フランスの地方分権

今度の衆議院議員選挙は東国原知事の問題で地方分権選挙のような感じになるところだった。今でも橋下知事がテレビで訴えているが、今では随分トーンダウンしているようだ。

中央集権国家日本とフランスの比較

先進国でも中央集権体制をとっている国はすでにマイノリティーのようで、ヨーロッパで中央集権の国といえば、フランスだ。しかし1980年代からミッテラン大統領が地方分権改革を進め、シラク大統領の時代の2003年には憲法改正までして推し進めている。

日本もフランスも中央集権的な国家であることは間違いなさそうだが、この2つの国は結構違う部分もある。日本は歴史的に地方分権的で江戸時代まではむしろ連邦国家的であったといえる。しかしフランスでは君主政の時代から中央集権的だ。

日本では天皇陛下は別として、国のトップは議会で間接的に選ばれているが、逆に地方自治体のトップである知事や市長は直接選んでいる。フランスでは大統領を国民が直接投票で選んでいるが、地方自治体のトップは議会によって選ばれている。

そしてフランスでは県議会議員が国会議員になったりと兼職が可能で実際そういう人が結構いる。日本でも地方分権を進めるというのなら地方自治体から国政レベルで動かせる人がいないと、いくら新しい枠組みを作っても新しい利権が生まれるだけで意味がないのではと思う。

フランスの地方分権政策

勿論フランスの地方分権はうまく行っているわけではないが、権限の委譲の方法が面白い。フランスの行政の場合、国の下に州、その下に県、その下に広域自治体や日本の市町村に当たるコミューンと呼ばれる古代ローマ時代からのバックグラウンドを持つ基礎自治体が有る。コミューンは日本語に訳されると「リヨン市」「シャンパーニュ村」のように市、町、村と勝手にその自治体の規模にあわせて付けられるが大小の区別はなく、行政上の区別もない。

もっとも身近な自治体には身近な行政サービスに関する権限が直接委譲されていて、道路などの都市計画や市民サービスが上位の自治体と関係なく運営できる。例えば、州の管轄の施設であっても、州に行くことなく直接その市で対応出来る。

地域性と問題点

日本の道州制がうまく機能していくのか分からないが、日本地図を見てうまいこと割り振った様だが人間の行動範囲というのはそんなに広い物ではない。東京都港区は上から下まで歩いていくことが出来るほどの大きさだが、だからといって商業施設の多い青山から区の関連施設の多い田町まで公共交通機関のアクセスが良いわけではない。

これと同じように関東、東海、関西はまだ良いとしても、東北や中国・四国は各地域が州庁所在地に簡単に行けるのか?また現在の県でも問題が起きているように、結局資産が中心都市や州庁所在地に集中してしまって割に合わない都市も出てくる可能性もある。

フランスの地方行政

フランスでは州はその地域の経済発展や州レベルの地域整備に関しての権限が与えられており、フランス政府が進めるフランス国内への投資(企業誘致も含む)が行われているほか、州レベルでも積極的に行われている。日本にも事務所を持つ州もある。

県に対しては社会福祉などの分野を受け持つなど各層が自立した役割を受け持っていることが特徴だ。しかし財源は国からの交付金がメインで、財政面の改革はまだ出来ていない。また最小自治体であるコミューンはフランス国内で3万6千も有り、広域行政などを含めると5万6千もあり意志決定機関が増えすぎてしまったが、階層が明確にされなかったために統一が取れず問題になっている。

フランスが地方分権に求めたもの

日本では地方分権が進めば、日本も変わると国政の変革も期待されていたが、フランスでも全く同様に2003年の時点では、否応無しに国の仕組みも変わると思われていた。しかし、それとこれとは別物で、国政においてもリーダーシップも別に必要であった。

それ以外にも地方分権による弊害も指摘されてきており、再中央集権化の兆候も現れている。例えば、地域間格差の増大、国の監督不足、権限委譲に伴う財政負担問題、そしてフランス固有の問題かもしれないが兼職による執行機関の権力増加と汚職の増加などが挙げられている。

地方分権、再起動

サルコジ大統領の諮問委員会「バラデュール委員会」は現状のシステムの変革案を提出している。それによると、

  • 現状の本土の州の数を22から15に減らして、100程度有る県も統廃合する。
  • パリを近郊・隣接県を合併し600万人の大都市圏を構築、リヨン、リール、マルセイユ、ボルドー、トゥールーズ、ナント、ニース、ストラスブール、ルーアン、トゥーロン、レンヌといった都市を中核拠点都市とし、この都市を中心に合併を促進させる。
  • 税制改革は地方財政の収入源である職業税を撤廃し、その補填として企業の不動産や付加価値への課税や交付金を行う。
  • 国と地方自治体の権限を明確に分けて、地方自治体の業務には国が関与しない。
  • 州と県議会選挙を同時に比例代表制で行い、名簿順位上位の者が州議会議員と県議会議員を兼務し、当選しても下位であった場合は県議会議員のみというパリの市議会と区議会の選挙と同様のシステムで地方議会議員を削減する。

このような改革案で一層地方分権を進める方針だ。現時点では2003年からさらに進められた地方分権は、特に抜本的な改革には至っていないようで、本当に有用だったのか判定しがたい状況だ。また、経済や内政の問題が大きくなり、これと地方分権は別問題ということ。地方分権することで国が財政負担出来なくなったものを地方に負担だけ移譲しているという疑念などが生じている。

地方自治体の独自財源を増やせば良いように見えるが、あまり割合が増えれば地方格差が広がる結果になるので交付金の制度は財政格差を埋めるためにもバランス良く必要だろう。

日本でも地方分権が叫ばれているが、本当に何が必要なのか?良く道路行政の例が挙げられるが、そのために道州制が必要なのか?それで解決できるのか?いまいち不明である。

関連記事

ニュースレター

AntenneFranceの本



YouTubeチャンネル

ピックアップ記事

  1. espace sans tabac
ページ上部へ戻る