国際・欧州

2026/8/10
誰のドローンかわからないまま、国境は動き出す
木曜の夜、ドイツ西部メヒャーニヒの軍施設で、警備員が上空に2機の機影を見た。翌朝までに、確認された飛行は計6回に及んだという。地下130メートル、サッカー場4面分の広さを持つ貯蔵庫には、巡航ミサイルや弾道ミサイルの部品、そして米国製防空システム「パトリオット」関連の装備が眠っている。警備員は警察に通報し、捜査が始まった。だが、誰が、何のために飛ばしたドローンなのかは、今も分かっていない。

2026/8/10
ホルムズ海峡と医療倉庫、遠く離れた二つの現場に共通する「兵器化された生活インフラ」
300パレットのうち、運び出せたのは130パレットだけだった。ウクライナ中東部ドニプロにあった世界保健機関(WHO)の倉庫には、前線の医療施設に届けるはずの緊急医療物資が積まれていた。8月9日、WHOの職員と運転手たちが早朝に現場を訪れ、慌ただしく荷物をトラックに積み込んだ。彼らが現場を離れた直後、倉庫は攻撃を受けて破壊された。死傷者は出なかった。だが助かったのは、残りの170パレット分の医薬品や…

2026/8/8
セウタの海岸に立った7万2000人と、リールの倉庫に積まれたたばこの箱
先週、モロッコ北部の海岸からスペイン領セウタへ、7万2000人が国境を越えた。数字だけを見れば、それは一つの都市の人口が一週間で移動したのに近い規模だ。この出来事のあと、スペインとイタリアという、EUとNATOの双方で同盟関係にあるはずの二国が、外交文書の応酬に入った。イタリアは、スペインから到着する第三国国民に対してシェンゲン協定の自由な移動の適用を停止し、少なくとも8月15日まではこれを撤回し…

2026/8/7
「自分の家にとどまれ」——コルシカが問う、故郷を守る権利の限界
非公開の記者会見に集まったのは、約15人。全員が武装していた。8月上旬、コルシカ島で開かれたこの会合で、コルシカ民族解放戦線・戦闘員同盟(FLNC-UC)のメンバーは、島の外からやってくる人々に向けてこう告げた。「われわれの民族的権利が認められ、尊重されるまで、彼らに伝えるメッセージは一つしかない。自分の家にとどまれ」。地元紙「コルス・マタン」がこの会見を報じ、フランス国家反テロ検察は8月6日、予…

2026/8/6
バニラ香料の瓶の中の結晶、そしてアルジェで拘束された男
2024年6月、フランス北部の港町ル・アーブルで、税関職員が一つのコンテナに目を止めた。中身はメキシコ発、スペイン向けの人工バニラ香料のボトル。ラベルには何の異常もない。だが分析の結果、その液体にはメタンフェタミンが溶け込んでいた。ここから始まった追跡は、同じ年の7月10日、スペイン・バルセロナ近郊の人里離れた敷地にある秘密研究所へとたどり着く。7件の家宅捜索で押収された量は計2.4トン、うち1.…

2026/8/5
154人の軍人、886件の処刑、そして一通の大統領令ー「安全」という言葉が覆い隠すもの
8月3日から4日にかけての夜、フランス南東部イゼール県サルデュー。人口1200人ほどの小さな町で79歳の男性が自宅で遺体となって見つかった。容疑をかけられた40歳の男を追うために、当局が動員したのは154人を超える軍人、ヘリコプター、警察犬部隊、ドローン操縦チーム、そして特殊部隊GIGNだった。容疑者は町長の妻を脅して車を奪い、リヨン方面へ逃走したのち、最終的にピュイ・ド・ドーム県で拘束された。

2026/8/5
国境という言葉が一日で五つの顔を見せた日
8月4日火曜日の朝、フランス北部セーヌ=マリティーム県ヴール=レ=ローズを出た一艘の船が、フランスと英国の領海の境界に差しかかったところでエンジンから火を噴いた。乗っていた人々は次々と海に飛び込み、フランスと英国の船が総出で157人を引き揚げた。死者はいなかったが、看護師の初期確認では低体温症の症例が報告されている。当局はこの日の救助を、2018年に英仏海峡での非正規な渡航が始まって以来の「主要な…

