
キャベツが縮み、狩りが止まり、氷が溶ける――気候危機の請求書は誰に届くのか
バ=ラン県リマースハイムの畑で、ギヨーム・ルッツはザワークラウト用キャベツを前にため息をついている。「必要な水準より30%少ない」。気温が28度を超えるとキャベツは成長を止め、生き延びることだけを優先する。例年の3倍、計3回もかん水したのに、それでも足りなかった。「今年はキャベツで確実に赤字になると思う」と彼は言う。
日付: 2026/9/14

「あなたのためだから」の裏側で、誰が「分からない」と言えなくなっているのか
胸に残った四つの黒い点。ナディア・マヒトゥクという40代の女性は、シャワーを浴びるたびにそれを見る。2022年末、がんの放射線治療を受けるために医師が描いた消えない目印だ。治療そのものを後悔してはいない。彼女が引っかかっているのは、治療計画が「必ず受ける段階」として最初から決まっていて、自分の意見が求められなかったこと、そしてこの印が一生消えない可能性を、事前に知らされなかったことだ。「知っていれ…
日付: 2026/9/14

エナン=ボーモンの演説室で線引きされた「フランス人」という言葉
9月13日、日曜日の午後2時半。パ=ド=カレー県エナン=ボーモンの会場に集まった聴衆を前に、マリーヌ・ルペンは1時間弱の演説を始めた。「住宅は皆さんにとって重要な問題です。だから私にとっても重要な問題です」。前日までル・トゥケで党所属議員と非公開協議を重ねていた彼女は、2027年大統領選に向けて、住宅政策を自身の「5年間の任期における大きな課題の一つ」に据えると宣言した。
日付: 2026/9/14

氷河が溶ける音と、パリで鳴り響くセリーヌ・ディオンの拍手――気候のツケは誰の財布から出るのか
ノルウェー領スヴァールバル諸島で、1922年と2024年に同じ場所を撮った写真を並べると、そこにあったはずの氷の壁が消え、山肌だけが残っている。100年余りでこの土地は姿を変えた。それでも観光客は年々増え続けている。ホッキョクグマとクジラを見るための船が出港し、かつて石炭採掘で成り立っていた町ロングイェールビーンの経済は、いまや氷が消えていく光景そのものを売り物にしている。皮肉なことに、この地を壊…
日付: 2026/9/13

隠れた雇用、67歳の年金、そして「誰が支えるのか」という問いの正体
1700件超の送金、総額300万ユーロ超。パリ近郊ヴァル=ドワーズ県の一軒の建設会社が、わずか3年でこれだけの金を個人口座に流していた。ところが同じ期間に届け出られた雇用前通知は、たった7件。つまりこの会社で働いていた人のほとんどは、公式には「存在しない労働者」だったことになる。9月9日、実質的な経営者とその家族の一人が拘束され、170万ユーロ相当の不動産6件と高級品が差し押さえられた。社会保険料…
日付: 2026/9/13

発言を許すことと、舞台を与えることは同じか――消えた「自由発言」が問うもの
水曜日の夜、フランス5の文学番組「ラ・グランド・リブレリー」の最後に、いつもの「自由発言」のコーナーがあった。この日、その数分間を任されたのは女優で作家のアデル・エネルだった。カメラを正面から見つめ、彼女は性差別的・性的な暴力について語り始め、やがて「国を絡め取っているテレビの沈黙」を批判し、最後にこう言い切った。「イスラエル国はパレスチナでジェノサイドを行っており、フランスは共犯だ」。
日付: 2026/9/12

電話番号ひとつで支払える国で、誰がルールを決めているのか
パリの朝、パン屋のレジ前でスマートフォンを取り出し、電話番号を入力するだけでバゲット代を払う人がいる。カードも現金も要らない。フランスではいま、Weroというこの新しい決済アプリを、すでに4800万人が使い始めているという。「スマートフォンを取り出せば、それで終わり」と語る利用者の声を聞くと、これはただの便利な話に思える。だがこの一週間、フランスから届いたニュースを並べてみると、同じ「便利さ」の裏…
日付: 2026/9/12

