「エール!」エリック・ラルティゴ監督インタビュー
ろう者夫妻に産まれた少女には聴覚の異常は無く、一家の通訳を行うなど無くてはならない存在になっていました。そんな中、コーラス部で才能を見いだされ、パリの音楽学校への入学が認められるオーディションの出場を勧められるのです。
しかし家族は大反対、本人も家族のことを考えるとオーディションへの出場をあきらめることを決意し日々が過ぎていきます。思春期の少女の複雑な環境を表したコメディーです。
この作品がすごいのは、障がいをあつかったテーマにもかかわらず暗い感じにはならずに、コメディーで表現されていることです。
主演のルアンヌ・エメラさんは、テレビのオーディションで優勝して芸能界入りしたのですが、彼女を採用することを前提として作品を制作したのでしょうか?とてもストーリーに近い人物なのです。
実は、そうではなく、映画制作が先に決まっていました。ポーラ(主演の役名)を演じられる女優を探していたところ、テレビで見て「彼女だ!」と直感したそうです。オーディションを行い、彼女でいけることを確信したそうです。
この作品では、初めははにかみがちに歌い、まだちょっと下手な感じに歌っています。このように歌うのは演出だったのでしょうか?
彼女とは打ち合わせをして、そうなるようにラストに向かってうまく歌えるように演出したそうです。これが予想以上にうまく行ったそうです。
手話をしながらしゃべるというのは、大変だと思いますが、元々手話が出来たのでしょうか?
これはエメラさんが短期間でマスターしたそうで、フランス語と手話は主語・述語の順序が逆で構文が違うために大変だったそうです。
このような重いテーマをコメディーで行うことに抵抗はなかったのでしょうか?フランスでもこのようなテーマは重くなりがちです。しかし、ハンディーキャップを逆手にとった作品を作りたかったそうです。両親が聴覚障がい者の子供のことをコダスというそうですが、家族に焦点を当てて、そこから独立する物語としました。実在のモデルがいて、そこからインスピレーションを得たそうです。
終盤、音を切ってしまうシーンがあるのですが、どうしてだったのか聞いてみました。この音が無いシーンというのは、コーラース部の発表会の時(両親が見に来ている)であり、最後のオーディションのシーンで彼女の歌声を披露させたいからなのかと思ったからです。
しかし意図はそうではなく、観客に音の聞こえない世界というものを知ってもらいたいからでした。コーラスのシーンで音が聞こえなかったら、おかしいですよね。そんな欲求不満な感情を体験してもらいたかったそうです。
フランスのコメディーらしい作品でストーリーの展開はある程度読めるのですが、単純に面白く、感動的でもある素敵な映画です。