2026/8/4
エッフェル塔を背にした男と、パリから去った女——「安全」はいつも同じ顔をしていない
8月3日、ロシアの反体制派ボリス・ナデジディンがテレグラムに投稿した動画には、エッフェル塔が背景に映っていた。63歳の元下院議員は「良いニュースがあります。私は生きていて、自由です。残念ながら、ロシアにはいません」と語った。この一言に、彼がどれだけの緊張を抱えて国境を越えたかが表れている。ナデジディンは「過激主義」で有罪判決を受け、ロシア当局から「外国の代理人」に指定されていた。2024年の大統領…

2026/8/3
停戦が発表された翌日も、ガザでは遺体が数えられていた
8月2日、ガザ地区中部デイル・アル・バラーフのテント村に、数十メートルにわたる大きなクレーターができていた。前夜の空爆の跡だ。ここで暮らしていた女性はフランスの記者に「私たちのテントは破壊され、何も残っていません」と語り、別の女性は「病院と薬品倉庫の隣で暮らしていました。安全区域にいるはずだったのです」と憤った。彼女たちのいた場所のすぐ近くでは、この空爆で病院の医療物資倉庫が大きく損壊し、7人が死…

2026/8/3
泳いで海岸に着いた4人と、あなたの名前がついた高速道路
マリアはスペイン領セウタの海岸で、写真を一枚撮った。移民が4人、泳いで岸に上がってくる瞬間だった。「数分前まで海岸にいたのに」と彼女はfranceinfoに語っている。「食べ物も水もないまま、街をさまようことになります。どこで夜を過ごすのでしょうか」。この問いに、答えを持っている人は誰もいない。

2026/8/2
キーウの住宅街、ヨルダン川西岸の村、カリフォルニアの空——「守る」という言葉が置き去りにするもの
8月1日未明、キーウのソロミャンスキー区で、5階建ての住宅が一部損壊し、火災が発生したと報じられている。同じ夜、ダルニツキー区でも被害が確認され、死傷者が出たと伝えられている。だが実際に燃えたのは、誰かが暮らしていた住宅と、誰かが働いていた建物だった。

2026/8/1
誰が「安全」を決めるのか——ガザの武装解除合意とイラクの空爆否認が突きつける、主権という境界線
「合意には、イスラエルが自らの義務を尊重し、履行することに同意しなければならないと明確に定めた条項があります。イスラエルが合意を履行しないなら、私たちも履行しません」——ハマスの交渉団メンバー、ガジ・ハマド氏はそう語った。この一文には、戦後処理という営みの本質がにじんでいる。誰かが武器を置き、誰かが軍を退く。だがその「誰か」を決める権利は、いったい誰の手にあるのか。

2026/8/1
泳いで越えた国境線ーーセウタの夜明けが問いかけるもの
夜明け前、モロッコ北部の町フニデクから、浮き輪をつけた若者や、上半身裸のままの少年たちが次々と海へ入っていく。目指す先は、わずか数百メートル先に見えるスペイン領セウタ。国境が開くといううわさがソーシャルメディアで広まり、それを信じた人々が押し寄せた。7月30日木曜日の未明、そんな光景が現実に広がった。波と岩礁の危険を冒して泳いだ末に、少なくとも9人が命を落としたと、スペイン政府の現地代表部は発表し…

2026/7/30
ジダンの一言が照らす、国境の内と外で異なる「保護」のかたち
フランス代表の新監督ジネディーヌ・ジダンが、7月末のある記者会見で口にした言葉が注目を集めた。

2026/7/29
退席する大使、逮捕されない首相――国際秩序を支えるのは法か、それとも力か
国際秩序は、会議室のなかで保たれているように見える。代表団が席に着き、規則に従って発言し、決議に票を投じる。しかし、その作法が数十秒で崩れる場面がある。