述べたが、特にキア
 ラ・マストロヤンニが非常に美しく描かれていてため息が出てしまいそうな作品
 だった。
                                 多田 直
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◆◆第9回フランス映画祭横浜
◆◆バルニーと彼のちょっとした心配事
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    Barnie et ses petites contrarietes
    2000年/フランス
    監督:ブリュノ・シッシュ
    出演:ファブリス・ルキーニ、マリー・ジラン、ナタリー・バイ
 フランスからロンドンへ長距離通勤しているバルニー。彼には美しく聡明な妻
 と、若く奔放な愛人に加え、ゲイの美青年マークというお相手までいる。ところ
 が3人が彼の誕生日に同じプランを立てたことから、4人の関係は修羅場へ発展
 し・・・。
 とにかくキャストが魅力。バルニー役のルキーニのトボケた表情や、奥様役のナ
 タリー・バイの年齢を全く感じさせない聡明な可愛らしさ、お色気抜群のマリー%
 ジランに加え、『フルモンティ』のヒューゴ・スピアーがゲイの青年役で登場す
 るなど、まさにそれぞれがハマリ役を演じているので説得力がある。
 浮気相手と本命が鉢合わせしてドタバタ騒動が起きるという展開はコメディとし
 てはありがちだが、薔薇の肥料のエピソードや、愛人女性の男性遍歴の話など、
 細かいネタがかなり笑えるので古臭い感じがしない。
 フランス映画の特徴とも言える小難しさが全く無く、ある意味誰でも素直に楽し
 める作品だ。
                                MS.QT.MAI
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◆◆第9回フランス映画祭横浜
◆◆王は踊る
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    Le Roi Danse
    2000年/フランス・ベルギー・ドイツ合作(フランス公開2000年12月6日)
    監督:ジェラール・コルビオ<ベルギー>
    出演:ブノワ・マジメル、ボリス・テラル、チェッキー・カリョ
    2000年度セザール賞3部門(衣装・音響・新人男優賞)ノミネート作品
 監督は、『仮面の中のアリア』でカンヌ映画祭に正式出品されるとともにアカデ
 ミー賞外国映画賞にノミネートされ、『カスラート』で、再度アカデミー賞外国
 語映画賞にノミネートされた名匠ジェラール・コルビオ。ルイ14世を演じるのは 
 『年下の人』で共演したジュリエット・ビノシュをも虜にし、今年のカンヌ映画
 祭ではミヒャエル・ハネケの『ピアニスト』(日本ヘラルド配給権獲得)で最優
 秀男優勝に輝いた若手美形男優のブノワ・マジメル。死ぬまで王を愛し続けた宮
 廷音楽家にして舞踏家、リュリを演じるのは舞台で活躍後、映画デビューし、本
 作のリュリ役でセザール賞有望若手男優賞にノミネートされた新鋭、ボリス・テ
 ラル。振付はバロック・ダンスの踊り手で、「フェッ ギャラント」の創始者ベ
 アトリス・マサン。
 5歳でフランスの国王となったルイ14世の政治の実権は母と愛人に握られていた。
 幼い頃から音楽とダンスの才能に恵まれていたルイにとって、人々から崇拝され
 るにはダンスは恰好の手段だった。イタリアから来た音楽家リュリは、ルイを輝
 かせるために、約3000曲の作曲をし、バロックダンスを振付ける。やがて22歳に
 なった王は「太陽王」として君臨するため新政を敷いて自らが政治の全権を握る
 事を宣言する・・・。
 宮廷での権力争いと、「王の寵愛」をめぐっての芸術家たちの様々な人間模様が
 描かれ、見ごたえのあるドラマとなっている。
 いかに王の寵愛を受けるかに苦心し、自分への寵愛が冷めぬように画策する音楽
 家であり、舞踏家でもあるリュリ。そこには王への愛(=自分への愛でもある)
 と、常に自分は王とともにあるのだという強烈な自負心を感じる。
 本当は自分の出世のためには何でもやるとてもいやらしい人間なのに、憎めない
 感じさえするのは「寵愛」のうつろいやすさと、リュリにひたむきさを感じさせ
 るボリスの魅力かも。
 
