AntenneFrance N.269 フランス映画祭情報 その2

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  S O M M A I R E
 【フランス映画祭情報 その2】
  □ワーク・ハード、プレイ・ハード
  □お先にどうぞ
  □マリアージュ!
  □刺繍する女
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◆◆ワーク・ハード、プレイ・ハード
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    2003年/99分/カラー
    監督:ジャン=マルク・ムトゥ
    脚本:オリヴィエ・ゴルス、ジスレン・ジェグ=エルゾグ
       ジャン=マルク・ムトゥ
    出演:ジェレミー・レニエ、ローラン・リュカ、シリア・マルキ
    6月17日(木)13:30
 フィリップは育ちの良い25歳の青年。都会でチャンスを掴み、大企業コンサル
 タント会社に入社した。その出社初日、彼は若きシングルマザーエヴァに出会
 い、恋に落ちる。2人が愛を育む中、彼の初仕事は工場買収のための、解雇リ
 ストの作成だった。自身に階級差別意識などないと感じていた青年が、仕事を
 通じてヨーロッパ社会に根強く残る階級差に葛藤するようになる。そして、人
 情や良識を大切にする価値観を持ったエヴァと、効率と利益を求められる価値
 観の企業という狭間で悩み始める。リアルでオリジナルな描写が絶賛された、
 新人監督の挑戦作だ。
 はじめて社会に出た日。希望と理想に心をふくらませる青年。エリートばかり
 の職場の一員になり、自分も大きなチャンスを掴もうと思っている。しかし現
 実は違った。初めての仕事は工場の解雇リスト80名分の作成。社員を面接して
 みるものの、対象となるのは弱い立場の人ばかり。その上、仕事内容を恋人エ
 ヴァに否定される。仕事を辞めようか悩むが、苦労して手に入れた今のポジシ
 ョンをたった3ヶ月で降りることもできない。そして心を鬼にして、仕事を着
 手することにした。工場員の批判は絶えないが、自身の保身を覚えていく青年
 …。そして良識ある青年は、徐々に会社の「ワークハード・プレイハード」と
 いう精神を受け入れるようになる…。
 会社を存続するためにリストラを決断する人、リストラ要員を選ぶ人、リスト
 ラされる人……それぞれの立場に正当な思いがあり、誰が正しいわけでも間違
 っているわけでもない。この作品では、その事実に対して肯定も否定もせず、
 葛藤しながら変化していく青年像を描いている。筆者の普段の人間関係でも、
 大きな組織に入って、組織と個人の見識の違いに悩む人を多く見てきただけに、
 この青年像がとてもリアルに見える。そして、作品では、この変わっていく青
 年への判断を観るものにゆだね、解答は自分自身で出してください、と語りか
 けているようだった。観た後にどんな感情が残るかで、自分自身の価値観もみ
 えてくる、奥の深い作品だ。
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◆◆お先にどうぞ
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    2003年/110分/カラー
    監督:ピエール・サルヴァドーリ
    脚本:ブノワ・グラファン、ピエール・サルヴァドーリ
       ダニエル・デュブロー
    6月17日(木)16:00
 アントワーヌはパリのブラッスリーの給仕長。仕事からの帰り道、彼は今まさ
 に自殺しようとしている見知らぬ男の命を救う。男の自殺の動機を知り、もと
 もとお人よしの彼は、何とか男を助け生活を立て直そうと努力する。自分の住
 まいに彼の寝床を作り、仕事を紹介し…そして、彼が命を賭けたブランシュと
 いう美しい女性にも逢いに行く。この男は彼女のことで頭がいっぱいで、彼女
 に捨てられて死のうとしたのだ…。アントワーヌはルイとブランシュを復縁さ
 せようと考えていた。だが、彼女が美しすぎたがために、思いもよらない方向
 に進んでいく…。
 人に頼まれたら断れず、余計な分まで人の心配をして世話焼きをする、果ては
 自分が迷惑をこうむってしまう…そんなキャラクターが可愛くてたまらないア
 ントワーヌ。助けたルイが金魚のフンのようにつきまとい、いわれのない文句
 をつけられても、やっぱり助けてしまう。アントワーヌの一挙一動が優しくて、
 観ている人の心を溶かしてしまう。それは助けられたルイも同様だったようで、
 自殺未遂直後の情けない男像が脱皮するかのように、自信と勇気を取り戻して
 いく。その様子は、励ましていたアントワーヌを超えてしまうほどで、そんな
 ルイも徐々に可愛らしく思えて、クスクスと笑ってしまう。本作ではフランス
 映画でよくあるようなエゴのぶつかりや、皮肉、疑惑、といった要素がないの
 で、観ているうちにとってもリラックスしてしまうのだ。
 コメディーの名手サルヴァドーリのおまちかね最新作とあって、散りばめられ
 たユーモアはセンスに溢れていて楽しい。小道具がのちに意外な部分で生かし
 て驚かせたり、脚本もとても上質だ。加えて主演のダニエル・オートゥイユも、
 キュートな中年を好演している。総合的にバランスが取れていて、老若男女、
 どんな気分の時でも楽しめそうな作品だ。
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◆◆マリアージュ!