「捜査中です」と言われた被害者は、そのあとどこへ向かえばいいのか
Tシャツの裾を引っ張った瞬間、指先が濡れていることに気づく。オードレさんは9月6日、スタッド・ヴェロドロームの観客席でOM対パリFC戦を観戦していた。後ろに座った男性が何度も体をかすめてくる感覚があり、ハーフタイムに服を確認すると液体が付着していた。あとになって、それが精液だったと理解したという。彼女はスタジアムの警備員に伝えたが、その場では対応してもらえなかった。警察とサポーター団体には自分から…
日付: 2026/9/11

「野菜をもらいに来ました」――フランスがケアを“権利”として設計し直す理由
「大きく転落してしまいましたが、Secours populaireがあって本当に助かっています」。ニオールの支援団体を訪れた80代の女性は、そう静かに語ったという。ソーシャルワーカーに紹介されるまで、まさか自分がこの扉をくぐることになるとは思っていなかった。野菜をもらいに来て、節約を重ねながらも「誰にでも困難な時期は訪れるものです」と付け加えた彼女の言葉には、支援を受けることへの躊躇と、それでも尊…
日付: 2026/9/11

配車アプリの画面に映らないもの――フランスで問われる「誰が決めるのか」
ウーバーで配車を呼んだとする。隣にいる友人も、同じ場所から同じ目的地まで、同じアプリで呼んだとする。二人の画面に表示される金額は、同じだろうか。
日付: 2026/9/11

サメの群れ、狼の牙、28度の水道水——フランスが問う「誰が気候の請求書を払うのか」
ブザンソン近郊の板金工場では、10日ほど前から小さなハンマーの音が絶え間なく響いている。イタリアから派遣された技術者ヤコポ・プッピオは、車体に無数に刻まれたへこみを一つずつ叩き出しながら、「仕事がたくさんありますし、情熱も必要です」と言う。8月27日にドゥー県を襲った嵐は、テニスボール大のひょうを降らせ、数百台の車を「銃撃を受けたよう」な姿に変えた。アルデシュ県オーブナでは7月15日、わずか数分で…
日付: 2026/9/9

フライドポテトが短くなる夏に、マルセイユの海水浴場から監視員が消えた
9月なのに、マルセイユの朝市は27度だった。ある女性客は「もう長すぎます。慣れなければならないのでしょうね」とこぼした。6月からこの3か月、気温計は29度を下回ったことがない。ある高齢の夫婦は、家の中が昼も夜も30度を超え続け、夜が「本当に大変だった」と振り返る。週末には37度近くまで上がり、1949年以来の記録になったという。
日付: 2026/9/8

11歳の少女の死が動かした69条の法案――暴力を「家族の秘密」から「国家の責任」に変えられるか
フランスで11歳の少女リアナが性的暴行を受けて殺害された。加害者とされる人物は、すでに司法当局に容疑者として通報されていた人物だったという。つまり、システムはこの子どもを救えなかった。9月7日、パリのヴァンドーム広場――法務省の前――に、女性団体や子どもの保護団体が集まり、法案の採決まで抗議を続けると宣言した。彼女たちが求めているのは、慰霊や糾弾ではない。100ページを超える、69条からなる…
日付: 2026/9/8

ロボットを蹴り倒す娘と、10億ユーロを積む大統領——AIは誰の味方なのか
芝を刈っていた人型ロボットが、突然作動したスプリンクラーで制御を失い、地面に倒れ込む。若い女性がその上に馬乗りになり、首輪とリードをつけ、ゴルフクラブで叩きながら引きずる。彼女はカメラに向かって満足げにこう言う。「彼は従うように設計された。私は違う」。
日付: 2026/9/8

オラドゥールの名を借りて山火事を語るとき、記憶は何を失うのか
ジロンド県の村ル・ポルジュを前日に訪れた社会党第一書記オリヴィエ・フォールは、9月4日、地元ラジオのインタビューでこう語った。「この比較をあえてしてよいのか分かりませんが、住宅が完全に焼け落ちている様子には、オラドゥール=シュル=グラヌに通じるものがあります」。今夏の山火事で183軒の住宅を失ったこの村を前に、彼の頭に浮かんだのは、1944年6月10日にナチスが640人を超える住民を虐殺した、あの…
日付: 2026/9/7