 演奏中に過って自分の足の甲に指揮棒を刺してしまった(この頃は長い指揮棒を
 床に垂直に持ち、床に打ち付けて拍子をとっていた)リュリが、足の切断を断る
 セリフからも、王に寵愛された事をいかに誇りに思っていたかがうかがわれる。
 17世紀バロック・ダンスの舞踏譜のステップに忠実に振付けられたバロック・ダ
 ンスや、リュリとモリエールが演じた、当時の舞台の再現や、スランス流のオペ
 ラ、ベルサイユ宮殿での撮影など、必見の映画。
 
 —-7/20より、渋谷のシネマライズで上映決定
 映画上映前に監督と主演のブノワ・マジメル、ボリス・テラルの3人の舞台挨拶 
 がありました。その時にボリス・テラルだけは日本語であいさつをし、彼は日本
 が好きで黒澤監督の『デウス・ウザーラ』を見ていると言う事でした。
 
 映画上映後の質問コーナーで、
 ・Q「『年下の人』の時よりもやせた気がしますが、ダイエットされましたか?」
A ブノワ「役によって、プラスマイナス10キログラム位変わります」
 ・Q「ダンスシーンがすばらしかったのですが、2人共吹き替えなしですか?」
A ブノワ「ダンスの練習期間が3ヵ月しかもらえなかったので、一部吹き替え
       ているシーンもあります。」(ボリスも同じく)
 ・Q「王と宮廷音楽家というと、ヴィスコンティの『ルードウィッヒ-神々の黄
   昏』がありますが、相違点はどういうところでしょうか?」
A 監督「ヴィスコンティの名前が出てうれしい。私もファンです。ルードウ  
   ィッヒ2世の場合はワグナーに利用されてしまいましたが、ルイ14世の場合
   は主導権を握っていたのはルイ14世で、権力を得るために凡てを利用した
   事です。」   
 この後、別会場で恒例の監督とスターのサイン会が行われました。
 フランス映画祭の良い点は、各映画の上映後に必ずその映画の監督・俳優たち
 のサイン会がある事です。並んだ人全員にサインしてもらえます。(とは言っ  
 てもあまりに多数の場合は列の途中で並ぶのを打切られますので、お速めに。)
 会場ではフランス映画祭のパンフレットしか販売していないため、大半の人は
 見た映画の紹介ページにサインをしてもらうか、映画のチラシにサインをして
 もらっていました。サインをしてもらう時に自分の名前を英語(ローマ字)で
 書いた紙を見せれば、TO XXX と、貴方宛のサインもしてもらえます。
 
 
 コルビオ監督はとてもにこやかで、えらぶった感じがせず、3人ともサインと
 握手に快く応じてくれました。中にはブノワからほほにキスしてもらった若い
 女性ファンもいました。サインが終わっても、まだまわりを取り囲むファンに
 写真撮影や握手を求められ、本当にお疲れ様だったと思います。
  
 特にブノワは今回『リザ』、『王は踊る』、『マチューの受難』の3本の映画に
 主演していたため、期間中3回もサイン会に出席した事になり大変だったのでは。
 ボリスは気さくで、翌日のフランス代表団舞台挨拶の後の映画上映終了後に1人 
 だけ会場内でファンからサインを求められても、会場から出てもロビーで人気
 がなくなるまでサインと握手をしているほどのサービス精神にとても関心しま
 した。
 来年はフランス映画祭も10回目を迎え、盛大な催しとなりそうです。
 まだ、一度も行かれた事のない方は是非来年こそは熱気あふれる会場へ足を運
 んでみて下さい。
                                岩田 和子
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