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    2004年/101分/カラー
    監督・脚本:ヴァレリー・ギニャボデ
    出演:マチルド・セニエ、ジャン・デュジャルダン、ミウミウ・リオ
       アレクシス・ロレ
 
 「愛することは素晴らしい」と神父が熱意を込めて語っても、フランスでは3
 組に一組の夫婦が離婚するご時世だ。そんな中、25歳の2人が結婚する。しか
 し、参加した結婚10年目の35歳の夫婦はお互いにいがみあっている。45歳の
 夫婦は既に離婚した。他の夫婦を見ても、結婚の理想像が崩れていくばかり。
 それぞれの夫婦が疑惑に揺れ、気持ちの変化に戸惑い、式を混乱させていく…。
 「結婚に希望はあるのか?」と溜息をつきたくなってしまう。今まさしく希望
 に溢れたカップルが結婚しようとしているのに、周りの夫婦たちは結婚にまつ
 わるトラブルのオンパレード。結婚10年目で、奥さんに興味がなくなり、努
 力をしなくなった夫。無関心な夫に腹立ち、他の男と不倫をする妻。別れた奥
 さんの目の前で新しい恋人といちゃつく男。
 自分の夫の浮気を25年も黙認してきた妻。セックスをしたのは既に15年前の夫
 婦…。これぞ、フランス流、結婚問題のフルコースである。こんな彼らが織り
 成すエピソードの数々は、観ていて飽きる事はなく、お笑い人生劇場のように
 楽しめてしまう。
 けれど、ふと我に返って、「明日はわが身」という皮肉さも感じてしまう。こ
 れから結婚する人には踏絵のようなフィルムであり、既に結婚した人には、あ
 まりのリアルさに身につまされるかもしれない。結婚する意味はどこにあるん
 だろう、という疑問を投げかける本作だが、最後にちゃんと温かいヒントが隠
 されている。結婚というものに悩んだことのある者同士、観終わった後に、語
 り合いたくなる映画だ。
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◆◆刺繍する女
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    2004年/88分/カラー
    監督:エレオノール・フォーシェ
    脚本:エレオノール・フォーシェ、ガエル・マーセ
    出演:ローラ・エマルク、アリアンヌ・アスカリッド
       マリー・フェリックス
    6月18日(金)14:30
 まだ17歳の若さで子どもを宿していることを知ったクレアは、生みの親が子ど
 もの出生を届け出ず親権を放棄する「匿名出産」で子どもを産むことにした。
 周囲の人間から妊娠を隠すためにクレアが身を寄せたのはオートクチュールの
 刺繍職人メリキアン夫人の家だった。日を追うごと、刺繍の一針ごとに、クレ
 アのお腹が大きくなるにつれ、2人の間が変わっていく。メリキアン夫人から、
 刺繍の技巧だけでなく、親・子・母・娘といった人間関係の愛情というものが
 伝授されていく…。
 子どもを授かるが育てない決断をしたクレアと、事故で息子を亡くしたメリキ
 アン夫人。二人がやり取りをする様は、刺繍を一針一針、ゆっくり細やかに進
 めていくかのように、静かで美しい。窓から射す柔らかな光、刺繍の美しさ、
 少女の白い肌と赤い髪、など映像の美しさは、まるでフェルメールの絵画のよ
 う。台詞も少なく、淡々とした印象だが、それが逆に高尚な雰囲気となり、ま
 るで上質な文学作品を眺めているようだった。
 倒れたメリキアン夫人をクレアが毎日見舞いにいき、お腹が大きいクレアをメ
 リキアン夫人が気遣うさまは、確かな愛情が流れていて本物の家族よりも、家
 族らしかった。「匿名出産」という制度も日本では存在しないため、フランス
 独自のテーマとなっている。妊娠して子どもが生まれた後の選択の多さ、擬似
 家族のような関係など、多様な家族のあり方を容認するフランス文化がふんだ
 んに現れた作品である。
 ギニャボデ監督による鮮やかな脚本と世代の違う魅力的な俳優たちのアンサ
 ンブルが見ものの本作。フランスの結婚式の実情が見られるのも面白い。4
 月のフランス公開では、公開1ヶ月を待たずに百万人以上の動員を記録する
 大ヒットとなっている。
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