モペッドに乗った35歳と、英仏海峡を渡る移民合意――「置き去られた」人々の票はどこへ向かうのか
水色に塗られた旧東ドイツ製の原動機付き自転車「シムソン」に乗って、ウルリヒ・ジークムントは妻とともに投票所に現れた。場所はドイツ東部、人口約1万人の町タンガーミュンデ。35歳の彼が生まれたのは1990年の東西ドイツ再統一からわずか3週間後のことだ。この光景そのものが、彼の政治の核心を語っている。過去への郷愁と、今この場所で暮らす人々の不満を、一台のバイクに乗せて運んでいるのだ。
日付: 2026/9/7

かごひとつ、電話一本、そして届かなかった通報――家族の外側にある社会の手
月に70ユーロ。ナディーヌと夫がリヨンの学生一人に費やす金額は、それくらいだという。WhatsAppで欲しいものを聞き、週末に家へ呼んで一緒に夕食をとり、買ったものを持たせて帰す。「子どもたちが家を離れた後も、時代に遅れずに学生を助けることができる」と彼女は語っている。相手の学生からは「人生で起きた最高のこと」と言われたそうだ。少し照れながらも、ナディーヌはその言葉を否定しない。
日付: 2026/9/6

「もう子どもを抱きしめてよいのか分からない」——沈黙を防ぐ制度は、現場の迷いから始まる
パリ20区のテレグラフ幼稚園。約15人の学童保育職員がテーブルを囲み、責任者から一つの問いを投げかけられる。「マティスが入学し、昼食時間の保育に初めて来ました。泣いていて、どうしてもあなたの腕に抱かれたがっています。あなたはどう反応しますか」。
日付: 2026/9/5

国外退去も、ドローン警報も、招集された「普通の市民」も──ヨーロッパの安全保障はどこまで日常に入り込むのか
画面の右半分に、モスクワにいるはずのロシア人論客の顔が映っている。下にはテロップ。「Xenia Fedorova、『L’Heure inter』に復帰?」。司会者は「フランス政府が彼女の滞在を阻んでいるため」と説明し、ビデオ通話での出演再開を告げた。9月2日、パリのCNewsのスタジオで起きたのは、そういう場面だった。国外退去命令から1カ月余り、資産も凍結されたはずの人物が、画面の向こうから戻って…
日付: 2026/9/4

ベビーカーの車輪と黒い投稿——声を上げた人が消えない社会をどう作るか
リリア・メバルキアが息子の医療用ベビーカーを取りに出かけたのは、3月初めのある日だった。四つの車輪すべてに、ナイフで傷をつけられていた跡があった。「偶然の出来事ではありません」と彼女は語っている。彼女はヴァール県の上院選でLa France insoumise(LFI)の候補者名簿に名を連ねる活動家で、この出来事の前後、彼女のもとには殺害、レイプ、監禁を予告するメッセージが数千通単位で届いていた。…
日付: 2026/9/4

申請書を書ける人だけが助けられる、という国のかたち
リール大学は今年の新学期から、生理痛に悩む女子学生が年間14日、月2日まで、授業を自己申告だけで休める制度を導入する。必要なのは48時間以内のオンライン申告だけで、診断書はいらない。大学側はこれを「学生への信頼と責任に基づいた」制度だと説明している。慢性的な片頭痛や、近親者の死、暴力、個人的な緊急事態にも使えるという。
日付: 2026/9/4

「誰かが私の証言を売った」——声を上げることと、まだ裁かれていない人を裁くことの間で
9月2日の夜、インスタグラムに一つの投稿が現れた。ベルギー出身のアーティスト、エレナ・ノゲラが書いたのは、こんな言葉だった。「誰かが私の証言を報道機関に売った。報道機関は何の道徳心もなくそれを利用している」。彼女は数か月前、警察で証言していた。司法当局は秘密を守ると約束していたはずだった。それが、パリ・マッチとRTLという二つのメディアによって、水曜日の朝には彼女の名前として世に出ていた。仮名は「…
日付: 2026/9/3

ベールとスペーススーツ、教室の空席が問いかける「標準」の正体
パリ近郊エソンヌ県のショッピングセンター、レ・ジュリス。買い物袋を足元に置いた20歳のカディは、肩からずり落ちたベールの端をつまみながら言った。「誰も傷つけていないし、ほかの布地と同じ一枚の布にすぎません」。彼女はTikTokで、国民連合(RN)が公共の場でのベール着用を国民投票にかけるつもりだと知ったばかりだった。マリーヌ・ルペン氏は2027年の大統領選で勝利した場合、「イスラム主義的イデオロギ…
日付: 2026/9/2