グァンタナモ収容所閉鎖の歓迎と不安

アメリカの大統領がオバマになって、日本のニュースではあまり取り上げられていないが、フランスなどヨーロッパでは特に話題となっているキューバの「グァンタナモ収容所」の閉鎖だ。

何でアメリカがキューバの収容所を閉鎖できるのか?と謎に思う人もいるだろう。なにせ、アメリカとキューバは敵対関係に有ることはよく知られているし、何の関係が?

歴史は遡るが、キューバはスペイン領だったのだが、アメリカの援助で独立した。このため、キューバ領土内には以前の香港のようにアメリカが租借している地区があり、これがグァンタナモ湾だ。

ここに米軍基地があるが、日本のそれとは微妙に違う。日本の米軍基地は日本の領土で日本の主権が及ぶので、日本人やそのほかの外国人の司法管轄権は日本が持っている。(ただし米軍兵士には治外法権が認められている。)

これに対しキューバの場合は、条約によって領土はキューバの物ではあるが、キューバの主権は停止されているのである。

このごく僅かな違いを根拠として存在しているのがグァンタナモ収容所だ。グァンタナモでは、アメリカの領土ではないのでアメリカの法律も及ばないし、キューバの主権も停止されているので、キューバの法律にも影響されないのである。

戦争などの捕虜であれば、ジュネーブ条約が適用されるが、犯罪者であれば関係なく、アメリカの領土でもないので、アメリカの憲法や法律上の権利も関係ないというわけだ。

しかも、この基地の周りはキューバによる地雷で埋め尽くされていて、脱走も難しいし、マスコミや人権団体の監視もされにくいという好条件が備わっていた。

9.11のテロ後、各地で捕らえたアルカイダ、テロ容疑者などをグァンタナモ収容所に連れてきて無期限の取り調べや拷問などを行っている。国内では違法で出来ない事も行っているため、人権機関などが非難しており、世界的にも閉鎖を求める声が出てきている。

ブッシュ前大統領も2007年に閉鎖を行おうとしたが、収容されている人間の移送先が問題となり頓挫してしまった。アメリカの連邦裁判所も一部の収容者の釈放を命令しているが、オバマ大統領も閉鎖の支持した。

このため、ヨーロッパの首脳たちは相次ぎこの収容所からの移送に関してコメントをしており、フランス、ドイツなどでも閉鎖を歓迎し、収容者の受け入れ国に加わる表明している。

問題はアルカイダ幹部などをどこに移送するか?さすがにヨーロッパも受け入れられないし、出身国に返すわけにもいかない。2007年にサウジアラビアに送還された元容疑者は社会復帰プログラム終了後、イエメンに渡りイエメンの米大使館爆弾テロ事件に関与した疑いがあるなど、釈放された人間がテロを起こして事件がある。

もちろん、ヨーロッパでも意見は分かれており、ドイツでは外相は受け入れを表明したが、内相は反対しているなど、アメリカの出方次第ではどうなるか判らない。オバマ大統領も最初の試練と語っている。

Antenne France
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