セバスチャン・マルニエ監督インタビュー スクールズ・アウト

セバスチャン・マルニエ監督 インタビュー本編

AF:ホラーと言っても人がたくさん死ぬものではないですね。

実はホラー映画ではないですし、人が死ぬわけではないです。
血がたくさん出てくるわけではないです。
ただ水面下で暴力が起きたり不穏な空気が流れたりして、見る人が知らないうちにウイルスに感染していくような精神的に作用するようなスリラーです。最初見たときに冒頭から不安になるような、これは一体どうなってしまうんだろうという不安を観客に味わって欲しかった。
でも本格的なホラー作品も是非取って見たいなと思っています。

AF:原作は監督が考えられたのですか?
原作は別になります。
10年ほど前に原作となる小説が出版されたのを私が読んで、まだプロデューサーもいない25歳の時でした。それでも映画化したいという思いがあり映画化する権利は買いました。予算の関係上映画化するには至らずにいました。そのうちに「欲しがる女」という原作を映画化したプロデューサーに、映画化にふさわしい原作があるんだけれどという形で持ちかけました。

AF:映画初頭で先生が飛び降りてしまうシーンがあり、これで人が死んでいくのかという印象がありました

意図していたものです。いかに見ていた人を迷わせるかという事を考えながら作っています。実際に小説を読んだときに非常に印象的なシーンでした。
最初は天気の良い日で鳥が鳴いていて、のどかな日なのに、先生が急に飛び降りる。見ている人もこれからどうなるんだろうと、そういった映画手法が詰まった非常に重要なシーンです。

AF:原発が爆発するシーンがありましたが原作にはあったのですが?

本にはない設定だったんです。私の方で後で付け加えたシーンです。集団自殺するシーンの変えてあります。
最初に読んでから15年という月日がたっていますし、私がテロに対して持っている恐怖というのも15年前に比べて変わっていますしそういった所を取り入れています。

AF:テロを取り入れたのはヨーロッパにテロの恐怖があるからですか?

そうですね。今フランスやヨーロッパで起きている事を反映させたものです。撮影時はフランスで一連のテロが起きていたときで、このテロをきっかけにフランス人の考え方は一変してしまったと言えると思います。

アメリカで9.11が起きたときに、アメリカ人も色々な考え方が変わったと同じように、大きく考え方を変えるようなきっけけになったんです。世論は内向きになったんです。ですが、パリの人々は前と同じようにテラスに出てコーヒーを飲んだりということを変えないで、テロに屈しないという姿勢を見せています。

劇中でテロに対する訓練を行っているシーンがあったと思いますが、これは実際にフランスの学校でも行われていることです。小中高とやっています。国全体に漂っている恐怖、いつどこで何が起きてもおかしくないという意識をフランス人が持っています。

自分で自分を守るしかないと考えています。特に見えない恐怖に、例えばテロもそうですし、何か野蛮な行為ですとか、何かの爆発ですとか続いています。それがフランス人の他者との関係を変えましたし、人生を今後どういう風に歩んでいくかという考え方に対しても影響を及ぼしています。

私は子どもが現在いませんが、本当に子どもを持ちたいかどうかを真剣に考えました。子どもを持つと言うことを責任が持てるか?子どもを持つと言うことは素晴らしいことだしと、撮影時にはすごく悩みました。

原発の爆発のシーンは日本の福島の原発に影響されたのですか?
ええ。原発の爆発のシーンは福島の原発の爆発を念頭に置いて撮影されたシーンです。実際に経験した人はもっと恐ろしい思いをしたでしょう。事故が起きる前はそういったことが起きるとは想像もしていなかったでしょう。

私自身も日本人の皆さんの思いを想像しながら、この撮影に臨みました。非常に恐ろしいのですが、ある種の美というか、ツインタワーが崩壊したときもあまりにも非現実的で本当に起こっているのかなと言う点でも惹かれて、何回もループ状に見てしまうということがあります。そういった所も持ち合わせていると思います。

AF:社会的なメッセージを込められているのですか?
そうですね。社会のメッセージと言うよりも、原子力施設の削減を支持している側なんですね。発電コストが非常に安いと言うことで、原子力に対しては動きは活発ではありません。
できるだけ再生可能エネルギーに移行すべきだと私は思っております。
日本の皆さんは、広島長崎の件もありますので、よりそういった思いが強いのでは無いかと思います。

日本の文学やマンガなど色々な作品が、広島で起きた事などメタファーとして伝えて下さっているなと思います。宮崎駿監督の作品もそうですけれど、このまま続けていると大変なことになるよと、ポエティックな感じで伝えて下さっているなと言う意味では非常に先進的な取り組みだなと思います。

AF:今回の役者は本当に中学生ですか?
設定の年齢よりは少し年が上です。高校生ぐらいで撮影の時にはバカロレアを受けていました。全くの縁起の初心者というわけではなく、短編映画に既に出ていたとか、テレビのフィクションに出ていたという若手の俳優です。

この作品に出た後の彼らの活躍がめざましくて、私も喜んでいます。


『スクールズ・アウト』
「シッチェス映画祭2019」
10月11日(金)より公開

ヒューマントラスト渋谷、シネマスコーレ、シネ・リーブル梅田

スクールズ・アウト 監督メッセージ
Antenne France
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