AntenneFrance

複合・横断

海を渡る230人と、燃えた仮設住宅——国境は誰の尊厳を選ぶのか

2026/8/11

海を渡る230人と、燃えた仮設住宅——国境は誰の尊厳を選ぶのか

8月9日から10日にかけての夜、フランス北部の海岸から一隻のゴムボートが英仏海峡に向けて出港した。乗っていたのは少なくとも230人。そのうち20人を超えるのが子どもだった。海難救助全国協会(SNSM)ベルク=シュル=メール支部の責任者ジャン=マルク・ランブランは、AFPの取材にこう答えている。「異例の規模」であり、こうした「粗末な船」による横断としては「新たな、悲しい記録」だと。

溺れた子ども、燃えた山、止まった原発——フランスの夏が映す「公共の不在」

2026/8/10

溺れた子ども、燃えた山、止まった原発——フランスの夏が映す「公共の不在」

8月8日土曜日の夕方7時半前、フランス北東部モゼル県ランガットの小さな池のほとりで、4歳の男の子が両親の目を離れた数分の間に水に入り、溺れた。監視員のいない、整備された遊び場だった。市長のジェローム・ディッチュ氏が自治体の救急バッグを持って駆けつけ、医師や看護師が蘇生を試み、救急隊員とSAMU(救急医療サービス)が引き継いだ。それでも間に合わなかった。同じ週末、リヨン近郊の池では3歳の女の子が心肺…

保護命令があったのに、彼女は殺された――フランスが問う「誰が守るべきだったか」

2026/8/10

保護命令があったのに、彼女は殺された――フランスが問う「誰が守るべきだったか」

6月、フランス南部ヴォクリューズ県ボレーヌで、ある女性が交際相手から暴力を受けた。彼女はそのあと、司法から二つの保護を与えられている。ひとつは、危険を感じたときにすぐ通報できる「危険時通話用携帯電話」。もうひとつは、家庭裁判所の裁判官が出した保護命令だ。加害者の男は6月の暴力ですでに一度身柄を拘束され、11月には刑事裁判所への出廷を控えていた。制度としては、動いていたはずだった。

チェーンソーの音で目覚めた朝、誰が「すみません」と言うのか

2026/8/9

チェーンソーの音で目覚めた朝、誰が「すみません」と言うのか

ステファンとカトリーヌの夫妻が聞いたのは、午前6時ごろの機械音だった。ジロンド県で山火事が鎮圧され、10日前に自宅と厩舎を守り抜いたと安心した翌朝、道路沿いで林業会社が木を切り倒していた。夫妻は木の前に立ち、「もう十分だ、何にも触るな」と叫んだという。それでも作業は止まらず、樹齢100年の松まで伐採された。カトリーヌにとってその森は「静かに暮らすために35年かけて貯めた」ものだった。彼女は積み上げ…

太陽光パネル10枚と、記者ひとりの死——安全保障が「守るもの」を問い直す

2026/8/7

太陽光パネル10枚と、記者ひとりの死——安全保障が「守るもの」を問い直す

8月6日、ヨルダン川西岸南部の小さな集落ハルベト・アルトゥバで、約100人が暮らしを支えていた太陽光パネルが壊された。数は約10枚。夜になれば水を汲むポンプも冷蔵庫も動かない。住宅3軒は焼け、住民のラドワン・アブ・ジュンディさんは妻と娘が負傷したと語っている。イスラエル軍はこの襲撃を「強く非難する」と表明し捜査を始めるとしたが、パレスチナ人や人権団体は、こうした捜査が実際の訴追に至ることは稀だと指…

17歳の水泳選手と、シーツの下で動かなくなった配信者

2026/8/6

17歳の水泳選手と、シーツの下で動かなくなった配信者

8月3日の夜、17歳のミラン・ヴィオロン選手はスマートフォンを開いた。数時間前、大規模な芸術水泳大会の決勝で、彼はフランス代表として団体フリールーティンを泳ぎ切ったばかりだった。男性選手として初めての快挙だったはずのその夜、画面に並んでいたのは称賛ではなく、性差別的で憎悪に満ちたコメントの列だった。「人を本当に判断していることが分かる、意地の悪いコメントをたくさん見ました」と彼は『ル・パリジャン』…

グーグルのAIを消す方法が拡散する国で、報道は生き残れるか

2026/8/5

グーグルのAIを消す方法が拡散する国で、報道は生き残れるか

「グーグルのAIを消すための、とても簡単なチュートリアル」。そんな出だしで始まる動画が、この夏フランスのソーシャルメディアで次々と再生されている。7月22日以降、グーグルで何かを検索すると、見慣れたリンクの並びより先に、AI「ジェミニ」が生成した要約がまず目に飛び込んでくるようになった。多くの利用者はそれを消したがっている。便利なはずの機能を、わざわざ手間をかけてオフにしようとする人が、なぜこれほ…

その数字は誰が発表したのか——ガザ、モスクワ、そしてAIアイコンが同じ週に問うたもの

2026/8/3

その数字は誰が発表したのか——ガザ、モスクワ、そしてAIアイコンが同じ週に問うたもの

8月2日の日曜日、モスクワでは前夜の爆発の説明が一晩で変わっていた。土曜の夜、ロシア当局に近いとされるテレグラム・チャンネル「バザ」は、モスクワの高級レストランで起きた爆発を「厨房のガス爆発」と伝えた。だが夜が明ける前に、話は「身元不明の女性が小包に隠した手製の即席爆発装置を持って店内に入ろうとした」というものに変わっていた。死者3人、負傷者21人。店では軍や政界の要人による非公開の夕食会が開かれ…

火災の空、迎撃ミサイル、半導体――「必要なものを自分で作る」時代はどこへ向かうのか

2026/7/30

火災の空、迎撃ミサイル、半導体――「必要なものを自分で作る」時代はどこへ向かうのか

日曜日の午後、ジロンド県の空にA400M軍用輸送機が現れた。貨物室に積んだ2万リットルの難燃剤を、森林火災の上空から投下するためだ。エアバスが長年かけて開発した消火キットにとって、これが実戦での初投入となった。

「勝ち方を知っている」男と、あなたの預金を預かるアプリ

2026/7/29

「勝ち方を知っている」男と、あなたの預金を預かるアプリ

「会長、私は勝ち方を知っています」。